今年も既に霜月となりましたが、

9月に行った安曇野の社寺巡りの続きになり『穂高神社』のブログになります。

 

『穂高神社』は、信州の中心ともいうべき安曇野市穂高に鎮座しています。

そして奥宮は穂高連峰の麓の上高地に祀られており、

嶺宮は北アルプスの主峰奥穂高岳の山頂に祀られています。

古くから〝日本アルプスの総鎮守〟として広く信仰されてきました。

来年は奥穂高岳に登ろうと思っている私にとって

どうしてもご参拝(ご挨拶)をしておきたい神社です。

 

◆社号標と正参道

◆穂高神社

長野県安曇野市穂高6079

【社格等】

式内社(名神大社)、信濃国三宮。旧社格は国幣小社、現在は神社本庁の別表神社。

【ご祭神】

●中殿 穂高見命(ほたかみのみこと)・・・別名を宇都志日金拆命、綿津見命の御子神

●左殿 綿津見命(わたつみのみこと)・・・海神、安曇氏の祖神

●右殿 瓊瓊杵命(ににぎのみこと)・・・天孫(天照大神の御孫神)、神武天皇の曾祖父

●別宮 天照大御神(あまてらすおおみかみ)・・・高天原を統べる主宰神、皇祖神、太陽神

●若宮 安曇連比羅夫命(あづみのむらじひらふのみこと)・・・安曇比羅夫、飛鳥時代の人物

【穂高神社の由緒】

当神社がいつ創建されたか記録はありませんが、醍醐天皇の延長5年(927年)に

選定された延喜式の神名帳には、名神大社に列せられて古くから信濃における大社として、

朝廷の尊崇篤く殖産興業の神と崇められ、信濃の国の開発に大功を樹てたと伝えられています。

安曇族は海神系の宗族として北九州に栄え、大陸とも交渉をもち高い文化を持つ

氏族であったようで、次第に活躍範囲を四国、中国、近畿、中部へと広げ、その一部は

信濃国安曇野を安住の地と定め、稲作、農牧文化を普及し、大きな力を持ち「和名類聚鈔」に

ある高家郷・八原郷・前科郷・村上郷の四郷からなる安曇郡を成立させています。

降って武将仁科氏、松本藩主累代は社領を寄進し、式年の造営、祭祀の厳修につとめられ、

明治の御代となり、明治5年郷社、同15年県社、昭和15年国幣小社に昇格し、

同20年12月15日神道指令により、官国幣社の制度は廃止されて、

現在は神社本庁の別表神社として崇敬されています。

 

◆境内案内図

社号標、正参道、鳥居、神楽殿、拝殿、本殿と東を向いて一直線に配列されています。

◆鳥居

歴史のある神社らしく境内には巨木が立ち並び、樹齢500年を超える御神木が幾本もあります。

◆境内

◆手水舎

手洗石には享保14年(1729年)の銘文が刻まれています。

◆手洗石

平安時代風木造屋形船の神船「穂高丸」は、東京多摩川の最後の船大工といわれる

久保井富蔵氏が平安時代の資料を元に魂を打つこみ、長い年月をかけて完成させたものです。

◆神船

◆狛犬

 

◆鳥居

◆神馬舎

唐鞍(奈良時代の馬の飾り)をつけた馬としては全国でも稀に見るもので

馬は純粋の木曽馬をモデルにしています。

◆神馬

安曇野に伝わる民話「泉小太郎」は、

景行天皇12年まで、(安曇野の対岸にある)松本のあたりは山々から流れてくる水を

湛える湖でありました。その湖には犀龍が住んでおり、東の高梨の池に住む白龍王との

間に1人の子供をもうけました。名前を日光泉小太郎といいます。

しかし小太郎の母である犀龍は、自身の姿を恥じて湖の中に隠れてしまいました。

筑摩郡中山の産ヶ坂で生まれ、放光寺で成人した小太郎は母の行方を捜し、尾入沢で

再会を果たしました。そこで犀龍は自身が建御名方神の化身であり、子孫の繁栄を願って

顕現したことを明かしました。

そして、湖の水を流して平地とし、人が住める里にしようと告げました。

小太郎は犀龍に乗って山清路の巨岩や久米路橋の岩山を突き破り、日本海へ至る川筋を

作りました。

◆日光泉小太郎

信濃国に寝てばかりの男がいました。あまりにも怠けぶりに、人々はこの男を

「ものぐさ太郎」と呼ぶようになります。

ある日、太郎は道に餅を転がしてしまいます。自分で拾うのも面倒くさいため、

なんと通りかかった地頭に拾ってくれと頼みます。地頭はこれを怒るどころか

逆に感心してしまい、里の人々にこの男を養うようにと命じます。

時は流れ、この村にも朝廷から夫役が割り当てられます(夫役=労働力の提供)。

人々は皆嫌がり、太郎をおだて上げてこの役を押しつけてしまいます。

引き受けた太郎は都へ。すると、人が変わったかのように優れた才能が開花しました。
さらに仁明天皇の子孫であることも発覚し、出世を果たして帝に仕えることになります。

やがて、信濃中将となって帰郷。その後は120歳まで生きていたそうです。

◆ものぐさ太郎の碑

碑文には「もの具さ太郎このよ悲はや久ね布る良志 あづみの大野こほ里そめつゝ

      釈迦空(折口信夫)」と刻まれています。

◆折口信夫歌碑

◆穂高霊社

穂高霊社の境内に明治37年(1904年)の明治天皇御製歌碑が建っています。

「世と共にかたりつたへよ国のため いのちをすてし人のいさをは」

◆穂高霊社と明治天皇御製歌碑

かつて安曇野を南北に結んだ千石街道が境内の北参道となっています。

北は日本海に通じ、上杉謙信が塩を運んだ塩の道と呼ばれています。

◆塩の道道祖神

道祖神は古くから村人の守り神、結びの神として願いを込めて祀られてきました。

◆道祖神

 

過疎の村里に取り残された道祖神と二十三夜塔を当神社の境内にお祀りしています。

◆旧千石街道

◆北参道 鳥居

◆御船会館

◆北参道  手水舎

享保7年(1722年)壬寅秋に天神様を勧請したものです。

学問の神様と言われる菅原道真を祀っているので入試合格祈願のノボリが立っています。

◆菅原社

こちらの祠のご祭神は不明です。

大将軍大錦中阿曇連比羅夫は、天智元年(662年)、天智天皇の命を受け、

百済の王子・豊璋に王位を継がせようと水軍170艘を率いて王子と共に百済に渡りました。

天智2年(663年)、新羅・唐の連合軍と戦うも白村江の戦いで敗れ、8月27日戦死。

◆阿曇比羅夫之像

平成25年に長野県が「長寿日本一」として認められたことを記念して、

ステンレス彫刻家の中嶋大道氏により制作されたステンレス製の道祖神です。

◆健康長寿道祖神

明治16年(1883年)に建てられたもので、年銘のある石橋としては

安曇野市内で最古の1つです。

◆神橋

二の鳥居は両部鳥居になり、前後の側柱は四角ではなく八角柱になっています。

◆二の鳥居

◆二の鳥居 扁額

◆神楽殿

「孝養杉」と呼ばれる御神木は樹齢500年以上と言われる杉の大木で、

地元では親孝行の想いが込められた木と皆から大切にされています。

◆御神木(孝養杉)

拝殿前には境内社が並んで鎮座しています。

左から疫神社、秋葉社、八幡社、鹿島社です。

若宮社のご祭神は、安曇氏の英雄・安曇連比羅夫命で、相殿には信濃中将を祀っています。

信濃中将は御伽草子のものぐさ太郎のモデルとされる武将です。

◆若宮社

この狛犬は明和6年(1769年)4月14日に奉納されたもので、

安曇野市で年代の刻まれている参道の狛犬としては最古のものです。

◆若宮社 狛犬

 

若宮社の左手には、左から八坂社、事比羅社、子安社、保食社、四神社。

樹齢500年以上と言われる御神木の欅の木は、昭和45年5月、

川端康成、東山魁夷、井上靖の三巨匠がご夫婦共々で参拝した折、絶賛されたこの欅は

井上靖の小説「欅の木」の中で、穂高神社の欅の木として登場します。

◆御神木(欅の木)

御神木の「欅の木」の横にも神馬が祀られています。

◆神馬舎

明治18年(1885年)に奉納されたものです。

◆神馬

式年祭として、20年に1度本殿一棟を造り替える大遷宮祭と、

その7年後と13年後に2回の修理を行う小遷宮祭が行われます。

◆拝殿

本殿は中殿・左殿・右殿が並び建つ三殿方式です。

◆拝殿

中殿には当神社だけに伝わる千木・勝男木が乗せられており「穂高づくり」と呼ばれています。

◆拝殿

神楽殿は全面ガラス張りとなっており、少しモダンな印象の建築です。

◆神楽殿

「黒部」「大雪渓」「白馬錦」「北アルプス」「大國」「酔園」など

安曇野の銘酒が奉納されていました。

◆樽銘酒

◆遭難者慰霊歌碑

北アルプス最高峰の奥穂高岳山頂(標高3,190m)に祀られている嶺宮は

ここから遙拝することができます。平成28年の穂高神社式年遷宮を記念して

嶺宮のお社を改築し以前のお社をここに遷されました。

◆嶺宮遙拝社

奥穂高岳山頂に向けて嶺宮遙拝社が祀られているので

嶺宮遙拝社を拝むことで嶺宮を参拝したことになります。

嶺宮遙拝社の背後には神池が広がっています。

◆神池

御船祭は毎年9月26日・27日に行われます。

大きな船形の山車「御船」をぶつけ合う勇壮な祭です。本祭りの27日は

天智天皇2年(663年)の白村江の戦いで戦死した安曇比羅夫の命日と伝えられています。

◆御船

注連縄のついた2つの石が仁王石と呼ばれ祀られていました。

◆仁王石

◆仁王石の由来

昔から神社境内に祀られ、願いが叶うまで数知れず熱心にお祈りしたことから、

お百度詣り、お千度祀りなどと信仰されてきた千度石、三石に祈りを込めて

過去から未来へ、子々孫々へ祈りの和の心が継承されることを願い、

御影石の上に石神三石が祀られています。時空を超えて幸せへと導く「結びの石神」です。

◆結びの石神

◆南参道

◆参集殿

御朱印はこちらの社務所でいただきました。

◆社務所

御朱印は通常のものの他、御船祭の切り絵、月詣、道祖神などと

奥穂高岳山頂に鎮座する嶺宮の御朱印もいただけます。

色々な種類が

◆御朱印

◆穂高神社周辺マップ

<参考文献>

・穂高神社公式ホームページ

・現地案内看板

・ウィキペディア