まずは空所に最もふさわしいものを選んで下さい。

 

  Many tourists visit Nara (     ) is one of the oldest cities in Japan.  

   1. which

   2. ,which

   3. where

   4. ,where

 

「isの主語がないからwhereは駄目だよね?」

「そうだね,よく復習できてる。whereは関係副詞だから名詞の代わりはできない」

「だから関係代名詞なのは分かるけど,1のwhichと2の,whichって…」

 

今回の主役はこのカンマ。普段は脇役扱いですよね。実際,日本語の点と同じで,文法的には書いても書かなくても良いことも多いのですが,関係詞の前ではとても大切な文法的役割を果たしています。

次の二文を日本語にして下さい。

 

  1. This is a beautiful flower.

  2. This flower is beautiful.

 

「1が『これは綺麗な花だ』で,2が『この花は綺麗だ』」

「よくできました」

「これで褒められても」

「ごめん,でも馬鹿にしているわけではないんだよ。beautifulの品詞はわかる?」

「形容詞」

「うん。じゃあ,関係詞は何節を作るんだった?」

「あ,形容詞節…ってことは」

「そう。例文1と例文2の形容詞の働きの違いが,関係詞節の前のカンマの有無に対応する感じなんだ。」

「どちらもflowerの説明でしょう?」

「確かに名詞の説明なんだけど,その名詞対する意識の違いがあるんだ。まとめてみるね」

 

【図1】

 

「名詞が『まだわからない』か『もう分かっている』かの違い?」

「そう。『綺麗な花』と言うときにには『綺麗ではない花』があることが前提になるよね?」

「あぁ」

「つまり他にも色々な花があるわけで,どの花なのかはまだ分かっていない。」

「で,beautifulって言うと,綺麗なものに絞り込むことになるってことか」

「うん」

「『結婚している二人の娘』というのも『結婚していない娘がいる』ってことだよね?」

「話している人はそう思っていると考えられるよね」

 

色々と選択肢があり,まだどれなのか分からない名詞を形容詞で絞り込むときに使うのが限定用法や制限用法です。形容詞の限定用法では,a beautiful flowerのように前から後ろの名詞に修飾をかける形式が多くみられます。

 

「叙述用法は?」

「さっきと違って『この花は綺麗だ』と言うときには,もうどの花かが分かっているよね」

「うん」

「そんなふうに,もう分かっているものに説明を加えるときに使うのが叙述用法や非制限用法

「あ,じゃあ最初の問題の答えは2?」

「何でそう思ったの?」

「だって,他に『奈良』があるわけではないから,限定や制限する必要はないでしょ?」

「正解。そうやって制限の必要がないときには関係詞の前にカンマをつけておくんだ。形容詞の場合はC(補語)として使っているものが頭に浮かべば良いよ」

 

制限用法では「奈良」のような地名や「マードックさん」のような人名を表す固有名詞が先行詞になることは基本的にありません。もちろん同じ地名や人名が複数候補に上がっている場合なら別ですが。例えば,クラスに田中くんが3人いて,その区別をするのであれば固有名詞が先行詞でも制限用法を使って下さいね。

 

「ところで,非制限用法ってどう訳すの?」

「内容を把握するうえでは,二つに区切ると良いと思う。【図1】なら,『マードックさんには二人の娘がいる』と『その二人の娘は結婚している』という感じで情報を捉えておくんだ。あとは文脈に応じて,適切なつなぎ方を考えて言葉を補うと良い」

「補う?」

「そう。訳そうとすると,何らかの繋ぎ言葉を補う感じになる。この英文だけだと『マードックさんには二人の娘がおり,二人とも結婚している』でも良いし,『…二人の娘がいるが,二人とも結婚している』とも訳せるんだ。どちらで訳すか(もしくはこれ以外の訳をするか)は文脈次第としか言えないんだよ」

 

最後に【図1】を少し詳しくしたものを【図2】として載せておきますので,復習に使って下さい。

 

今回,このブログでは初めて,読点(、)の代わりにカンマ(,)を使ってみました。何せ今回の主役ですからね。横書きの場合には公文書でもこれが正式な用法の場合があるのだそうです。

 

【図2】

関係詞第3講に続く)

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