(この記事は2016年3月24日に投稿した記事を加筆修正したものです)


発表直後から名盤と賛辞されて、英国のみならず世界中に衝撃を与えたデビュー・アルバムによって人気を確立した彼等ですが、既にバンドはとても不安定な状態にありました。


発表後に行われたアメリカン・ツアー中に、イアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズがバンド脱退を発表すると、ロサンゼルスでのナイスとのジャム・セッション後に、グレッグ・レイクもキース・エマーソンと新グループ結成を表明して、彼等は分裂の危機を迎えるのでした。


そんなわけで、今日の一枚はこちら↓

M1:平和/序章

M2:冷たい街の情景〜トレッドミル42番地

M3:ケイデンスとカスケイド
M4:ポセイドンのめざめ〜天秤座
M5:平和/テーマ
M6:キャット・フード
M7:デヴィルズ・トライアングル
a)マーデイ・モーン
b)ハンド・オブ・セイロン
c)ガーデン・オブ・ワーム
M8:平和/終章

1970年に発表された、全英4位を記録した彼等の2ndアルバム、キング・クリムゾンの『ポセイドンのめざめ』です。

アイランドとの契約問題もあってロバート・フリップは、替わりにキース・ティペット、メル
・コリンズ等をゲストに迎え、元メンバー達の協力も得ながらレコーディングを開始したこのアルバムは、基本的には前作の流れにあると言えますが、フリップは、ティペットの持つジャズ組曲の構想に興味を持って、その手法を用いて、三部作となる「平和」を各所に散りばめていき、トータル・アルバム的な雰囲気を醸し出しています。

また、グレッグ・レイクに代わって急遽参加した、フリップの同郷の友人ゴードン・ハスケルが歌うM3に流れる儚い美しさは、前作の極限まで突き詰められた緊張感の末に生まれたものとは異なる哀愁と崩壊感が漂っていて、それがその時点の彼等を表現しているようです。

タイトル・チューンであるM4では、プラトンの対話集『ティマイオス』の中にある世界を構成する四つの要素である“天・地・火・水”と尺度正しくバランスする世界が歌われていて、この曲は、前作に収録された「エピタフ(墓銘碑)
」に符合するような、このアルバムで最も重要な曲と言えるでしょう。

このアルバムは、フリップのプロジェクトバンド色が強く、また、前作があまりに偉大過ぎたために過小評価されているかも知れませんが、実に聴きどころ満載な一枚なのです。