「夢のカリフォルニア」や「カリフォルニアの青い空」といった歌からも、1960年代から1970年代初頭においては、ウェスト・コースト、いや、カリフォルニアはアメリカにおいて夢の地でした。


彼等もまた、そんなアメリカの夢や、アメリカという国に対する肯定性を唄いあげていましたが、そんな彼等が、アメリカにおけるウェスト

・コースト、あるいは夢の地としてのカリフォルニアは、もはや夢の地ではないという事実認識することで、そんなアメリカン・ドリーム、あるいはウェスト・コースト幻想というものを自らの手で葬ってしまったのです。


そんなわけで、今日の一枚はこちら↓
M1:ホテル・カリフォルニア
M2:ニュー・キッド・イン・タウン
M3:駆け足の人生
M4:時は流れて

M5:時は流れて(リプライズ) 

M6:暗黙の日々
M7:お前を夢見て
M8:素晴らしい愛をもう一度
M9:ラスト・リゾート

1976年に発表された、彼等にとって6thアルバム(ベスト・アルバムを含む)となるアメリカン・ロック史に残る名盤、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』です。

ジャケット・カヴァーの、隆盛を極めたビバリー・ヒルズ・ホテルの何とももの悲しい佇まいが印象的なこのアルバムですが、ウッドストック以降、所謂産業ロックと言われる商業至上主義に転じていたロック界を揶揄しているという解釈から、カリフォルニアにある州立精神病院を描写しているとか、さらにはアメリカ社会ないし現代社会の歪みに対して憂いているとか、歌詞解釈に様々な憶測を呼んだM1がこのアルバムの全てと言っても過言でないでしょう。

あまりにも完成度の高い楽曲とアルバムを作った彼等は、これを超える作品作りのプレッシャーに押し潰されて(?!)、次作『ロング・ラン』を発表するのに3年もの歳月を費やしました(別の理由があったようですが)。

そして、人気絶頂期にあったにも関わらず、グレン・フライとドン・フェルダーの永続的な不仲や曲作りのスランプ(やっぱり)などからバンド活動を停止、その2年後に正式に解散を発表するのでした。

このアルバムは、朽ち果てていく“ホテル・カリフォルニア”と共に自分達も果てていこうとしている、まるで解散の前奏曲だったかのような一枚なのです。