1967年5月、大麻所持容疑で逮捕された彼は、9か月の禁錮刑が言い渡されますが、12月の上告裁判で1,000ポンドの罰金と3年間の保護観察処分に減刑されて、収監だけは免れましたが、翌年5月、保護観察期間中にも関わらず、大麻所持の現行犯で再逮捕されます。

厳罰に処されることも予想される中、彼は9月に罰金刑が下されて、またしても収監を免れましたが、以前のように様々な楽器を自由自在に演奏する姿はもはや見ることはできず、虚ろな顔をして、まるで魂の抜け殻のようになっていたのでした。

そんなわけで、今日の一枚はこちら↓
M1:55−55
M2:戦いの時
M3:テイク・ミー・ウィズ・ユー
M4:幻惑の瞳
M5:コーリング・アウト
M6:幻惑の時

1971年に発表された、彼が残した唯一のソロ・アルバム、ブライアン・ジョーンズの『ジャジューカ』です。

死の直前に完成されたこのアルバムは、1968年夏にモロッコを旅行した際に現地に伝わる民族音楽を自ら録音して、帰国後、ロンドンのスタジオで編集や加工を施したものです。
1995年にCD化されて再発されましたが、使用していた絵画が版権の問題で使用できなくなって新装されたジャケット・カヴァーはこちら↓

なぜモロッコの伝承音楽だったのか、そもそもソロ・アルバムとして発表するつもりだったのかはもはや知る術もありませんが、原曲に対して恣意的なアレンジが施された、西洋の音階を外れたメロディや延々と続く打楽器のリズム、不思議に懐かしい葦笛の音色にはエキゾチックな興味をそそります。

彼自身は演奏に加わっていませんが、冗長で単純な音楽に自己のイマジネーションで神々しいまでの幻想と鬼気迫るテンションを吹き込んでいて、1980年代後半からのワールドミュージックを加工して、ポップミュージックに昇華させるという手法が広まったことを考慮すると、このアルバムは、異端の天才が遺したまさに時代を先取りした最先端な一枚です。