(この記事は2015年10月16日に投稿した記事を加筆修正したものです)


1979年、地元ダブリンのインディーズからデビューし、瞬く間にアイルランドのトップバンドとなり、翌年にはアイランド・レコードからメジャーデビューを果たした彼等は、アイルランド人であるアイデンティティを常に意識しながら、全世界的における問題提起を促して、ロックが持つ力を信じてやまない無垢な思いと、それを貫く真摯な姿勢で、メッセージ性の強い楽曲を発表していきます。


1980年に発表されたデビュー・アルバムのジャケット・カヴァーを飾った、大きな瞳の金髪少年、ピーター・ローウェンの純粋であどけない表情も、このアルバムでは一転して、真っ直ぐに見つめる曇りのない鋭い視線には、現実を直視する彼等の姿勢を端的に示しているかのようでした。


そんなわけで、今日の一枚はこちら↓

M1:ブラッディ・サンデイ
M2:セコンド
M3:ニュー・イヤーズ・デイ
M4:ライク・ア・ソング
M5:ドラウニング・マン
M6:ザ・リフジー
M7:トゥー・ハーツ・ビート・アズ・ワン
M8:レッド・ライト
M9:サレンダー
M10:40

1983年に発表された、本国アイルランドで16位を記録した彼等の3rdアルバム、U2の『WAR(闘)』です。


デビュー・アルバムからの、スティーヴ・リリーホワイトのプロデュースによるこのアルバムでは、国と国との戦いや、市民権の戦い、人と人同士や男女間の戦いといった、色々なレヴェルにある“戦い”がテーマとなっていて、全英では初登場1位を獲得する、彼等として初のビッグヒットとなり、スウェーデンでは2位、オランダでは3位、全米でも12位を記録しました。


ポーランドの‘連帯’をイメージした、先行してシングル・カットされたM3(c/wはアルバム未収録)は、本国アイルランドでは2位を記録、全英で10位を記録して、続いてシングルカットされたM7(c/wはアルバム未収録)も、アイルランドで2位を記録しますが、全英では18位でした。

そして、北アイルランド紛争で起きた、1972年の血の日曜日事件の悲劇をテーマとしたM1(c/wはアルバム未収録)は、ヨーロッパと日本限定でシングルカットされ、オランダで3位、全米メインロックチャートで7位を記録して、日本ではM8とのc/wでシングルリリースされました。
また、旧約聖書の詩篇40篇から曲名が付けられたM10(c/wはM7)がドイツ限定でシングルカットされています。

彼等が多くの支持を集めて、イギリスやヨーロッパのみならず、アメリカへ人気が拡大していくきっかけとなったこのアルバムは、ポストパンクと呼ばれていた世代の中で異彩を放っていた彼等のイメージを決定付けた、ロックファン必聴の重要な一枚です。