認知バイアス


認知とは心の動き全般を指す言葉である。バイアスとは物事の人側面に注意が向けられその他の側面についての思慮が足りないこと。


第1章注意と記憶のバイアス

 注意の容量は限られている。視覚情報の貯蔵容量はとても少ない。

ワーキングメモリとは一時的記憶の貯蔵庫。

エピソード記憶。経験やエピソードを記憶しておく場所。欠陥としてはみてないものを見たと経験したとすることがある。また都合が良くなるようにこれは自動的に行われる。記憶の書き換えもよくある。何を見ていたかは覚えているがどこで見たかいつ見たかなどは覚えていない。見る、見えるからといって存在の確証とはならないし、存在するからと言って見えるものではないことを自覚していない。そして、見えていない聞こえていないということがのちの行動に影響を与えることがある。


第2章リスク認知に潜むバイアス

 人は思い出しやすさで発生頻度を判断する。(利用可能ヒューリスティック)それは何度も経験することにより記憶によく残りすぐ思い出しやすくなる。ぎゃくを言えば思い出しやすいものは頻繁に経験している。

 これがよく現れるのが報道。ネガティブ情報を何度も受け取るうちに世界全体の変化を見誤ってしまう。


第3章概念に潜むバイアス

 連言錯誤 一般的な状況よりも、より限定された状況の方が、事実らしいと勘違いしやすいこと AかつBの確率は元事象であるA、Bの確率より低くなる。

カテゴリー化することによって対象に対して色々なことが自動的に理解できる。カテゴリー化は心の働きの根源に位置しておりほとんどの心理的な現象に関係している。

 プロトタイプとの比較照合。プロトタイプとはカテゴリーに属する平均的な特徴を束ねたもの。わかりやすく言えばそれっぽいもの。プロトタイプが作られる仕組みは帰納的推論である。帰納とは個別の事例からその事例が属するカテゴリーの本質的特徴を抽出することをいう。事例と遭遇によってプロトタイプは形成される。つまり人によってはプロトタイプが違うことはしばしばある。

 正確なプロトタイプ作りには偏りのないサンプルが必要になる。代表例とサンプルは異なる。アメリカのスカウトがイチロー選手のような選手が日本には多くいると考えたことなどがわかりやすい例だ。

これを代表性ヒューリスティックといい、身勝手な推測予測断定を行うことをいう。そしてこれが差別や偏見のべーすとなる。

 代表例がプロトタイプであるかのように働くことをは心理学的本質主義と呼ばれている。

 人がある行動をとるとき原因を探ることを帰属という。その帰属に対して心理学的資本主義でき考えを発動すると差別や偏見を生むことになる。これは日常的出来事か、非日常であるかによって変化する。

 これらの判断の誤りは事後的にも行うことができ、大事な判断を下すときは重要である。


第4章 思考に潜むバイアス

 思考とは、問題解決、意思決定、推論と呼ばれているがその中でも推論バイアスについて考察。推論とは、与えられた前提から何かの結論を導き出す心の働きをいう。 

確証バイアスとは、第一印象が良ければ、その第一印象の評価がその後続くということ。一度その人に対する信念(仮説が)形成されるとそれを確証、補強することに注意が向けられる。予言の自己成就ともいう。事象やトラブルの因果関係を勝手に一つに絞り込むことも確証バイアスの働きによるものだ。


5章自己決定というバイアス

 無意識こそが私たちをコントロールしている。意識的に選択したものでも選考判断は順序の影響を受ける。周りの環境からの情報に影響を受けてしまう。意識できない刺激の方が単純接触効果は現れる。私たちは脳の奴隷なのか。脳というご主人様とロボットとの関係のように意図脳活動は意図より先に発生している。これを決定論という。

 人の行動は意図のみで決定することはできずさまざまな要因を検討する必要がある。


6章言語がもたらすバイアス

 光の部分。人は言語を使うことによりより多くの事柄を記憶することができるようになった。チンパンジーも幼児も同じように同じものを発見し、単語の学習が個別性を超えた思考を可能にすることを示している。

 影の部分。言語隠蔽効果といあ、言葉で記憶した方が、記憶が定着しづらくなることがある。言語は思考を劣化させ、停滞させることがある。学校などで行う言語化して自分のやっていることを振り返る反省作業は結果を悪くすることがある。体を動かせばわかるのに、言葉でやろうとすることによって言葉の正解に体を無意識に近づけてしまう。

 言語を喪失した自閉症患者などは絵の出来に関わっているとした説もある。これは写真的記憶がかんけいしている。チンパンジーやクロマニヨン人が持っていたとされる。そもそも人の顔などの生活必需な記憶はわざわざ言語にしなくても記憶している。脳の言語活動部位を外部刺激により働きを弱めさせるとスケッチが上手くなったという実験もある。言語は言葉を分解する道具である?文を聞いたり読んだりする中で私たちは言葉を理解するだけでなく言葉が語っている状況を理解している。(状況モデルの構築という)言語が認知を助けてくれる一方、言語は記憶や思考を妨害することがある。


第7章 創造についてバイアス

 私たちは世界を捉えるときに対象と関係を考える。そして常識的なものの配列や傾向を選択する。(これを傾向性を制約)この制約は普通の認知を効率的に行うことに寄与するためである。この制約を打ち破るためには多様性が必要である。もう一つはゴールを意識し、現状とゴールとの差をしっかりと評価すること。

 これは意識と無意識にも言えることで無意識では気づかないうちに徐々に適切な方向へ向かわせていたりする。意識は無意識システムの結果のみなき注意を向け大雑把に評価するが、閃いた瞬間は無意識の結果を横取りしたようにひらめきが起きている。

 失敗を繰り返すことにより制約が外れ緩和される。素晴らしいアイディアは全て、無数の既存のアイディアからなっている。創造はそれを評価する社会との関わりによってのみ生み出される。早すぎた天才などは社会との関わりが当時なかった天才達である。想像とはサーフィンに似ていて、ベテランが波のない湖に行っても認められなかったり素人が言い並みに乗っても大怪我をしたりする。熟練とチャンスの出会いが創造を生み出す。

創造的になるのは、心の制約を外す、緩和させることが必要でありそれは多くの失敗によってもたらせる。その失敗の過程での多様な試み、そしてその無意識的評が重要である。チャンスは準備された心に訪れる。


第8章共同に関わるバイアス

 相当な数のメンバーが一定以上の期間にわたって相互作用しある秩序が生み出される。渋谷のスクランブル交差点など。割り込まれそうになったら一旦回避し、また違う前の人を見つければいい。多元的無知に近い状況。チーム対戦となったり、目標があると同調はさらに強まる。共同を阻害する要因は、複数いるが故80:20の法則や、評価を気にして発言できなかったり、他の人が話しているときに意見を忘れたり、話を遮られたりがある。

 困っている人がいたときに個人だと助けるが集団になると援助意識が消えることがある。ホロコーストもその例であり、官僚制による分業の責任転嫁により可能だったとしている。分業することにより心理的不安が軽減され罪悪感が薄れたのだ。

 共感というバイアス。共感には情動的共感(苦難に遭っている他人を見て、自分も同じように感じること)と認知的共感(人の心を推測する)があり、脳でも働いているところは違う。前者には身内贔屓のような場合のみ働く。

第9章認知バイアスというバイアス

 二重過程理論。思考にはシステム1という直感的で動物由来のものとシステム2で理論認知的で前頭葉が発達した人間特有のものがえる。認知バイアスはシステム1でもたらすもの。

 再認ヒューリスティック、最良選択ヒューリスティック問題のように、僅かなバイアスや知識に頼ることにより、理想からかけ離れてしまうことがある(株銘柄選定など)

 前提を鵜呑みにしないためのスキルが必要であるわ

 典型的なよく起きることについては進化学習を通じて頭を働かせることなく対処できるような方法=ヒュースティックを身につけることができる。典型的でないものは人間の知性のみせどころ、言語の発達の際に脳が他の部位を使ったようにブリコラージュしてきた。

 人は臓器提供の諾否のように、いちいちチェックなどしないで手抜きをする。それを利用したのが、軽く相手の背中を押して行動を促すような、ナッジと呼ばれる強制を伴わない手法がある。