2010年

オムソーリ。悲しみの分かち合い、優しさの与え合い。歴史の責任を解くのは未来の歴史である。危機の時代を生きる我々が繰り返される危機から脱出するためには危機から出口へと向かうヴィジョンを描く事。生き残りをかけた競争に煽られ分かち合いを忘れてしまっている。分かち合いは指導者からではなく社会の全ての構成員の行動のみから生まれる。分かち合いは能動的希望であり現在の絶望した日本社会への能動的希望の書である。寡なきを患えずして、均からざるを患う(孔子の論語)。人的破壊「ヒューマンエコロジー」人間の絆の作り出す環境。市場の力だけでは保護されない公共財を保護、保全することは政府の使命である。人間の絆は社会経済のモデルの重要な概念であり社会資本と呼ばれている。東北はこの社会資本が充実しているといえる。ラーゴム(中庸の徳、なんでもほどほどに)文明を拒否すれば文明が生まれるとスウェーデン人は考えるため週末は自然に抱かれに郊外で暮らす。 市場社会は経済と財成と社会の3つのサブシステムが財政を結節点として結びついていると財政学では捉えている。

第二章危機の時代が意味すること

危機の結論は破局か肯定的解決。危機のタイミングでは慎重に考え適切な解決を選択しなくてはならない。人間の歴史はより人間的に人間が投企していく過程だとすれば、次の時代も人間がより人間的になる時代ときて築かなければならない。恐慌が起きるメカニズムとしては周期が三、四年のキッチン循環、周期10年の設備循環、周期50年の長期循環(ゴンドラチェフ循環)、ゴンドラチェフ循環は新規投資高揚として技術革新であるとしている。世界恐慌はこの三つの循環が重なった。一千年に一度の現在の世界恐慌は新しい時代の幕開けぜよ。近隣窮乏化政策ブレトンウッズ体制(アメリカを覇権国とする経済政策)イギリスはケンイズはバンコールという国際通貨の発行、アメリカホワイトはドルを基軸通貨とすることを主張。双方は完全雇用、経済統制、社会福祉、労働組合を重視した国内介入主義が前提。資本逃避が生じないように移動制限を統制する権限も国家が保有していた。現在の高率の法人税と高い累進性を備えた所得税は戦後のもので、資本逃避を防ぐためとも言える。これらの税は景気により自動的に税の徴収をコントロールするビルトインスタビライザー効果がある。所得分配機能もあり市場経済は安定し社会統合性が高まる。すると労働意欲も湧き生産性も向上。バブルは産業構造の転換が必要な時に、新しい産業の創設へと投資が向かわない時に起きる。


第3章失われていく人間らしい暮らし

企業は大きく、労働者は小さく。新自由主義は停滞する税収に合わせて小さな政府を実現することにある。ジニ係数(格差や不平等を計測する)スウェーデンは格差が激しいが、再分配機能により最も平等。日本は再分配による平等機能が機能している。アメリカは格差が激しく再分配もうまくいかず不平等。重化学工業を想定とした福祉国家(現金給付による生活保証は家庭内の無償労働前提)から知識社会へ。すると家庭内無償労働者の女性が働き出す。新自由主義は家族機能に期待をしているため給付を縮小しているが、時代は家族機能に代わるサービスである対人社会サービスを求める。このチグハグさがある。日本の社会保障、ヨーロッパは子供と年寄りに対する普遍的な扶養としてサービス提供しているが日本は無償により家族が支える社会保障を掲げ、それが困難に陥った場合限定でサービスをするという選別主義としている。知識社会への転換期に対人社会サービスが提供されないと、家庭内無償労働兼、労働市場者の低賃金者と労働市場のみのフルタイム労働者に二極化に分かれる。対人社会サービスは無償労働に拘束されずに労働市場へ参加することを保証する必要がある。知識社会へはプラスの条件として労働市場が必要とする人材の積極的な教育や環境整備が必要。(人間的能力の教育サービス)この教育サービスも地方分権のため進まない。

第4章分かち合いという発想

 社会心理学では予言の自己成就という、未来に対する確信が強いほどそうなる確率は強まる。つまり未来に対する明確なビジョン。人間は共同体的動物(アリストテレス)でありオムソーリ分かち合い思想が重要となる。知識社会となる今知識を溜めずに分け合うこと。そもそも農業(生きてる自然を材料にする)社会は協力原理をもとに作られていたが、その農業から分離した工業(死んだ自然を材料)は自立的営みができ競争原理も働いた。農業と工業の分裂。知識社会は働きかける対象は人間。よって分かち合いのような協力関係が重要。ピラミッド型の工業とはちがうはずだが、大学改革により学びの人を作れなくなってしまった。既知を疑い、未知を作り出す学びの人を。競争原理より協力原理を、相手の成功も自分の成功。分かち合い原則その一必要性の相互確認、その二共同責任、そのさん平等原則。この原則の根本は家族である。地域で協力しているうしおっ子ランドなる地方政府のような地域振興会がある。政治システムは強制力をもつ、民主主義はこの権力を民衆が持つ。この政治システムが社会システムと経済システムの分離を統合している。スウェーデンの国民の家ビジョンは国家を分かち合い原理の結んだ家族とした。そこで必要なのは現競争原理と分かち合い領域の適切なバランス。再分配のパラドックス社会扶助支出が高くなると格差が広がる。スカンジナビア諸国は好支出だがジニ係数は低い。垂直分配(限定的分配)と水平分配(絶対的分配)。スカンジナビア諸国は社会サービスは市場から購入するものではないと考える。社会サービス(医療、教育等)を無料にすることで生活保護費は少額に抑えられる。ユニバーサルに提供しない代わりに生活保護に置き換えている現代日本は不正受給も起こり得るので審査も厳しく、本来の機能が達成できないでいる。新自由主義は小さな政府へ向かったが競争原理市場経済と、分かち合いの経済はうまくバランスが取らなくてはならない。分かち合いに基づいた社会システムの水平再分配を予言の自己成就とするべきだ。

第5章今財政の使命を問う。

財政は本来分かち合いの経済そのものであるり、赤字となれば増税か、経費支出の削減しかないのである。財政均衡と小さな政府の実現を命題のように説く新自由主義。作り出された財政収支の赤字は、上げ潮派の主張は,共同負担を逃れるため分かち合いを削減し法人高所得者所得者のみを減税し収入を増やそうとする。新自由主義は均衡財政と小さな政府の実現を命題とするので、手段としては揚げ塩派でいく。ケインズは国家は不生産的支出なので、昨日は秩序維持のみと限定し小さな政府にするべきといい小さな政府主義、こと反対意見としてワグナーは資本的経費であれば公債での調達を肯定した。(建設公債はこれ)しかし対戦後はワグナーのような使途基準ではなく景気基準に置き換えられた

、そして新自由主義はケインズ理論(小さな政府、均衡財政の否定)を否定。各国を見るに、社会的支出と経済成長は相関性がない。小さな政府は格差貧困を産み社会統合を困難にさせる。すると社会秩序維持機能(警察、刑務所)の強化が必要となり、アメリカはこの費用が教育費を上回る。分かち合い経費は削減できても、警察と刑務所に関わる経費は削減できない。アメリカは小さな政府で自己責任社会、秩序維持には富める者が負担する(法人税所得税中心)ヨーロッパは貧しい国民も負担して一律のサービスがある。日本はアメリカとヨーロッパの悪いところのみを合わせ消費税の増税で突き進む。これでは社会統合が破綻せる。大きな政府スウェーデンは逆進的、小さな政府アメリカは累進的課税

第6章人間として人間のために働くこと

 人間の歴史は人間が人間的に発展していく歴史。労働市場で自己の時間を切り売りする。(レンタル)。よって誰の所有でもないゆえに労働市場に対する規制がある。これが労働組合。団結。見えざる手による市場原理はより稼げる富裕層に対してのものとなった。このことの意味は新自由主義は貢献に応じて分配されるとする。後見の低い怠け者を救済するから経済が活性しない。努力すれば報われる社会となる。この社会こそ公平で効率的なのだ。市場原理と民主主義の相違、財やサービスを自由に選択できるとするが選択できる世の中ではない。豊かなものが欲求するサービスの提供が社会貢献で少数貧民に対するサービスをするものは怠け者。市場では豊かなものが決定権を握るが、民主主義ではみんな一つの決定権を握る。市場原理は自己利益の追求による競争原理を。人間は相互に結ばれてる社会的動物であり協力原理による社会。人間が人間の行為の社会的意義を考えるようになるという市場原理なの恐怖。私の利益ではなく、我々の利益を,求めるようになってしまうと市場原理は恐怖する。労組への加入、被加入(正規雇用と非正規)で分断する。疑似共同である正社員とは違い非正規は労働市場の需給で変化、つまり景気に左右されてしまう。

 この二極化の克服には三つの同権化。賃金、社会保障、労働市場参加の同権化の実現。三は対人社会サービスを,公共サービスとして提供することにより家庭内無償労働から解放して労働市場へ参加させる。プラス傘下への訓練など、これをやると会社が辛くなるが、より人間的な産業構造を転換させるには必要となるので仕方ない。

 スカンジナビア半島は雇用の柔軟性が高く解雇しずらい。解雇理由も新産業への転換。また、積極的労働市場政策への支出もGDP比で高め。フレキシキュリティ(弾力性と安全保障、積極的労働市場政策の三角形戦略)。リカレント教育(いつでもどこでもただで教育、学び直し)。能力開発のためのワークフェアをスカンジナビア諸国は行っている。日本は産業転換するには社会的セーフティネットをつくらなくてはならないが、現金給付に主軸が置かれサービス給付の割合が低ければ転換は難しく効果も限定的。サービス給付(家族現物、保健医療、高齢者現物)をもっと増やして。ドイツは産業転換に難あり。参加保証と活動補償によって産業構造の転換が行われなければ日本は変われない。

第7章新しき分かち合いの時代へ

所有欲求(工業社会)と存在欲求(人間的欲求「追求できるのがポスト工業社会)。日本はホスト工業社会への移行が遅い。現代は、専門性が要求されるサービス業のみが伸びている。大量生産、消費の重工業時代では低次欲求、ポスト社会、知識社会に移ると高次欲求である社会的、自我、自己承認欲求。量から質に変換するのは知恵であり知識社会。経済とは自然の変換。自然がなくなると持続しない。情報は生産の場と消費の場を近づける。需要のみに注目でき無駄のない生産が可能となる。これにも知識が不可欠。農業にも適用される知識産業理論。知識社会のエネルギーは再生可能な自然エネルギーになる。エネルギー量は一定であり、エネルギーは人工的に生産も消費もできない。第二法則は仕事能力と質に差があり、その差は均衡化運動で解消される、、

人間的能力向上戦略 1教育投資「栽培型教育で肥料と害虫駆除のみ。変化の激しい知識社会では型にはめた反復では間に合わない。スウェーデンは、同時に雇用、経済成長、社会正義を達成するにはリカレント教育しかない。2人間の健全な生命活動の保証。そのためには医療と環境という生命活動を基軸に展開することが要求される。3、利他的であること。知識を独り占めにしないで他者に与える。分かち合い。信頼し合う人間の絆、つまり社会資本の培養。

ヨハネパウロ2世は自然破壊と人的破壊を警告この二つを克服することが分かち合い。レールムノヴェルム(新しきこと,革新)社会主義の弊害と資本主義の幻想。