文化庁の文化芸術活動継続支援に同人印刷会社が対象となるということをツィートしたことをきっかけに、同人誌印刷を専門に手掛けている神奈川県川崎市の有限会社ねこのしっぽの代表取締役である内田朋紀様と知り合うことができ、会社と工場を見学させていただきました。

 

内田社長と荒巻専務にお出迎えいただき、まずはコロナの状況下における会社と業界の現状を教えていただきました。

 

緊急事態宣言が出されていた今年4月から9月期では、前年、前前年比で売上が大幅に落ち込んでしまったとのこと。

特に、今年の5月と12月に予定されていたコミケの中止による影響が大きいということでした。

同人誌の業界全体的にも大きな影響が出ているそうです。

 

また、特に不安に思われていることとして、万が一、社員等の関係者に感染者が出た場合にどのように対処すればいいのか、流れなどが分からないということでした。

私も別の企業経営者などからも、もしも感染の疑いがあっても、それを理由に契約を打ち切られたりするかもしれないという不安があると、素直に病院や保健所に連絡できないという話を聴いておりましたので、感染拡大防止の意味からも適切な対応マニュアルを作成し、周知する必要があると感じており、中小企業庁やコロナ対策推進室などと対応を検討したいと思います。

 

また、内田社長は会社の経営だけでなく、同人イベントのイベンターとしても活動されておられます。

(ねこのしっぽ様が株式会社ポプルス様と合同で企画されている「TAMAコミ」のチラシ)

 

内田社長は、元々は同人サークルを主催され、同人誌を作成する際に小回りの利く印刷会社がなかったため、自分で印刷会社を起こされたという筋金入りの方です。

今年も川崎市においてイベントを主催されておられ、昨年は250名が参加されたそうなのですが、今年は会場側から即売会という枠がないため、セミナーの扱いとされてしまい、一度に着席形式で入ることができる人数として、最大75名に制限されてしまったということでした。

参加人数に制限が掛けられたとしても会場費などの減免はなく、負担のすべては主催者に帰すというのも、イベントを開催するハードルが高くなってしまうということも懸念されていました。

 

そしてやはりこれから第2波、第3波が来た際に、再び経済活動を抑制するような事態となってしまえば、何とか耐えてきていた人たちも心が折れてしまい、経営や運営の継続を諦めてしまう人がたくさん出てしまうのではないかと心配されていました。

そのためにも、感染予防策は講じつつ、コロナと付き合っていく社会とその空気を作らなければならないとして、現在の第二類相当の指定感染症からの除外かレベルの引き下げについても政府に対して働きかけを行っていきたいと思います。

 

意見交換の後、工場の見学をさせていただきました。

多摩川沿いにある工場では35名以上の方が働いておられ、それぞれの方が専用の機械を担当されているそうです。

 

(フルカラーオフセット印刷の機械)

 

(本の裁断をする機械。裁断機だけで5種類もありました!)

 

(専用のPCで実際に出力される色と合わせているところ)

 

(本文用の製版機で出力されたマスターを印刷機にセットして印刷しています)

 

(本文の背に糊をつけて表紙と合体させる機械(製本機))

 

(中綴じ製本機はソート時に風で紙を浮かせて1ページずつを送ります)

 

同人印刷は、個人の方の注文がほとんどで、それぞれに細かいこだわりがあり、それに対応するために様々な種類の機械や工程があるため、それを専属で担当できる人が必要になるので人数が多くなってしまうということでした。

 

緊急事態宣言期など自粛要請があった時期は、週休3日にするなどして対応されていたそうです。

現在はほぼフルに稼働されているとのことですが、仕事のペース自体は落ち着いているということで、もし今コミケが開かれていた時のような注文があったとしても、やはり人が扱い、魂を込めて作業されていますので、繁忙期のペースをすぐに取り戻せるかといえば難しいかもしれないと仰られていました。

 

工場見学の後には、受付窓口を見学させていただきました。

(Webラジオに出演された声優や歌手などのサイン色紙が壁一面に飾られていました)

 

(同人活動に必要な様々なグッズの販売もされていました)

 

コロナの状況下において、出版のための本だけでなく、自分史などいろいろなものを作りたいという声は増えているとのことでした。

 

内田社長は、「コロナ禍で印刷会社が苦しいから同人誌を作って欲しい」ということではなく「サークルさんが同人誌を作りたい意欲が出るようにポジティブな発信をしていきたい」という気持ちで仕事をされていると仰られていました。

 

また、コミケをはじめとする同人誌即売会についても、ただ本を販売する機会ということではなく、そこにいる「仲間」に会いに行く場であるということを強調されていました。

 

近日中にMANGA議連総会を開催し、皆さまからお寄せいただいた意見を政府への提言書として取りまとめる予定です。

 

今回、ねこのしっぽ様を見学させていただき、内田社長や荒巻専務からお話を聴かせていただき、より一層同人業界が好きになり、応援させていただきたいという思いを強くしました。

 

元々、経済産業省にいたこともあり、コンテンツ産業や中小企業政策は専門と自負しておりますので、引き続き現場の方の声をいただきながら、しっかりと取り組んでまいります。

内田社長、荒巻専務、従業員の皆さま、この度は本当にありがとうございました!