(この記事は2015年10月9日に投稿した記事を加筆修正したものです)


インダストリアル・ミュージックとは、1970年代後半にノイズ・ミュージックから派生して誕生した電子音楽の一種で、不協和音のループ、難解な歌詞や耳障りなヴォーカルといった特徴的要素を持ちアート・ロックに攻撃性とディストーションのかかったシンセ音、そして、疾風怒濤の混沌を結びつけることで反体制ジャンルとして確立された音楽ジャンルです。


1975年に結成された彼等は、1977年に自身のレーベルから発表したデビュー・アルバム『第二活動報告書』では、工業化社会をテーマとしたコンセプトで、‘Music From Death Factory'をスローガンとした特異な“産業音楽”を追求していくのでした。


そんなわけで、今日の一枚はこちら↓
M1:20ジャズ・ファンク・グレイツ
M2:ビーチー・ヘッド
M3:まだ歩きつづけて
M4:タニス
M5:説得術指南
M6:エクゾティカ
M7:愛の追跡
M8:口説き方指南
M9:放浪
M10:今日はマイッタよ
M11:ろくっろくっ六〇年代

1979年に発表された、全英UKインディチャートで6位を記録した彼等の3rdアルバム、スロッビング・グリッスルの『20ジャズ・ファンク・グレイツ』です。


彼等のバンド名は、英語で“波打つ軟骨”という意味で、“男根”の隠語ですが、出身地のキングストン・アポン・ハルでは“勃起”を、ヨークシャー地方では“港湾労働者”を意味するスラングでもあるようです。


近代工業文明が垂れ流す産業廃棄物、工業廃液と想定した彼等の音楽は、技術の積み上げを前提として要求された高度な演奏力とは全く無縁の、無垢な感性だけが要求されているもので、それまでの西洋音楽の長い歴史上に現れたいかなる音楽的試みの中でも、最も革命的な試みと言えるでしょう。

何よりも、このアルバムが日本盤でリリースされたということもある意味革命的だったかも知れません。


工業化社会をテーマとしたコンセプトと、具体まるで大気汚染のように聴く者の神経系統を狂わしていく、憂鬱でどんよりとした電子音で後のロックシーンに多大な影響を及ぼした、このアルバムこそがオルタナティヴ・ミュージックの極みと言える一枚です。


そして、インダストリアル・ミュージックの創始者であるジェネシス・P・オリッジは、2017年から髄単球性白血病を患っていることを公表して闘病生活を送っていましたが、2020年の今日、完治することなく死去するのでした…