『犬を飼う』

著者:谷口ジロー

出版社:小学館

私の大好きな谷口ジロー先生の不朽の名作です。

おそらく谷口ジロー先生の経験から書かれたもののようです。経験に基づく小さな出来事にこそ心が打たれます。

子犬を育て、老いていく、そして最期を見送る。

谷口ジロー先生は、その様子をきめ細かく、繊細に描かれています。

ここでストーリーには触れません。

ただ本作品を読むと、自分が昔飼っていたワンちゃんと、今一緒に暮らしているワンちゃんのことを思ってしまいます。

 

私は、今まで二匹のワンちゃんと出会っています。

最初が「元帥(げんすい)」と名付けた野良犬です。私が小学校5年生の時に拾ってきた子犬で、母親に許してもらい飼い始めました。

はじめは人を恐れて(きっとひどい目にあったのでしょう)私たちに吠えていましたが、すぐになついてくれました。

当時は散歩時に綱でつながなくても良かった時代で、私が自転車に乗り、元帥が横について遠くまで散歩に行っていました。

 私が給食の残りものの牛乳を持って帰ると、大喜びで牛乳をぺちゃぺちゃと飲んでくれたことを今でも明確に覚えています。

元帥は外見からすると日本犬とシェパードの雑種だったのではないかと思いますが、とても賢い犬でした。私の父親の足音を覚えていて、家の前をトラックが爆音を立てて通っていても、父が帰宅すると寝ていても突然耳を立て、門まで走って行くのです。父が門を開けると元帥が尻尾を振って迎えてくれるので、父はとても喜んでいました。

今思い出してもワンちゃんの聴力はどこまでもすごいと思います。

ある日、いつも縁側で寝ていた元帥のために兄と一緒に犬小屋を作ってあげました。でも元帥は犬小屋には入らず縁側で寝ていました。ある寒い朝、窓を開けると元帥の上に雪が積もっていました。

当時の九州では犬を屋内で飼うという人は少なかったと思いますが、今思えば、少なくとも玄関には入れてあげればよかったと思います。

大好きな元帥との悲しい別れは突然でした。引っ越しの時、乗っていたトラックの荷台から元帥は飛び降りて、事故に遭って亡くなったのです。悲しくて悲しくて、兄と一緒に一晩中泣き続けました。

 

心から愛したワンちゃんでした。 

このような経験があったので、それからはワンちゃんを飼おうとは思いませんでした。

 

ところが今から16年前の2004年。

選挙活動を始めた頃でした。選挙まで半年もない中で、私はほとんど家に帰らず全国を飛び回っていました。

数週間ぶりに自宅に帰ると、なんと、小さくてかわいいミニチュアダックスフンドの子犬がちょこんと座っているではないですか。それが今も我が家で一緒に暮らしている「チョビ」との出会いでした。妻は、「電話で飼うって言ったでしょ」と言っていましたが、私は少々戸惑いました。というのも一瞬元帥を思い出したからです。

しかし、一緒に暮らしていくうちにだんだんとチョビは我が家にとってなくてはならない存在となっていきました。

 

そのチョビも2020年1月12日に16歳になりました。

小型犬の16歳を人間で換算すると80歳ぐらいだと言われてるみたいです。

谷口ジロー先生の漫画と同じようにチョビも老犬になり、少し介護も必要になってきました。(時々奇行があったので脳腫瘍でないかとの疑いからMRIも取りましたが、何もなく、加齢によるものと診断されました)。

チョビを見ていると自分の将来を考えてしまいます。

間違いなく年を取り、視力も落ち、走るなどの今できることができなくなり、頭も回らなくなっていくのでしょう。

 

生き物は必ず老化する。

そのことをチョビは教えてくれます。

元帥からは「死」について教えられました。

仏教の四つの苦しみ「生老病死」。

老いることや死ぬことを元帥やチョビから教えてもらったと感じています。

 

 ところで、ミニチュアダックスフンドのギネス最高齢は21歳114日だそうです。

チョビにはまだまだ頑張ってもらってギネス最高齢を更新してもらいたいと願っています。