(この記事は2016年3月11日に投稿した記事を加筆修正したものです)
1990年、“七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家”と言われるほど多様性を内包していたユーゴスラビアは、コソボ自治州の独立宣言をきっかけにして内戦状態となります。
1992年、それぞれの共和国が相次いで独立していくなかで、ボスニア・ヘルツェゴビナも独立を果たしますが、国内のセルビア人がボスニアからの独立を目指して戦争を繰り返して、およそ3年半以上にわたって全土で戦闘が繰り広げられた結果、死者20万人、難民200万人が発生したほか、民族浄化やスレブレニツァの虐殺など、大戦後のヨーロッパでの最悪の紛争となったのでした。
そんなわけで、今日の一枚はこちら↓
M1:フェイド・アウェイ
(オアシス&フレンズ)
M2:オー・ブラザー(ブー・ラドリーズ)
M3:ラヴ・スプレッズ(ストーン・ローゼズ)
M4:ラッキー(レディオヘッド)
M5:アドナン(オービタル)
M6:モーニング・エアー(ポーティスヘッド)
M7:フェイク・ザ・アロマ
(マッシヴ・アタック)
M8:シップビルディング(スウェード)
M9:タイム・フォー・リヴィン(シャーラタンズ)
M10:スウィーテスト・トゥルース(ステレオMCs)
M11:オード・トゥ・ビリー・ジョー(シンニード・オコナー)
M12:サーチライト(レヴェラーズ)
M13:雨にぬれても(マニック・ストリート・プリーチャーズ)
M14:トム・ペティ・ラヴズ・ヴェルーカ・ソルト(テラーヴィジョン)
M15:マグニフィセント(ワン・ワールド・オーケストラ)
M16:メッセージ・トゥ・クロミー(プラネット・4・フォーク・クァルテット)
M17:ドリーム・ア・リトル・ドリーム(テリー・ホール&サラダ)
M18:1・2・3・4・5
(ネナ・チェリー&トラウト)
M19:アイネ・クライネ・リフト・ムジーク(ブラー)
M20:カム・トゥゲザー(スモーキン・モジョ・フィルターズ)
1995年に発表された、全英1位を獲得した、慈善団体“ウォー・チャイルド”への資金を集めるためのチャリティー・アルバム、『ヘルプ』です。
全曲が1日でレコーディングされて、店頭に並ぶまでたった5日間というスピードでリリースされたこのアルバムは、ボスニア・ヘルツェゴビナ等で戦争被害を受けた地域や孤児を支援のために全ての収益金と印税が寄付されることになっていましたが、チャートの1位を獲得したことで財源に多大な貢献を果たしました。
時間に追われていたスタジオの空気がそのまま伝わってくるようなM1や、まるでアウト・テイクのような粗さのM3。
また、アルバムの主旨とは関係なく日頃趣味でやっているような、エルヴィス・コステロのカヴァーのM8やバート・バカラックのM13、モーツァルトのM19にいたってはミラノで録音されたという小品で、そして、ポール・マッカートニー+ポール・ウェラー+ノエル・ギャラガーという豪華メンバーによるM20はシングルカットされて全英19位を記録しています。
しかし、本作のような性格のアルバムには、音楽的完成度求める以前にもっと必要なものがあると実感し、このアルバムには、彼等の子供たちに対する静かな熱意や思いを感じることができる一枚です。