第二章

アルファオスは競争相手より身体的に強いからではなく大きくて安定した連合を率いているから地位を獲得できる。そのためにグルーミングをして信頼を作る。何万もの帝国を作るには共通の神話への信仰が必要であった。想像上の現実が力を増し、今日では現実のものですら想像上の存在物あってことそのものとなった。環境圧力や遺伝子の突然変異なくして、社会的行動の重大な変化はあり得ない。ホモエレクトスは変異を起こさず石器を使って200万年も生活していた。サピエンスは遺伝子,環境変化をせず宗教などの物語を継承することにより新しい行動を伝えた。サピエンスの成功の鍵は虚構の物語の共有により団結協力することができた。トーテムを持っていた。認知革命は歴史が生物学から独立した時点だ。 

 第3章狩猟採集民の豊かな暮らし

進化心理学では現在の私たちの社会的特徴や心理的特徴は農耕以前の長い時間に形成されたと言われる。故に高カロリーを好む。現代の一夫一婦と核家族の中で生きるように強制された結果、不倫や高い離婚率がある。古代は共同参加社会であるものの嫉妬心の強いものもいたのは事実で現代の形は大多数の文化で標準なだけ。古代コミューンと永遠の一夫一婦制。人類全体としては今日の方が古代よりはるかに多くの知識を有しているが個人レベルとなると古代人類の方が歴史上、最も優れていた。古代狩猟民族は危険に満ちた出生時を生き延びれば生き延びた。古代人は多種多様なものを口にしているが現代人はその逆をゆく。学者は自分が答えられる目処のたつ疑問を投げかける。

第4章 史上最も危険な種

オーストラリアに到着したサピエンスは生態系変化(焼畑や動物序列)もあり次々と大型動物を絶滅に追いやった。アメリカ大陸へ行くためのシベリアに行ったのは大型動物の動物性タンパク質に魅力を感じたから。気候変動のせいにしたがるが、車輪や鉄器を発明する以前に大型動物の半数を絶滅に追いやった。サピエンスが新たな大陸に入植したのと同じ時にそれぞれの島の大型動物は絶滅している。唯一生き延びれたのは人類とその奴隷の家畜だけだ。


第二部農業革命

第5章農耕がもたらした繁栄と悲劇

 農耕への移行は紀元前9500-8500年頃。心は狩猟採集民なら、料理は古代農耕民。ほとんどの動植物の家畜化は困難でありほんの数種類のみが農耕の候補となった。それができた土地で農耕はスタートした。農耕民族になることにより狩猟採集民より生活が豊かになることはなくむしろ序列を作った。サピエンスが家畜化したのではなく、植物がサピエンスを家畜したのだ。小麦はとても手がかかるため定住したり肥料を施す必要があった。また、農耕のせいで多くの疾患ももたらされた。だからといって大きな恩恵はなく、栄養価も乏しく、害虫や病気の発生したあかつきには多くの人が亡くなることになった。

domesticateは家畜化、栽培化の意味だ。ラテン語では家のsimus に由来するが、家に住んでいるのは誰か、小麦ではなく人だ。進化の通貨はDNAの二重螺旋の複製。進化の成功はこの複製の数によって測られる。

 人類は繁殖の制御を助けるホルモンを持っている。条件の良し悪しで繁殖期の思春期が早まったり遅くなったりする。この繁殖の仕組みに文化的な仕組みが加わる。子供に母乳を減らし多くの粥を与えること、集団の生活が免疫を弱らせ、感染症の温床になることは理解していなかった。また、単一の食糧源に頼るというリスクも考えていなかった。ねぜ農耕をやめなかった、それは世代にわたる生活変化により過去の狩猟生活を覚えているものが不在な上,人口増により後戻りできなくなった。歴史の鉄則は、贅沢品は必需品となり新たな義務を生じさせる。昔はよく考えた上で手紙を書いた。大切な用事であり自分の言いたいことをどうやって表現するか慎重に考えた。そしてよく考えた返事が返ってくるはずだった。が、現代では労力が減ったはずなのに返事が来ないとイライラする窮屈な生活になっている。贅沢の罠の物語ら、より楽な生活を探求したら、変化の力を解き放ち誰も望まない形の世界が出来上がった。安全で楽な生活をするための些細な決定の累積が現代。科学者は歴史の展開の原因を経済と人口動態の客観的要因に求める。ギョベクリテペ遺跡では、狩猟採集民であるはずの9500年前から宗教的か、なんかしらのイデオロギーを持っていたと考えられる。この遺跡では神殿,トーテムを建設するために集落が形成されたと考える。このホモたちの農業革命の犠牲者として家畜がいる。現在の地球上の家畜は農耕社会の副産物としてサピエンスが拡げた。家畜化されてDNAの複製にも恩恵があった。進化の視点は成功の物差しとしては不完全。個体の幸福や苦難は考慮されず生存繁殖という基準のみで判断される。雌鳥や乳牛は役畜として生かされるが代償に本来の生活はできない。進化上の成功と個体の経験がどう結びつくか。現代の家畜とサピエンスはよく似ている。

 第6章神話による社会の拡大

農業革命は人類の繁栄か、それとも地獄行きにつながったのか。農耕民の家という陸の孤島。そして狩猟採集民と比べて未来が重要になり未来のために働く必要がでてきた。農耕の不確実性も相まって未来を心配していた。それは心配の種が多かったからだけではなくそれに対して手が打てたから。そして農耕によるストレスが大規模な政治体制や社会体制の土台となった。支配者やエリートができ食料の没収。この没収となった余剰を戦争、芸術、哲学の原動力とした。人類の歴史はこの世上で食っていたわずかな人の営みである。

想像上の秩序 集団が大きくなると争いが増え秩序が必要となる。合意に至らないことも増え紛争や革命が起こる。食料不足での紛争でなく豊かな法律家たちが起こした紛争。豊かさを極めたその時ローマの政治体制は崩壊。この惨事は長い時間かけて小集団で進化した事実があり、大集団となって大規模な協力のための生物学的本能が進化するには短すぎた。進化が未熟なのに協力ができたのは神話のおかげ。この想像力のおかげで強力のネットワークは構築された。協力というと利他的だが大半は迫害と搾取のため。

この協力ネットワークは本能や、個人的面識ではなく,共有された想像上の秩序、、集団心理的なものなのかもしれない。ハンムラビ法典は自分のヒエラルキーを受け入れれば住民が効果的に協力できると考えていた。これは未来への訴えでもあり,これをすれば富と安全が確保できると信じていた。アメリカの独立宣言も同じ効果を期待した。特定の秩序を信じるのはそれが客観的に正しいのではなく、それを信じれば効果的に橋梁してより良い社会を築けるから。ハンムラビはヒエラルキーをつくりだすことが安定繁栄する社会が築けると考えた。真の信奉者たち、自然の秩序は安定した秩序。軍隊も投資家も秩序を守るにはなんらかの心から信じている何かが必要。脱出不能の監獄 この秩序が想像上のものだと認めてはならない。また、このじぶんをまとめあげている秩序が自分の想像の中にしか存在しないことに気づくのを妨げているものがいる。現代は個人主義、自分の真の価値は外からではなくうちから生じると想像させている。中世は階級などにより外からの秩序を持たされていた。こうやって育つと自分の価値は他者から決定されると感じる。想像上の秩序は私たちの欲望を形作る。自らの心に従うようにというが、心はその時代の支配的な神話に支持されてしまう。協力しなくてはいけないが故のトーテムを欲するのかも。現代でもどこかへ旅行して人生を謳歌しようというのはロマン主義的消費主義の神話を信奉しているから。多様性を推奨するロマン主義は自分の潜在能力を最大限発揮するには多くの経験をしろという。想像上の秩序は共同主観である。 共同主観は変化させることは難しく、大規模な政党、イデオロギーに基づく運動、カルト宗教など複雑な組織による助けが必要。多数の見知らぬ人を協力させる必要がある。これには想像上の秩序が必要であり、これから逃れる術はない。

第7章書記体系の発明

 サッカーのルールは狩猟採集民、集落の小さな協力似ている。蜂は社会維持のために必要な情報がゲノムにコード化されているから争いは起きない。人間の社会秩序は想像上のものなので,秩序を保つのに意識的に努力しなくてはならない。大規模になるにつれ発明されたのがメソポタミア、シュメール人の発明の書記。クムシという署名。この書記体系は不完全であり行政文書的記録のみ。そのほかにもキープというインカ帝国で発展した書記方法もあったがスペインの侵攻により日本におけるcmへの統一により姿を消した尺のように,この書記法は消えた。シュメールは記録した情報を検索するのに優れた技術を有していたから際立つ存在となる。数字という書記体系は世界共通言語。数字書記体系をさらに発展させたのが01のみで表記するコンピュータ処理。この書記は人間の意識の主人になりつつある。ターミネーター、マトリックスなど。

第8章想像上のヒエラルキーと差別

 ネットワークを維持する想像上の秩序は中立でも後世でもなかった。アメリカの独立宣言は依然として富のヒエラルキーを擁護していた。このヒエラルキーは自然の法則だと信じた。しかしヒエラルキーは創造の産物であった。このヒエラルキーは大集団のそれぞれの個人の間の関係を調整してきた。お互いをどう扱うべきかを理解している。全ての人が自分の能力を存分に発揮できる機会は平等ではない。この機会はヒエラルキーの位置により決定する。悪循環 あらゆる社会は想像上のヒエラルキーに基づいているが、そのヒエラルキーは、その国々の既得権益に基づいて発展,洗練,不滅のものとなる。宗教であったり、アメリカの人種、インドのカーストがそれ。インドのカーストはアーリヤ人が自己の僧侶、武士を上層にし現地民は奴隷に分けるというカースト制度。階層が違う人間との接触を嫌い神話と観光の本質的なものにまで取り入れた。穢れと清浄の概念。カーストの概念、誰もが特定の階層に生まれ、それに背けば本人も社会全体も穢れる。アメリカと,黒人奴隷、一時は差別は無くなったがその時には差別の通りな社会層が作り上げられており黒人もそのような偏見を自己認識し悪循環となっていた。男女格差。女性は財産であり強姦は財産侵害と見ていた。この被害者は所有者である男性。夫婦間の強姦の成立はありえる。私たちの自然な(自然を想像した神の意図に一致した)不自然の概念はキリスト教神学に由来する。しかし、進化に目的はない。進化の過程でさまざまな生物のさまざまな器官が当初の目的とは違う使われ方をしているのは不自然というのだろうか。男女のカテゴリーは社会的分類でしかない。つまり、男性とは特定の位置に収まる人を指す。男女らしさは共同主観で時代で大きく異なる。家父長制は過去のどの時代でもデフォだった。筋力のため食糧生産支配権を握っていたからとの説は、体を使わない聖職、法律、政治柄除外されていたのはなぜ。暴力ではなく精神的能力と社会的能力で地位が決まる。攻撃性が男性優位の原因?戦争は国内は平和維持、国外は同盟国の獲得、他者(特に敵の考えていることを理解することが秘訣。3家父長制の遺伝子、妊娠中や出産後に面倒を見てもらうためオスに留まってもらう必要があった。象やボノボはメスはオスより弱いがたまに徒党を組んでオスを打ちのめすことがある。家母長制である。ひょっとしたらサピエンスのオスは非常に優れた協力的だからか。しかし、この男女不平等制度の普遍性と永続生はいまだに不明である。

第3部 人類の統一

第9章統一へ向かう世界

 人工的な本能を生み出す、想像上の秩序は精巧性を増す。この人工的本能のネットワークを文化という。フランス革命以降に世界は平等と個人の自由を根本的価値と見做し出した。自由と平等の折り合いをつけようと現代は奮闘している。この奮闘がために人々は考え再評価する。調和ばかりでは良くないのだ。この相容れない価値観はどの文化にも存在し認知的不協和という。これは必須の長所。この気持ちがないと人類文化ができたり持続することはなかっただろう。歴史は統一方向へ進み続ける。一つの文化が巨大文化にまとまるたびに別の巨大文化が分裂を起こす。地球は孤立する無数の人間社会の一大星雲だ。そして、現代はグローバル化がアマゾン奥地まで浸透しているが、それでも多種多様の文化は存在し続ける。そして影響を与え合っている。一切認知できないよう純正の文化はもう存在しなくなった。グローバルビジョン。紀元前1000年期で普遍的秩序という概念が根付いた。自分が属する種全体の利益に導かれる社会的動物はいない。しかしサピエンスは秩序を生み出し、1経済的貨幣2政治的な帝国3宗教を普遍的秩序として協力し出した。これを持たないものは「私たち」の中には入らなかった。このを推し進めたのは貿易商人(全人類は顧客)や征服者(世界は単一帝国だ)預言者(全人類は潜在的信者になり得る!)。

10章最強の征服者,貨幣

 イスラム信者もキリスト信者の作った貨幣を使った。物々交換の限界。恩恵と義務の経済は見ず知らずの大勢協力しようとするときにはうまくいかない。そこで貨幣の発明。貝とタバコ、他のものの価値を体系的に表せていたら貨幣なのだ(塩、牛、手形)。2006年では全世界の貨幣は473兆だが、硬貨と紙幣は47兆、大部分を占めるのはインターネット上の数字だ。貨幣は普遍的な交換媒体なので全ての人が欲しがる。貨幣はあらゆるものに転換ができ、保存もできた。このおかげで商業ネットワークは活発となった。この貨幣は想像上でしか価値がなかった。心理的概念。貨幣は、これまで考案されたものの中で最も普遍的で,効率的な相互信頼の制度なのだ。当時は,相互信頼を欠くので紀元前3000年のシュメール人の作った生物的価値のある大麦貨幣(シラ)その後,メソポタミアの銀のシュケル。初めての硬貨はリュディア国王で、その硬貨には金属の重さと中身を保証した権威を明らかにしていた。硬貨偽造の罪が重いのは権威の信頼と誠実さを汚したから。ローマのデナリウス硬貨は他国でも評判となり中華圏など世界統一の貨幣圏になっていく。貨幣に対する信頼は他の人が特定のものを信じていることを信じるように求めるから。貨幣は人類の生み出した寛容性の極み。貨幣のおかげでさまざまな価値観の人を結びつけることができるからだ。貨幣の代償、普遍的転換性、普遍的信頼性という二つの原理により各地の伝統、親密な関係などの人間の価値が損なわれただの需給の冷酷な法則となる。それまでは市場の埒外にある、値のつけられない名誉,愛などへの信頼に基づいた。グローバル経済へのチケットとして部外者に土地が売られたりする。貨幣の信頼は、神聖な価値ではなく非現実的制度に注ぎ込まれた故、個人ではなくその個人の持つ貨幣に信頼を置く。見知らぬ人と協力もできるが、親密な関係を損なうこともある。ヌマンティアの包囲戦。帝国とは第一に異なる文化のアイデンティティと独自の領土を持ったいくつもの民族支配をしていること。(十数個の民族を従える)第二に、変更可能な境界と潜在的に無人の欲をもつ。(自らを何も変えずに他国を飲み込んでいく) 帝国は人口、領土の広さと言う客観的なものではなく、実質的な中身である文化的多様性と変更可能な国境があること。大英帝国のように民主体制のみでも帝国となる。帝国は人類の多様性が激減した要因。悪の帝国?人類はここ2500年間帝国という政治組織にいる。人類の文化的業績(芸術、富、音楽、思想、哲学)相当部分が非征服民の搾取にその存在を負っている。キュロスはお前たちのためだと言いながら征服したが福祉の責任も負っていた。サピエンスは人類を彼らとわしたちという二つの部分に本能的に分ける。ディンカ族、ユエル族、ユピック属、中華思想のように自分以外は人ではなく自己の属名を人や本物の人という意味とした。民族的排他性。親の特権は子供の福祉に対する責任。キュロス以降の帝国イデオロギーは包括的、網羅的傾向があり支配者,非支配者の互いに対する責任を感じていた。慈悲深い帝国ビジョンは帝国を正当化させ、独立や反乱を否定してきた。中国の始皇帝は帝国時代は秩序と正義の黄金時代とみなされその帝国が崩壊するたびに再統一を目指していた。標準化は皇帝たちの大きな恵み。帝国は非征服者が恩恵を受けるよう優れた文化を広めるために必要なこととして正当化してきた。中国にとっては天命を受けたからには人類を教育するのが使命だと思っている。この思想はスペインポルトガル帝国 

真の信仰心、ソヴィエトはしほんしゅぎから理想的な労働者階級独裁の流れを促進させる義務があると、アメリカは民主主義と人権の恩恵をもたらす義務を感じている。義務履行の遮断は戦闘だったとしても。帝国によって広められた文化概念はエリート支配層が生み出すことは滅多になかった。非支配層は愛する自分の文化は失っているのに採用した文化からは野蛮人扱いされる。(ガンディー)一方で、うまく新参者とエリートがまじわり、うまく主義や思想を自分の伝統に作り替え取り入れたこともあった。純粋無垢な帝国主義を取り戻そうというイデオロギーは帝国であったことの利益を放棄するようなものだ。現代は人類文明の遺産である。過去を単純に悪と正義でわけてもどうにもならない。新しいグローバル帝国。全人類が政治的権力の正当な源泉であると信じ、人権を擁護し、全人類の利益を守ることが政治課題だというようになってきている。世界政治はバラバラだが国家は急速に独立性を失っている。国家の境界や意見は次第に顧みられなくなっている。このグローバル帝国はローマ後期に似ていて、多民族のエリート層に支配され共通の文化と共通の利益によってまとまる。そして多くの人類がグローバル帝国を選びつつある。