回想録 その3 | ひつじ山の住人たち

ひつじ山の住人たち

老人保健施設 倉敷藤戸荘の隣の山に住んでる羊たちの日記

幸いにも、りゅう君はキャベツをもりもり食べて、すくすくと成長していった。

ママ羊のメイちゃんを失った後、りゅう君の傍には、メイちゃんと一緒にやって来たヨウくんが寄り添っていた。(ヨウ君がパパ羊かどうかは定かではないが・・・)

「りゅうりゅう」と呼ぶと、駆け寄ってきて餌を食べる可愛い姿に、羊飼いはメロメロであった。
羊飼いは、りゅう君と一緒に居たいという思いで、瀬戸大橋を往復する回数を増していった。

しかし、そんな蜜月の時間は、またも突然に奪い取られてしまうのである

7月の月曜日、2日ぶりに見るヨウ君の様子がおかしい。呼吸が荒く、餌を食べない。ヨタヨタと満足に歩けない。明らかに病気である。獣医さんを探そうとしたが、羊が診察を受けるのは難しく、ようやく翌日往診して頂いた。その時、何となくりゅう君もおかしい気がして、一緒に診察を受けた。
ヨウ君の病気の原因も分からず、りゅう君も明らかに異常とは指摘されず、夜を迎えた。
翌朝、ドキドキしながらひつじ山に向かう。隔離した場所でヨウ君の、ひつじ山でりゅう君の横たわり冷たくなった死体を見つける事となる。
涙雨の中での葬送の儀式。残された5頭の羊が、輪になってりゅう君とヨウ君を囲む。

また、元の5頭に戻ってしまった・・・