報道の自由・メディアの信頼性関連で#ettminuttキャンペーンを主導するTinius Trustを訪問しました。国境なき記者団が発表する世界各国の報道自由度ランキングにおいて,ノルウェーは,3年連続1位になっています。

#ettminuttキャンペーンのページ(ノルウェー語のみ)https://www.ettminutt.no/
#ettminuttを日本語で紹介したページhttps://frihet.exblog.jp/26643989/

 

そこで,CEOのMs. Kjersti Løken StavruとHead of Communications のMs. Hansine Korslien らと意見交換をしました。

 

論点は二つです。一つは「日本のマンガ・アニメ・ゲームといった表現に規制をかけること」をどう考えるか。二つ目には「市民・政治・資本・報道の関係」です。

 

①「日本のマンガ・アニメ・ゲームといった表現に規制をかけることについては、近年、国連など、海外から日本への働きかけが活発です。しかし、日本独自の文化に対して、欧米などから価値観の違いを押し付けられるべきではないと考えています。現に、浮世絵などは海外で高い評価を受けています。人権はグローバルであったとしても、文化はローカルであるべきだと考えます。Tinius Trustとしてどう考えるか。」と私から問いましたところ。

 

Stavru女史からは「やはり文化的な違いは大きい。こちらはキリスト教文化であり、なかなか暴力シーンやポルノに近いシーンは規制が市民から望まれる傾向にある。しかしながら、一方で表現の自由も市民の大事な権利であり、そのバランスを取ることになる。色々な意見が出される中で議論が深まる。日本からも引き続き声を出していくべきではないか。」との回答でした。

 

「声を出していく」。大事なことです。山田太郎さんと一緒に海外にも声を出していきます。

 

②市民と政治と資本家と報道の関係については、私から「資本主義世界のメディアは広告などを出してくれる企業など資本にますます順う傾向が出ていると見ています。アメリカのトランプ大統領たたきも、収入面で資本家をたたけないメディアが仕返しできない政治家をたたいているように見えます。日本でも政治家のスキャンダル追及が多く、本来なすべき政策的な議論がメディアであまり流れない。」と発言しましたところ。

 

Stavru女史からは「政治をけん制するのはメディアの大事な役割である。本協会は戦前にナチスの支配においてメディアが充分に抵抗できなかった反省からも立ち上げられている。ただ、ノルウェーでは政治スキャンダルの報道は数日で収束する。ノルウェーでは記事には「記者名と連絡先」が明示される。記者が責任をもって報道するようになっている。

ノルウェーには、国民の誰もが公的機関の情報にアクセスできる自由な情報法(Freedom of Information Actに加え、先週金曜に発効したメディア責任法(Media responsibility Actが存在。前者は、公的機関のモニタリングが可能となり、透明性確保の点において極めて重要な役割を果たし、後者は、情報源に対する保護を与えるとともに報道機関の責任を明確にするもので、各報道機関の編集長が報道内容に責任を有することを規定し、編集長は連絡先を開示し、常に外部からのアクセスを可能とするもの。新聞のみならずインターネット上のニュースサイトなどのデジタルメディアも対象。」

 

以下に二つの法律の資料をリンクします。日本にも必要な法律です

 

(Media Responsibility Law) 

Medieansvarsloven https://www.regjeringen.no/no/dokumenter/prop.-31-l-20192020/id2681168/sec22?q=

 

(Freedom of Information Act) *英語

Offentlighetsloven 

https://lovdata.no/dokument/NLE/lov/2006-05-19-16

資本主義とメディアの関係について聞いたところ、大変重要な論点である。

Korslien女史からは「ノルウェーには,報道機関の所有を規定する法律が存在し、各報道機関は株主(及び出資者)を開示する義務がある。当財団は、当地最大のメディアグループであるSchibsted社(主要紙アフテンポステン紙やVG紙等を保有)の最大株主であるが、傘下の各報道機関が、健全な財政環境の下で、報道の自由、質、信頼性を確保できるよう役割を担っている。私企業ではなく、財団が報道機関の株主である意味は大きい。」との回答でした。これから紙メディアだけでなく、ネットメディアが報道の主流になる中で、メディアの株主構成などがどうなっているか、透明性を確保することが日本においても求められます。

 

また、Korslien女史(広報課長)からは、「ノルウェーの教育施設ではメディアリタラシーに関する教育を実施。情報が溢れる現下の状況では,各個人がニュースの信頼性を判断する能力を身につけることが最も重要。」と教えてもらいました。ノルウェーにおいては、学校の事業で先生がいくつかの記事やニュースを見せて、どの記事が正しい情報を発信しているかを議論する事業があるそうです。やはり進んでいます。

ちなみに、国境なき記者団Reporters Without Bordersが発表した報道の自由度ランキング2017年によると、1位はノルウェー。日本は72位でした。