9月27日に香川県高松市において、第6回目となる「ふじすえ健三フォーラム」を開催いたしました。

 

香川県高松市でフォーラムを開催した理由はもちろん、今年4月に施行されました「香川県ゲーム規制条例」について、現地の方々と意見交換をしたいという思いからです。

 

これまでに開催した5回は全て私一人が表現の自由を守るための活動を報告させていただき、会場の皆さまからの質問やご意見をいただくという形式でしたが、今回は特別ゲストとして、ゲーム規制条例は違憲であるとして香川県を相手取って訴訟を予定している高校生の渉さんとその代理人である作花知志弁護士、香川県を拠点に活動されているコンテンツ文化研究会の杉野直也代表にお越しいただき、ご講演をいただきました。

 

 

まず初めに、渉さんから9月30日に提訴することと、それに対する意気込みが伝えられ、それに続いて作花弁護士から提訴の理由と裁判の流れについてお話しいただきました。

 

 

作花先生の講演のポイントは以下の通りです。

 

〇今回の裁判は、「立法の不作為訴訟」という類型として行う。

「立法の不作為訴訟」とは、憲法上国家や自治体が法律や条例を制定、改正、廃止すべきところをその義務を怠り、そのために国民に損害を与えた場合に行う裁判のことで、今回は香川県(議会)によるゲーム規制条例により原告の基本的人権が損害されているということで提訴することとなった。

 

〇訴訟における原告側としての主張は大きく以下の3つ。

 

①条例の規定そのものが不明確であるということ。

その条例により、何が規制されているのか分からない状態となり、本来であれば制限しなくてもいい行為まで制限せざるを得なくなる「萎縮的効果」が生じてしまう。

 

②憲法94条の規定により、「条例は法律の範囲内で定めることができる」とされており、逆に言えば「法律に反する条例は無効になる」ということである。

この条例が制定される前に国会で質問がされており、政府は「ゲーム依存症の発症を防ぐためのゲーム時間の制限に係る有効性及び科学的根拠は承知していない」と答弁している。

つまり、政府としてネット・ゲーム依存症に対応するための法律を策定する予定は現時点ではなく、さらに言えば、政府が「科学的根拠は承知していない」というものに対して、地方議会が「科学的根拠がある」として条例を作って制限できるのか。

 

③「ネット・ゲーム依存症」を根拠に、親や子どもの基本的人権を制限できるのか。

政府が「科学的根拠は承知していない」というのであれば、そもそも条例を作ること自体が許されないのではないか。

仮にネット・ゲーム依存症を対象に条例を作ることは許されたとしても、その手段として「1日60分以内」「21時まで」のような制限は、必要最小限度なのか。

この条例は前文において、「WHOがゲーム障害を認定した」と書いているが、WHOはインターネット上においてQ&Aを公表しているが、「どういう人が、どういうことをするとゲーム障害になるのか」という問いに対して「どういう人が、何をするとゲーム障害になるのかはまだ分かっていない」としている。ゲーム障害を認定したというWHO自体が、どうしてゲーム障害になるのかということが分かっていないのに、条例が一律な規制をすることが許されるのか。

 

また、さらに言えば、この条例が制定・施行されたのがコロナ禍の真っ只中という状況であり、学校が休校となり、様々なイベントなども中止となる中、子どもたちは学校の友達や親せきなどとネットを通じてコミュニケーションを取っており、ネットを通じて様々な人や文化に触れる機会を得ている。

このような状況下において、条例によって一律に制限するようなことが許されるのだろうか。

また、親子のコミュニケーションツールとしてゲームの有用性は認められるところであるが、それを香川県が条例で制限するということがあっていいのか。

 

実際の訴状は137ページにもなるとのことであり、提訴後にはネット上にアップすることも検討されているとのことでした。

 

続いて、コンテンツ文化研究会の杉野代表から、現地におけるゲーム規制条例を巡る動きについてご講演いただきました。

主なポイントは以下の通りです。

 

〇条例制定により約1200万円の予算がつけられ、香川県教育委員会によって啓蒙用の資料が作成されたり、相談支援の窓口に「ゲーム障害」が含まれるようになった。

一方、県主催によるデジタル系のイベントが行われたりしており、必ずしも規制一辺倒ではないが、引き続き注視していく。

 

〇制定過程の問題点

・県議会により素案が出されたが公表されなかったため、コンテンツ文化研究会が独自に取り上げた。

・パブコメの疑惑などについて、ネットメディアやKSB瀬戸内海放送などで特集されたりしていたが、県議会としては「調査をするつもりはない」という見解を出している。

・今後の対策についても「その時になってみないと分からない」という見解であるが、技術的には難しいものではないはずなので、改善点について今後も求めていく。

 

そして、私からは「表現の自由を守る藤末健三の国会活動」と題して、ゲーム規制条例をはじめ、コロナ禍の状況における同人誌即売会への支援策やアニメーターなどのフリーランスへの支援策などについて話させていただきました。

 

それぞれの講演後には、ふじすえフォーラムの特色であるたっぷりの質疑応答タイムです。

参加されたほとんどの方から多岐にわたるご質問をいただき、杉野代表や渉さん、作花弁護士からもさらに突っ込んだお話が出てくるなど、今回も大変盛り上がりました。

 

渉さん、作花先生、杉野代表、お忙しい中ありがとうございました。

また、ご参加いただきました皆さまにも、この場を借りて改めて御礼申し上げます。

 

次回のフォーラムは11月頃に札幌、仙台で開催予定です。

改めてTwitterにて告知いたしますので、お近くの方は是非お越しください。