本ブログの②においては、本年4月の財政金融委員会において鈴木財務大臣に質問をさせて頂いた内容を紹介させて頂きましたが、本年6月2日の参議院財政金融委員会において、再度鈴木大臣に質問をさせて頂きましたので、その内容を紹介させて頂きます。

 

鈴木大臣からは、今回も前回と同様に「丁寧な検討が必要」というお答えを頂きましたが、同時にフィンテックの推進は重要なことであり、様々な環境整備に努めていくとの前向きなお言葉も頂きました。また、国税庁からは、今年度の確定申告から暗号資産取引に係る収入を把握できるようになり、本年夏頃にも集計が完了する旨の回答も頂きました。

 

③令和4年6月2日 参議院財政金融委員会

○藤末健三君

ただ、我が国の場合は、非常に早く法整備を進めたものの、暗号資産、また仮想通貨と過去は言っておりましたが、大きな課題がございます。それは、一つありますのはこの総合課税の問題でございます。我が国の、この三ページ目の四、税制面における課題ということで書いてございますが、我が国は原則雑所得として総合課税されると。したがいまして、最大国税で四五%、住民税を入れると五五%の課税がされると。一方、アメリカでは、一年以上保有した、基本的にキャピタル課税であり、一年以上保有した場合は最大二〇%までの課税。イギリスはキャピタル課税と、二〇%の固定税率。そしてまた、ドイツは、最近法律を改正しまして、一般原則に従って課税と書いてございますが、一年以上保有した場合については課税されない。フランスはキャピタル課税となっているという状況の中、我が国だけが総合課税となり、累進課税の下、最高で五五%の課税がされるという状況でございます。このような状況でございまして、是非、この主要国において一般投資家による暗号資産取引により得られた所得が累進課税の対象となっている国はどれぐらいあるかというのを教えていただきたいと思います。

 

 

〇政府参考人(住澤整君(財務省主税局長))

お答え申し上げます。お配りいただいている資料の三ページ目の主要国における課税関係、これについて表に記載のない部分も補足して御説明申し上げますと、まず米国のニューヨーク州ニューヨーク市の場合でございますが、このお配りいただいた表には連邦税の数字しか書いてございませんが、州税、市税含めますと、一年以下の短期保有の場合には最高で五一・八%の総合累進課税が行われ、一年超の長期保有の場合には、分離課税ではあるものの、最高三四・八%の累進税率による課税が行われております英国においては、おおむねここに書かれているとおりですが、保有期間にかかわらず、分離課税ではあるものの、最高二〇%の段階税率による課税が行われておりますドイツにおきましては、一年以下の短期保有の場合に、ごく少額の場合を除いて最高四七・五%の累進総合課税が行われますが、一年超保有の場合についてはここにあるとおりでございます。なお、非課税所得の場合、損益通算も認められないということになります。また、フランスにおきましては、総合累進課税と比例税率による分離課税の選択制となっておりますが、分離課税の比例税率は、ここにありますとおり、三〇%と我が国よりも高い水準となっているというのが現状でございます

○藤末健三君

是非、今度、同席している委員の方にお伝えしたいんですが、実は、ここにわざと書いていないんですけど、シンガポールはゼロです。かつ、企業が進出した場合に五年ぐらい無課税という状況でございまして、日本の新しく、このブロックチェーン、メタバースのイノベーションを起こそうと、企業をつくろうとしていた人たちが日本ではなく海外に行っているという状況がございますので、是非この税制の問題、是非皆様も御認識いただきたいと思います。

ちなみに、日本暗号資産ビジネス協会が試算したデータがございまして、四ページ目にございます。これは、アンケート調査に基づいて計算したものでございますけれど、暗号資産の取引を分離課税に変えた場合、五二%の税収の拡大が見込まれるというデータがございます。これはあくまでも、暗号資産取引における年間所得が二十万円以下のために確定申告をしていない人がいますので、更に取引を拡大し確定申告を行うようになった場合の試算となりますけれど、暗号資産の国内登録ユーザーは五百万人以上に上がっており、取引額を見ても、二〇二〇年度は現物取引で前年度比二六九%、約三〇〇%、証拠金取引でも一四一%の伸びを見せておりまして、あながち想定として不合理であるとは言えないと思っています。

 

是非国税庁においても、暗号資産取引を把握するために申告書の記載事項を変えたと聞いておりますけれど、どのように変更したのか、またデータはいつぐらいに出るのか、教えてください

 

○政府参考人(重藤哲郎君(国税庁次長))

お答えいたします。暗号資産の取引に関しましては、国税庁としましても、納税者の方に適正に申告をしていただけるよう的確な周知、広報に取り組むとともに、適正に納税を行っている方々が不公平感を抱くことのないよう申告誤りの適正な是正を通じて適正、公平な課税を実現することが重要だと考えております。

こうした観点から、暗号資産取引に係る収入がある方につきましては、これは令和三年分の確定申告からですが、確定申告書のその他雑所得の区分という欄があるのですが、そこに暗号資産取引に係る収入がある方には印を入れていただくということとしております。こうすることによって、暗号資産取引の申告状況の確認を行えるようにしているところでございます。令和三年分の確定申告からということでございますので、今まだその計数を集計をしているところでございます。それらの公表の仕方などにつきましても、今後検討していきたいと考えております

 

○藤末健三君

是非いろんな学者の方々や事業者の方々の知恵をいただいて、こういう税制の問題を把握していただきたいと思います。繰り返しになりますけど、今非常に大きい勢いで成長していますし、これがまた日本の経済の成長の基盤となることは間違いないと思っています。ほかの国におきましては、やはり分離課税とか税制を抑えながら、国内に暗号資産が集まり、かつ流通する状況をつくる、それは恐らく次の代のイノベーションに向けての基盤となりますので、是非考えていただきたいと思います。実際に、岸田総理は五月五日のシティーにおける講演で、ブロックチェーンやNFT、メタバースなどウエブ三・〇の推進のための環境整備を含め、新たなサービスが生まれやすい社会を実現しますと発言されています。また、五月二十六日の衆議院予算委員会においても、自民党、我が党の小倉衆議院議員からの質問に対して、ウエブ三・〇時代を迎えるに当たり、政治の立場から環境整備をしっかり進めていかなければならないと答弁されています。そして、五月三十一日に公表されました骨太の方針において、フィンテック推進のため、セキュリティートークン、括弧、デジタル証券での資金調達に関する制度整備、暗号資産について利用者保護に配慮した審査基準の緩和、決済手段としての経済機能に関する解釈指針の作成などを行うと明確に記されております

私は、これまで何度も申し上げていますように、この総理がおっしゃるウエブ三・〇、メタバースとか、そういうNFTなどを使った環境整備、この中核には暗号資産取引に関する所得税に、暗号資産に関する所得に対する分離課税の導入、ほかの国と同じレベルにするということが必要であると考えておりますが、是非、鈴木財務大臣の政治判断で前向きに検討を進めていただきたいと思いますが、金融庁と財務大臣に答弁いただければと思います。お願いいたします。

○国務大臣(鈴木俊一君)

暗号資産の取引に係る所得についてでございますが、外国通貨の為替差益と同様に原則として雑所得に区分されておりますので、したがいまして総合課税の対象となっているところでございます。一方におきまして、上場株式等の譲渡益等につきましては、税制の中立性、簡素性、適正執行の確保などの観点のほかに、貯蓄から投資への政策的要請を受け、一般投資家が投資しやすい簡素で中立的な税制を構築するといった考えから、二〇%の分離課税が採用されているところでございます。

暗号資産の取引による所得に二〇%の分離課税を採用すべきとの御意見があること、これは承知をいたしております。しかし、給与や事業で稼いだ方は最大五五%の税率が適用される一方で、暗号資産で稼いだ方は二〇%の税率でよいとすることについて国民の理解を得られるのか株式のように家計が暗号資産を購入することを国として推奨することが妥当なのかなど、様々なこれも意見や課題があると考えておりまして、丁寧な検討が必要であると思っております

いずれにいたしましても、フィンテックの推進、これは重要なことでございます。今般の資金決済法等の一部を改正する法律案を含めまして、様々な環境整備に努めてまいりたいと思っております

 

○藤末健三君

是非議論を深めていただきたいと思います。ただ、時間がないと思っておりまして、今どんどんこのメタバースとか暗号資産などの分野で新しい事業を起こす若い人たちが海外に行っている。特にシンガポールとかドバイに行って事業をしている状況がございます。私の知り合いも実際に三月にドバイに行きまして、ドバイの方には、この暗号資産とかメタバースをやるための専用のインキュベーション、ベンチャーが集まったビルができているという話も聞いております。

是非、新しいこのウエブ三・〇の世界で日本が新しいイノベーションを起こし、本当にアジアのハブになるためには、今まで考えられていましたように、これ、元々二〇一七年に仮想通貨という名前で通貨的な扱いになってしまった。したがいまして、ドルやユーロといった為替の利益と同じように雑所得課税をされたという歴史がございます。その流れがずっと続いていますけれど、今どんどん変化が進んでおりまして、先ほど骨太の方針でも書かれたように、セキュリティートークン、実際に証券があって、その証券を分散台帳に分割して資産管理を行うような仕組みもできておりますので、実はもう資産化、投資の資産化、資産の新しいこの表記の仕方みたいな形もございますので、是非、決済手段としての通貨なのか、それとも資産なのかということで、どんどんどんどんこの資産としての価値が高まっている。実際にこの暗号資産を通じてガバナンストークンというものがございまして、証券を買って投資するような形で、このトークン、暗号資産を買って、そしてそれが会社の投資になるという仕組みももうアメリカでは動き始めていますので、是非ともこの新しい仕組みを日本に早く導入し、ほかの、海外でやっぱり話をしていますと、この暗号資産というのは今までの金融システムとは全く違うシステム、もう国境がなく、個人が、個人がもう自由に取引できる、コスト低くという新しい世界が生まれますので、是非、次の世代の日本の金融サービスなど新しいイノベーションを起こすためにも、この税制改正、できるだけ早くやっていただくことをお願いしまして、私の質問を終わらさせていただきます。よろしくお願いします。