いよいよインターネット上の海賊版対策のための著作権法改正の方向が取りまとまりました。改正案については、別途とりまとめますが、ここで「インターネット上の海賊版対策の今までの経緯」について、参議院調査室の資料をベースに取りまとめたものを掲載させてもらいます。

 

今までの大まかな経緯

○ 近年、インターネット上の海賊版サイトによる著作権侵害が深刻になっている。

○ 政府は、第198回国会(常会)に、インターネット上の海賊版対策として、①リーチサイト等侵害コンテンツへの誘導行為を著作権法上みなし侵害行為と位置付けること、②現行制度では音楽・映像分野に限定されているダウンロード違法化の対象範囲を著作物全般に拡大すること等を内容とする著作権法改正案を提出することを検討していたが、国民の十分な理解を得られる見通しが立たなかったこと等を理由に、提出は見送られた。

○ その後、文化庁は「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」(以下「検討会」という。)を設置し、侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する適切な制度設計やリーチサイト対策の在り方等について、改めて検討を行い、令和2年1月16日、検討会における議論を取りまとめた「議論のまとめ」が公表された。

○ 政府は、検討会における議論を踏まえ、第201回国会(常会)に著作権法改正案を提出することを目指し、1月30日に自民党内で政府の改正案について合意に至り、2月4日には「改正の方針」を文部科学大臣に提出しする予定である。

 

経緯の詳細

1.第198回国会における法案提出見送りの経緯

(1)インターネット上の海賊版による被害

○ 近年、デジタル・ネットワークの進展に伴い、著作権者等に無断で複製された音楽・アニメ・映画・放送・マンガ・ゲームなどのコンテンツをインターネット上に掲載する海賊版サイトによる被害が深刻化している。とりわけ、運営管理者の特定が難しく、侵害コンテンツの削除要請も困難なマンガを中心とする巨大海賊版サイト(「漫画村」、「Anitube」、「Miomio」等のサイト)が出現し、多くのインターネットユーザーのアクセスが集中する中、電子コミック市場の売上げにも影響を与えるなど、著作権者等の権利が著しく損なわれる事態となっている。

 

○ こうした海賊版サイトは、仮に一つのサイトを閉鎖に追い込んでも、すぐ類似のサイトが出現するなどしており、海賊版サイト対策はいたちごっこの状況が続いている。また、海賊版サイトの運営は広告収入を資金源としていることが多く、海賊版サイトがアクセスを集めて利益をむさぼる一方で、本来利益を得るべきクリエーターには対価が還元されず、このことがコンテンツの創作・流通・利用のサイクルに悪影響を及ぼしている。

 

(2)第198回国会における著作権法改正案の提出見送り

○ 海賊版サイトによる被害が深刻である状況を受け、文化審議会著作権分科会の法制・基本問題小委員会(以下「小委員会」という。)は、インターネット上の海賊版対策に係る法整備(①リーチサイト対策、②ダウンロード違法化の対象範囲拡大)等について検討を行った。小委員会での議論を踏まえて、平成31年2月には「文化審議会著作権分科会報告書」(以下「分科会報告書」という。)が取りまとめられた。

 

○ 分科会報告書等を踏まえ、政府は、第198回国会に著作権法改正案を提出することを検討していたが、国民の十分な理解を得られる見通しが立たなかったこと等を理由に、改正案の提出は見送られた。本節では、提出見送りに至る経緯と政府が提出を検討していた著作権法改正案について概観する。

①リーチサイトに係る検討

【小委員会における検討】

○ 海賊版サイトによる被害が拡大した要因の一つに、リーチサイトの存在が指摘されている。リーチサイトとは、自身のウェブサイトには違法コンテンツを掲載せず、違法にアップロードされた著作物等へのリンク情報を掲載して、ユーザーをこれらの著作物等へ誘導する行為類型である。

○ 「知的財産推進計画2016」(平28.5.9)において、リーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応について検討を進める旨言及されたことを受け、小委員会は、平成28年度から約2年間にわたり、関係者の意見聴取等を行いつつ、対応方策について検討を行った。

○ 小委員会での議論を踏まえて作成された分科会報告書(平31.2)では、リーチサイト運営・リーチアプリ(調査室注)提供行為や、リーチサイト等を通じて行われる侵害コンテンツに係るリンク情報等を提供する行為について、一定の要件を充足する場合には、著作権等を侵害する行為とみなすこととし、差止請求及び刑事罰の対象とすることが適当であるとされた。

 

【文化庁当初案】

○ 第198回国会への提出が検討されていた著作権法改正案(文化庁当初案)では、①リーチサイト運営者・リーチアプリ提供者に対する刑事罰(5年以下の懲役・500万円以下の罰金、非親告罪)、②リーチサイト・リーチアプリにおける侵害コンテンツのリンク情報等の提供者に対する民事措置(差止請求・損害賠償請求)及び刑事罰(3年以下の懲役・300万円以下の罰金、親告罪)について、著作権法上規定することが想定されていた。

 

規制対象行為及び規制内容


 

(注)文化庁当初案では、規制対象となるリーチサイト・リーチアプリについて、以下のとおり定義している。

①公衆を侵害コンテンツに殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト・プログラム(サイト運営者が、侵害コンテンツへの誘導のために、デザインや表示内容等を作り込んでいるような場合を想定)

②主として公衆による侵害コンテンツの利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト・プログラム(掲示板などの投稿型サイトで、ユーザーが違法リンクを多数掲載し、結果として侵害コンテンツの利用を助長しているような場合を想定)

(出所)侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)(令元.11.27)配付資料

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/shingaikontentsu/01/pdf/r1422992_12.pdf

 

②侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る検討

【音楽・映像のダウンロード違法化・刑事罰化】

○ 著作権法第30条第1項は、著作物を個人的又は家庭内等の限られた範囲内で使用すること(私的使用)を目的とする場合は、権利者の許諾なく複製できる旨定めているが、その例外として、違法にアップロードされたデジタル方式の音楽・映像を違法と知りながらダウンロードする行為については、平成21年の著作権法改正により、私的使用目的であっても違法とされている。

○ その後、権利者団体を中心に刑事罰化を求める要望があったことを踏まえ、閣法に対する議員修正という形で、平成24年に違法ダウンロードの刑事罰化(2年以下の懲役・200万円以下の罰金)が行われた。

 

【対象範囲の見直しに係る検討に至る背景】

○ 平成30年4月、知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議は、海賊版サイトによる権利侵害が深刻化する状況を踏まえ、「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」(以下「緊急対策」という。)を発表し、法制度整備が行われるまでの臨時的かつ緊急的な措置として、特に悪質な海賊版サイトへのブロッキングを限定的に容認する(調査室注)とともに、海賊版サイトへのブロッキングの法制度整備に向けて検討を進めることとした。

○ 緊急対策を受け、知的財産戦略本部に設置された「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)」(以下「タスクフォース」という。)において、ブロッキングの法制度整備をはじめとする総合的な海賊版対策について検討が行われた。その中で、ブロッキングよりも先に、リーチサイト対策や静止画ダウンロードの違法化等、他の実効的な手段を尽くすべきとの意見が出された。

○ タスクフォースでは、ブロッキングは通信の秘密を侵害するおそれがある等の反対意見があったことから意見がまとまらず、成果文書を取りまとめるに至らなかったが、親会合である知的財産戦略本部「検証・評価・企画委員会コンテンツ分野会合」(平30.10.30)において、タスクフォースの座長によりタスクフォースにおける議論の報告が行われ、その中で、「著作権を侵害する静止画(書籍)ダウンロードの違法化の検討等、様々な側面から直ちに取り掛かることが必要な内容について、共通認識が得られた」との説明がなされている。

 

【小委員会における検討】

○ こうした背景を踏まえ、小委員会は、平成30年度第4回会合(平30.10.29)以降、関係団体から被害実態等の報告やダウンロード違法化に対する意見を聴取するとともに、委員間で議論を行った。

○ 第8回会合(平31.1.25)では、パブリックコメントを経て取りまとめられた小委員会報告書(案)が示された。これに対し、5名の委員の連名による「報告書(案)に対する意見書」が机上配布され、同日に報告書(案)を取りまとめることへの反対の意が表明されるとともに、同日の小委員会の中でも引き続きの検討を求める発言等がなされたが、主査より、海賊版対策は喫緊の課題であることに鑑み、報告書(案)の修正については主査預かりとしたい旨の発言があり、主査の責任において報告書を取りまとめることとされた。

○ その後、主査の責任において取りまとめられた小委員会報告書は、著作権分科会(第53回)(平31.2.13)の議題に上り、ダウンロード違法化の対象拡大について、複数の委員から否定的な見解を含む発言があったものの、原案どおり承認され、同日、分科会報告書として公表された。

 

【第198回国会への法案提出見送り】

(懸念の声)

○ ダウンロード違法化の対象範囲拡大の動きに対し、約100名の知的財産法・情報法研究者等による共同声明が公表され、国民の自由に対する過度の制約を避けるため、少なくとも民事措置及び刑事罰ともに、規制対象を海賊版対策に必要な範囲に客観的な要件(「原作のまま」及び「著作権者の利益が不当に害される場合に限る」との要件により限定すべき等の見解が示された。さらに、海賊版サイトの被害者の立場にある日本漫画家協会も声明を公表し、規制対象は限定的にすべきとの見解を示すなど、本件に関する意見書や声明の公表が相次いだ。

○ また、「複製」には、ウェブクリッピングやスクリーンショットなど広く一般に行われている行為も含まれるとされていたことから、違法にアップロードされた静止画を含む画面をスクリーンショットした場合も違法とされるのではないか等、国民生活への影響を懸念する声が上がっていた。

 

(政府・与党内の検討)

○ その一方で、第198回国会(平成31年常会)への著作権法改正案の提出を目指し、与党内では、分科会報告書を踏まえて文化庁より示された改正案(次頁参照)の審査が進められ、平成31年2月22日の自由民主党の文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議において同案は了承された(『朝日新聞』(平31.3.1))。

○ しかし、同党総務会では、関係者の理解が得られていないとの判断により、改正案の了承は先送りされ(『朝日新聞』(平31.3.2)等)、その後、文部科学部会・知的財産戦略調査会合同役員会において関係者への聞き取り等が行われたが、同役員会は「国民の懸念を払拭すべく丁寧な手続を進め、次期国会に向けて仕切り直しをすべき」と文化庁に求め(『読売新聞』夕刊(平31.3.13))、第198回国会への法案提出は見送られることとなった。

 

【文化庁当初案】

○ 第198回国会への提出が検討されていた著作権法改正案(文化庁当初案)の制度設計では、①対象著作物を著作物全般とする、②主観要件について、重過失により違法と知らなかった場合や適法・違法の評価を誤った場合は違法とならない旨を明確化する、③刑事罰については民事措置の要件に加え、二次創作された著作物を除外するとともに、常習性がある場合に限定することが想定されていた。

○ 具体的には、①著作権を侵害する自動公衆送信(インターネット送信)を受信して行うデジタル方式の複製(ダウンロード行為全般)を、その事実を知りながら行う場合(重過失がある場合や適法・違法の評価を誤った場合を除く)について民事措置の対象とすること、②民事措置の要件に加え、正規版が有償で提供されている著作物(二次創作物を除く)について、継続的に又は反復して侵害行為を行った場合は、刑事罰(2年以下の懲役・200万円以下の罰金、親告罪)を科すことについて、著作権法上規定することが想定されていた。

 

文化庁当初案のイメージ

(出所)侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)(令元.11.27)配付資料

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/shingaikontentsu/01/pdf/r1422992_12.pdf

 

2.第201回国会への法案提出に向けた再検討

(1)検討の経緯

○ 第198回国会において著作権法改正案が提出見送りとなった平成31年3月末以降、知的財産戦略本部において、海賊版対策全体のパッケージや各施策の進め方について議論が行われ、令和元年10月、「インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー」及び「インターネット上の海賊版対策に関する工程表」が策定された。その中で、侵害コンテンツのダウンロード違法化については「『深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること』と『国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと』」という2つの課題を両立すべく、国民の皆様の声をより丁寧に伺いながら引き続き法案提出に向けた準備を進める」、リーチサイト対策については「引き続き法案提出に向けた準備を進める」こととされた。

○ 文化庁は、これまでの経緯を踏まえ、特に侵害コンテンツのダウンロード違法化について、国民の懸念事項やそれを解消するために必要な要件設定の在り方等について幅広く意見を聴取するため、令和元年9月30日から10月30日までの間、侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントを実施した。また、同庁は、パブリックコメントと並行して、侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するアンケート調査も行った。

○ 文化庁は、令和元年11月、有識者や出版社・漫画家等から構成される「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」(以下「検討会」という。)を設置し、侵害コンテンツのダウンロード違法化の適切な制度設計やリーチサイト対策の在り方等に関する検討を開始した。

 

(2)検討会における検討結果

○ 令和2年1月16日、検討会における検討結果を取りまとめた「議論のまとめ」が公表された。「議論のまとめ」によると、①文化庁提案の3点の措置を追加的に講ずること、②民事についても、二次創作作品・パロディ等のダウンロードは違法化の対象から除外すること、③リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為に対する刑事罰を「非親告罪」から「親告罪」に変更すること等について、検討会で了承された。

○ 一方、侵害コンテンツのダウンロード違法化の対象を「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定する」旨の要件を追加することについては、検討会の構成員間で賛否が大きく分かれ、意見を一つに集約するに至らなかったことから、両論を併記した形となっている。

①文化庁提案

○ 文化庁から、パブリックコメントの結果等を踏まえ、文化庁当初案に、少なくとも以下の3点の措置を追加的に講ずることが提案され、検討会において了承された。

 

☆文化庁提案の3点の措置

追加的措置

詳 細

(1)改正案の附則に、普及啓発・教育等や刑事罰に関する運用上の配慮、施行状況のフォローアップについての規定を追加すること

【附則に規定を追加する事項の概要】

①国民に対する普及啓発、学校等における教育の充実

②関係事業者による措置(適法サイトへのマークの付与など)

③インターネットによる情報収集等が不当に制限されないような運用上の配慮(刑事罰の運用の不当な拡大防止など)

④施行後1年を目途とした施行状況のフォローアップ

(2)写り込みに関する権利制限規定(第30条の2)を拡充することで、スクリーンショットを行う際に違法画像等が入り込むことを違法化しないこと

【小委員会で検討されている著作権法第30条の2の見直しの方向性】

・生放送・生配信、スクリーンショット・模写等についても本規定の対象とする

・現行規定にある著作物創作要件・分離困難性要件を削除、代わりに「正当な範囲内において」という要件を設定

・軽微性の考慮要素を複数明記

(3)数十ページで構成される漫画の1~数コマなど、「軽微なもの」のダウンロードを違法化しないこと

【「軽微なもの」の基準・具体例】(抜粋)

①「分量」による基準・典型例(全般)

<「軽微なもの」の典型例>

・数十ページで構成される漫画の1コマ~数コマのダウンロード

<「軽微なもの」とは言えない例>

・漫画の1話の半分程度のダウンロード

・4コマ漫画や1コマ漫画の1コマのダウンロード

②「画質」による基準・典型例(絵画・イラスト・写真など)

<「軽微なもの」の典型例>

・サムネイル画像のダウンロード

<「軽微なもの」とは言えない例>

・絵画・イラストなどの鮮明な画像のダウンロード

(出所)「議論のまとめ」等より作成

②その他の要件追加等の検討(二次創作作品・パロディ等)

○ パブリックコメントにおいて追加的に講ずべきものとして提案のあった措置等について、導入の可否等について検討が行われた(検討結果は下表のとおり)。

 

☆侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する検討結果

討結果

パブリックコメントで

提案された追加要件

留意点等

(ア)採用する方針が了承されたもの

二次創作作品・パロディなどのダウンロードを対象から除外すること(民事)

翻訳物が除外されないように措置した上で採用する。

(イ)採用しない方針が了承されたもの

著作物の全部又は相当部分を(丸ごと)ダウンロードする場合に限定すること(民事・刑事)

ただし、(ウ)に記載の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること(民事・刑事)」が採用されることを条件として、この方針を了承した構成員も複数いたことには、十分留意する必要がある。

「海賊版サイト」などからのダウンロードに限定すること(民事・刑事)

不当に利益を上げている場合に限定すること(民事・刑事)

有償で提供・提示される著作物に限定すること(民事)

反復・継続してダウンロードを行う場合に限定すること(民事)

「当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる」場合に限定すること(刑事)

警察等が違反者に対して事前に警告を行うことを要件化すること(刑事)

刑事罰自体を科さないこと(まずは、民事措置のみを行うこと)

(ウ)採用の可否について意見が一つに集約されなかったもの

著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること(民事・刑事)

(ⅰ)国民から示された様々な懸念・不安を払拭する等の観点から採用すべきであるという肯定的な意見と、(ⅱ)ユーザーの居直り侵害を招くなど海賊版対策の実効性低下を回避する等の観点から採用すべきでないという否定的な意見の双方がほぼ拮抗し、本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識を共有。

折衷的な意見として、権利者側の立証負担の軽減及びユーザーの居直り防止等の観点から、「著作権者の利益を不当に害しない場合を除く」や「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別の事情がある場合を除く」と規定してはどうかという提案もあった。

(出所)「議論のまとめ」より作成

 

○ その他、パブリックコメントにおいて、(ア)対象著作物をマンガ・アニメなどに限定すべき、(イ)主観要件を見直すべきとの意見もあったが、いずれも適切ではない(著作物全般を対象とし、主観要件は維持すべき)との認識  が共有された。なお、刑事罰に係る主観要件については、文化庁当初案の規定ぶりでは未必的故意が含まれるとの解釈を完全には排除できないという意見もあったところ、「法整備に当たっては適切な整理がなされる必要がある」とされている。

 

③リーチサイト対策(親告罪への変更等)

○ リーチサイト対策に関し、パブリックコメントにおいて指摘のあった課題について検討が行われ、下表の検討結果のとおり、認識が共有された。なお、リーチサイト対策について「前倒しで施行すべき」という意見があったことを受け、法案の施行期日についても留意すべきとされている。

 

☆リーチサイト対策に関する検討結果

検討ポイント

検討結果

リーチサイトの定義及び対象範囲

・剽窃論文のリンク集など懸念が示された類型のサイトの多くは「リーチサイト」の定義に該当せず、規制対象とはならない

・規制対象となるリーチサイトの範囲について既に十分絞り込みが行われており、その他の要件付加は不要

刑事罰

リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為に対する刑事罰を「非親告罪」から「親告罪」に変更

・事前の警告等を要件とすべきでない

プラットフォーム・サービス

提供者の取扱い

・自ら直接的にリーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為を行っていない「プラットフォーム・サービス提供者」には基本的に今回の規制が及ばない

その旨を条文上明記することについては、それによって、脱法行為を招いたり、間接侵害(行為主体論)一般の議論に影響を与えたりしないということを前提に、賛成する意見が大勢を占めた(附則に配慮規定を置くという提案もあった)

投稿型サイトの取扱い

投稿型サイトについては、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するもの」と同様の法益侵害を生じさせる悪質なものを想定しており、一般的な投稿型サイトのようなものに規制が及ぶものではない、侵害とみなす際の要件も既に十分な絞り込みがされており、これ以上の要件付加は不要

リンク提供者等に係る主観要件の取扱い

民事措置の要件として、リンク先が侵害コンテンツであることについて過失がある場合を含めることに問題はない

(注)下線部は、文化庁当初案からの変更が見込まれる点

(出所)「議論のまとめ」より作成