高校生の時に知り合った、細野晴臣と松本隆の勧めで楽曲制作を開始した彼女は、ローラ・ニーロやキャロル・キングのようなシンガー・ソングライターのスタイルを指向します。

ライヴを中心とした音楽活動を続けていた彼女は、直接的な影響を受けたという訳ではなく、そのスタイルや、R&B、ゴスペルへの敬愛を根底とした曲作りの共通性から“日本のローラ・ニーロ”と呼ばれるようになるのでした。

そんなわけで、今日の一枚はこちら↓
M1:外はみんな……
M2:待ちぼうけ
M3:扉の冬
M4:ねこ
M5:綱渡り
M6:変奏
M7:かびん
M8:ひるさがり
M9:週末

1973年に発表された、日本のローラ・ニーロと呼ばれていた彼女のデビュー・アルバム、吉田美奈子の『扉の冬』です。

デビュー・アルバムとは言うものの、前年に発表された大瀧詠一の1stソロ・アルバム『大瀧詠一』に収録されている「指切り」でのフルートソロで、自身のプロとしてのキャリアはスタートさせていました。


派手なリード・ギターもこけおどしのアレンジもない、内面的に絡み合って彼女の歌に色合いを加えているキャラメル・ママの演奏と細野晴臣のプロデュース。

ジャケットを見ても派手さなど微塵も感じられないけれど、どの歌からも瑞々しい感情がこぼれ落ちていて、そこにある何とも切ない空気感がたまりません。

勿論、それまでにも女性シンガーはたくさんいましたが、1970年代は女性が強くなった、もとい、女性が輝きはじめた時代で、荒井由実や中島みゆき然り、自分の言葉を自分の音楽に乗せて、 毅然とした立ち振舞いで歌いはじめたそんな時代。

AKBや“レリゴー”も良いですが、このアルバムは、まだまだ寒い冬の夜にしっとりと楽しめる大人の為の一枚です。


個人的な余談ですが、意外にも彼女が大宮の出身だったこと、彼女と佐藤奈々子とが区別がつかないこと、それ以上に、アルバム・タイトルがどうして“冬の扉”でないのかが…