7月14日、同人ショップの最大手である「とらのあな」を運営する株式会社虎の穴取締役である鮎澤慎二郎氏から、コロナ禍における取り組みについてお話を伺う機会をいただきました。

 

今回の発端は、こちらの記事を是非読むべしと紹介されたことに始まります。

記事の冒頭にもあるように、今年に入ってとらのあなの直営店が相次いで閉店しているというニュースは見聞きしていたため、私も単純に「コロナ禍で経営が厳しくなっているのだろう」と考えておりましたが、実際は経営戦略によるものであり、収益は逆に伸びているということでした。

このコロナ禍において、収益を伸ばしているという話はなかなか聞くことがなかったため、是非直接お話をお聴きしたいと思い、公式サイトのメールアドレスに直接連絡をさせていただくと、鮎澤さんが快くお会いいただけるとの返信をいただきました。

 

当日、鮎澤さんにお会いする前に、秋葉原にある実店舗に伺いました。

 

以前にも伺ったことがありましたが、改めて品揃えの豊富さに圧倒されます。

7Fのイベントフロアでは、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』のイラスト展が行われていました。

(こちらのスペースは撮影可となっていました)

 

不勉強で、この作品については詳しくありませんでしたが、展示されているイラストのキャラクターはどれも可愛らしく、アンコール開催されるのも納得です。

 

秋葉原店を後にして、いよいよ鮎澤さんとの面会に。

 

まず私から、今回快く面会をお受けいただけたことに対する御礼と、記事を拝読しての感想をお伝えさせていただき、実際にコロナ禍においてどのような取り組みをされているのかを伺いました。

 

鮎澤さんからは教えていただいた内容は以下の通りです。

・クリエイターが生み出した作品はイベントで販売されるが、イベントの特性上、全ての人に届けることができない。そこで店頭・通販という形で欲しい人がいつでも手に入れることができるようにするというのがとらのあなが行っているビジネスであるが、その根っこにはイベントがある。

しかしながら、コロナ禍→イベントの開催ができない→作品をつくる機会がない→委託販売物が無い、という流れとなってしまった。実際に2020年4月から2020年6月ごろまで売上減が続いていた。

・一方でネット上での展開は進んでおり、男性向けの作品はイベントを起点に広がっている様に思えるが、女性向けの作品に関してはWEBイベントといった対応が早期に広がり、ネットを中心に伸びていた。そこで、実店舗での販売よりもオンラインでの販売の方に経営的な舵を切った。

・とにかくクリエイターが作品を生み出すサイクルをつくっていくことが重要だと考えている。現在当社のサービスとしては、男性のファン層は「Fantia(ファンティア)」に活動の場を移している。「Fantia」に関しては、海外での売上も伸びていて、全体の2割を占める。北米、アジアで多く売れているが、ブラジルやチリなどの南米でも人気がある。

・日本の強みは、クリエイターの数が圧倒的に多いこと。他方、クリエイターの年齢層も広がっており、クリエイターの健康や医療の点など課題もある。フリーランスの健康診断を経費として処理できるようになるなどすると、恩恵を受ける人は多いのではないか。とらのあなが運営している「とら婚」は、クリエイター支援の一環という側面も強い。

・作品を如何に有効活用できるか、資産価値を見出すことが重要。作品の創作活動にはモチベーションが必要であり、それをつくることも大切であると考えている。

などなど、大変示唆に富むお話を伺うことができました。

 

また、会議室には、社是「利他道精神」が掲げられていました。

京セラの稲盛和夫先生の経営哲学を元にして、顧客やクリエイターの方々との関わり方や、ひいては自社従業員としての在り方を定めた虎の穴独自の企業理念との事です。

私も稲盛フェローの一員として、非常に共感できる内容でした。

 

鮎澤さん、この度は貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました!