黄泉の国に縁が深い神社として有名なのが『揖夜神社』です。
揖屋町(いやまち)地内にある揖夜神社(いやじんじゃ)は、
旧国道沿い市ノ原川右岸に鬱蒼とした松林の間に鎮座する神社で
『出雲国風土記』や『日本書記』にも登場します。
御祭神は伊弉冉命(イザナミ)になります。
日本神話で伊弉諾命(イザナギ)が伊弉冉命(イザナミ)を迎いに行ったとされる
黄泉の国の黄泉比良坂(よもつひらさか)の近くにあることから
〝黄泉がえり神話の聖地〟とされる古社です。
『揖夜神社』は、出雲国造と関係が深い意宇六社(おうろくしゃ)の1社で、
出雲国意宇郡(現在の島根県松江市)にある6つの神社の総称になります。
他に「熊野大社」「六所神社」「眞名井神社」「八重垣神社」「神魂神社」があります。
◆鳥居
◆揖夜神社(いやじんじゃ)
島根県松江市東出雲町揖屋2229
【社格等】
式内社、郷社後に県社、意宇六社
【ご祭神】
‐主祭神‐
●伊弉冉命(いざなみのみこと)・・・イザナギの妻(妹)神、イザナギと共に国産み・神産み
したことか万物を産み出す女神、神代七代
‐配祭神‐
●大巳貴命(おおなむちのみこと)・・・大国主神の別名、国津神の主宰神、出雲大社の御祭神
●少彦名命(すくなひこのみこと)・・・大国主神の国造りに協力、国造りの神、医薬の神
●事代主命(ことしろぬしのみこと)・・・大国主神の御子神、恵比須様、美保神社の御祭神
【揖夜神社の由緒】
御鎮座についての詳細は不明ですが、『古事記』神代巻には「伊賊夜坂(いふやさか)」に
ついての記述があり、『日本書記』斉明天皇5年(659年)の条に「言屋社(いふやのやしろ)」、『出雲国風土記』に「伊布夜社(いふやのやしろ)」、『延喜式』神名帳に「揖夜神社(いふや
じんじゃ)」の記述があり、少なくとも平安朝以前には広く知られた古社です。
古より朝廷の崇敬が篤く、「三代実録」には、清和天皇の貞観13年に「正五位下」の御神階が
授けられた記録があります。
武将の崇敬も篤く、大内氏・尼子氏・毛利氏・堀尾氏・京極氏・松平氏がそれぞれ寄進や社殿の
修造を行っています。
また、社殿の営繕は松江藩作事方で行われ、遷宮には藩主の代参がありました。
当社は出雲国造との関係が深い「意宇六社」の1社であり、遷宮には今でも出雲国造の奉仕が
あります。
◆境内案内図
※上記画像は縁結びパワースポットと出雲神話のHPからお借りしました
神社に所蔵している棟札、古文書によれば、
戦国時代頃から「揖屋大明神」「揖夜大社」「揖屋大社」と称されていた様です。
◆石灯籠
◆手水舎
◆狛江
阿遅志貴高日子根神が」天若日子の喪屋を切り倒し、蹴り飛ばしてしまったとされる場所が、
この神社の場所であったとされています。
◆狛犬
神社正面の石の鳥居をくぐると大きな注連縄のある随神門があります。
◆随神門
毎年8月28日に豊作豊漁を祈願する穂掛け祭があります。
前日の27日に神職たちは中海の袖師ヶ浦で禊をしたあと、社務所で甘酒や焼米などの神饌を作り、
28日の午前中に境内の75箇所に奉り、午後からは袖師ヶ浦の500m沖にある一ツ石まで神輿を
船に乗せて運び神饌を捧げる「一ツ石神幸祭」が行われます。
◆社務所
こちらで御朱印をいただきました。
◆授与所
鎮守の杜には推定樹齢が約600年の御神木(椎の木)があります。
◆御神木と鎮守の杜
随神門を抜けるとその先に広い境内があり、参道を進むと左手に拝殿、高台に本殿が見えます。
◆社殿
境内の北側にある恵比須神社は事代主命をお祀りし、揖屋村字五反田地区にあったものを
明治43年8月に境内へ遷座されました。
◆恵比須神社(北側)
左側の祠には経津主命(フツヌシ)、右側の祠には建御名方命(タテミナカタ)が
祀られています。
フツヌシ(香取神宮の御祭神)とは国譲り神話において、大国主神(オオクニヌシ)に
国を譲れと迫った神様です。一方のタケミナカタ(諏訪大社の御祭神)は
オオクニヌシの息子で、国譲りに反対した神様です。
◆荒神さま
鎮守の杜の中に藁蛇を巻きつけ、御幣などが立ててあるのが「荒神さん」です。
御祭神は素戔嗚尊で「荒神さん」と言われ、藁蛇を地元では「チーナマイト」と呼んでいます。
この社は菅原天満宮より勧請された小学校に建立されたものを、
戦後に揖夜神社の境内に遷座されたものです。
◆天満宮
藁蛇(チーナマイト)は、出雲東部から西伯郡にかけての地域では藁蛇が家や田畑の
守護神として信じられ、その年の豊作や家族の健康を願う意味が込められているそうです。
毎年10月28日にお祭りを行い新しい藁蛇に交換します。
◆荒神社と藁蛇(チーナマイト)
事代主命をお祀りし、揖屋村字町並みにあったものを明治42年8月に境内に移転された神社です。
◆恵比須神社(南側)
現在の拝殿は昭和9年の遷宮の時に建立されたもので、本殿と離れているのが特徴です。
◆御仮殿(神楽殿)
仮殿(神楽殿)の右側に朱塗りの鳥居を登って行くと稲荷神社があります。
◆稲荷神社
◆境内社
戦国時代には、尼子氏・大内氏・毛利氏などが崇敬して、
それぞれ戦勝を祈願した記録が残っています。
◆石碑