2022年8月1日から8月26日日まで、国連本部で開催されていた核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議は、前回2015年に引き続き2回連続で、最終合意文書を採択しないまま閉会した。

藤末は、2004年に参議院初当選以来、PNND(Parliamentarians for Nuclear Non-Proliferation and Disarmament:核軍縮・不拡散議員連盟)のメンバーとして核兵器廃絶を世界の国会議員の仲間と取り組んできた。参議院議員でなくなってからは、大学の客員教授としてPNNDのオブザーバーとして活動を行っている。

今回のNPT再検討会議の様子は、PNNDやICANなど国際NGOがメールでレポートを送ってくれており、その交渉が相当難航していることは知っていた。それでも何とか最後には最終合意文書を採択できないかと期待したが、残念な結果になってしまった。

 

現在、ロシアが実際に核兵器を実際に使用するのではないかと言われ、北朝鮮も核兵器を搭載可能な最新ミサイル技術を開発し、中国も保有する核兵器の数を増やしている。

このように、日本を取り巻く核兵器の環境はますます厳しくなる中で、マルチ(多国間)で東アジア諸国の核兵器拡散を防ぐNPTは、日本の安全保障を高めるためにも、非常に重要な枠組みである。

 

ちなみに、NPTは1970年に発効した。現在、191か国が参加し、米国、ロシア、中国、イギリス及びフランスの5か国に核兵器の保有を認め、他の締約国には核兵器の開発・保有・取得など核兵器の拡散を禁止している。NPT再検討会議は5年に一度開催され、核軍縮や核不拡散の行動計画となる合意文書を採択してきた。この合意文書が採択されないということは、NPTが機能しなくなることである。正直なところ、「この日本の安全保障に大きな影響があるNPT再検討会議のことに日本のマスコミがあまり触れない」のは大きな違和感を感じる。

 

NPT再検討会議の議論のポイントをいくつかピックアップすると、
1.ロシアの反対:「ウクライナによる原発管理の確保」に対する反対、また、ブダペスト覚書に関して「既存の義務と約束を完全に順守する重要性を再確認」への反対。
2.アメリカの「核兵器先制不使用」への反対。国際NGOから送られてくるメールを読んでいると、彼らはこのアメリカへの対応への批判が大きかったと感じる。

3.中国の「核分裂性物質の生産一時停止」への反対。これが合意されれば、中国の核兵器保有増を止めることができたかもしれない。
4.「NPTと核兵器禁止条約(TPNW)は補完関係」という記述も反対された。


このようにNPT再検討会議においては、様々な「核兵器廃絶にとってはネガティブ議論」が行われている。NPTを再生させるのは容易ではないと私は見ている。


しかしながら、世界で唯一の被爆国としての役割が日本にはある。

私は日本が進む方向として

1.核兵器不拡散・廃絶の研究及び国際連携を進める国際組織を日本が中心に設立すること

2.核兵器禁止条約の推進の枠組みを「核保有国も含め」構築すること

があると考える。

 

二つとも相当困難なことだとは思うが、来年5月には、広島でサミットが開催される。このサミットでこの二つの点を打ち出し、合意できれば、核兵器廃絶に向けて日本の大きな貢献となる。

広島出身の岸田文雄総理に私は大きく期待している。