(この記事は2015年10月25日に投稿した記事を加筆修正したものです)


1969年、彼等が発表したデビュー・アルバムはロックミュージック界に衝撃を与えて、全英5位まで上昇しますが、当時の音楽誌のレヴューでは“ビートルズの『アビイ・ロード』を1位から転落させたアルバム”といった内容で紹介されてしまうという都市伝説も生まれました。


しかし、彼等はメンバーが固定化できずにメンバー・チェンジを繰り返しながら活動を続けますが、1971年の北米ツアー終了後に解散してしまいます。


1972年、5人編成となってリスタートした彼等ですが、アルバムを発表する毎にメンバーが減っていって、このアルバムのレコーディング・メンバーは、事実上3人だけでした。


そんなわけで、今日の一枚はこちら↓
M1:レッド
M2:堕落天使
M3:再び赤い悪夢
M4:神の導き
M5:スターレス

1974年に発表された、全英45位を記録した彼等にとって(?!)色々な意味でのラスト・アルバムと言える7thスタジオ・アルバム、キング・クリムゾンの『レッド』です。


このアルバムは、今までイラスト主体のアルバム・カヴァーで通してきた彼等が、初めてメンバー自身のポートレイトを載せていますが、しかし、それはまるで遺影のようなモノトーンなジャケットで、裏ジャケットのメーターがアルバム・タイトルが示唆するようにレッド・ゾーン(危険帯)を指していることから、バンドの終局を意味するものだとか、錬金術では‘赤’は究極の果てを意味するものなどと、ファンの間では色々な憶測が飛び交いました。


また、彼等のアルバムにゲスト・ミュージシャンが参加するのは4thアルバム『アイランズ』以来で、レコーディング直前のニューヨーク公演を最後に健康を害して脱退したデイヴィッド・クロスをはじめ、オリジナル・メンバーのイアン・マクドナルド、初期メンバーだったメル・コリンズ、『アイランズ』にも参加していたロビン・ミラーやマーク・チャリグが参加しています。

ロバート・フリップ自身は、アナログ盤のA面にあたるM1~M3を“メタル・サイド”と呼んでいて、ディストーション・ギターのハードなリフを前面に押し出したM1は、これまでの彼等の音楽的趣向の変化が窺えて、心なしか「20世紀の精神異常者」の姉妹曲のようでもあり、ジョン・ウェットンのメランコリックなヴォーカルが味わい深い抒情的な佳作のM2の、曲調と裏腹の歌詞には、解散前のフリップの精神状態を暗示しているかのようです。


そして、このアルバムの最後を飾るM5は、発売当時の邦題は「暗黒」と表記されていて、「エピタフ」や「クリムゾン・キングの宮殿」を彷彿とする、メロディアスで叙情的な前半部と、サックスとギターによる激しい即興演奏の応酬する後半部による12分を超える大作で、プログレッシヴ・ロックの鎮魂歌ともとれる重要な一曲と言えるでしょう。


前作『暗黒の世界』が過去への哀歌であって、デビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』が与えた、強烈すぎるインパクトと威厳を讃えるものであったとするのならば、このアルバムは、紛れもなく彼等の有終の美を飾るロックファン必聴の一枚です。


1981年、彼等は再結成して活動を再開していますが、それはもうキング・クリムゾンの名を借りたロバート・フリップ・バンドだったのでした…



そして、一年間も駄文にお付き合いいただきましてありがとうございました。

皆さま、良い年をお迎えください。