今日のアラビア語。◇文法編◇#19【所有格②形容詞が混ざると……】 | 藤坂託実の語学散策 ~アラビア語とその他諸々~

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これまで趣味程度に10以上の外国語を学んできたわたくし藤坂託実が、語学に関することを多角的に自分勝手に、独り言として吐いていくブログです。

アラビア語に関する記事が、おそらく最も多くなるでしょう。なのでこのサブタイトルです。

(旧ブログからの転載。新記事投稿またはリニューアルの後消去します)


前回は所有格の基本的な作り方を書きました。単純に「〇〇(名詞)の××(名詞)」という構造だったので理解しやすかったと思います。

ただし、ここに形容詞が入ってくると、とたんにめんどくさくなってしまうんです(*_*)

كِتَابُ الطَّالِبَةِ الْكَثِيفُ

(読み)キターブッターリバティルカスィーフ
(ラテン字表記)kitâbu-TTâlibati-lkathîfu
(意味)その女子学生の厚い(重い)本


さてここで問題となるのが、
{所有格+名詞}の中に形容詞が入ってくると、
形容詞はどっちを修飾するのか?という点です。
「どっち」というのは、所有者か所有される方か、という選択です。


まず大前提として、2つの名詞が所有格で結合されると(文法的には「複合名詞」と言われますが)、
その結合力は非常に強く、2つの名詞の間に他の語を入れさせません。つまり、

『A(名詞・所有格) B(名詞)』という並びの間に、

『A {形容詞} B』
のように単語を入れる事はできません。

例えBにかかる形容詞であってもです。
したがって、形容詞はどの語にかかるとか関係なく、無条件で所有格(A)の後ろに置きます。



ここで、[形容詞+名詞]の組み合わせにおいて重要なポイントがあります。それは、


『形容詞と名詞の4点セット
【限定/非限定、性、格、数】をそろえる!』
ということです。

上記の例でいくと、形容詞kathîfun(厚い、重い)が「本」を修飾していますが…
ここでの「本」は、「その女子学生」という限定名詞の所有を受けているので、「本」も自動的に『限定』される扱いになります(定冠詞は付きませんけど)。また、語尾がuなので主格です。

したがって、この例では「kitâbu(本)」は【限定、男性名詞、主格、単数】という4つの文法上の「しばり」を受けているので、それを修飾するkathîfunも【限定、男性形、主格、単数形】という同じ4つの「しばり」を加えてalkathîfuとし、所有格名詞の後ろに置きます。これで完成!




………どうです?面倒くさいでしょう?(笑)ネイティブなら脳内で無意識に出来る判断でしょうが、私たちガイジンが理論で解析するとまあタイヘンです。でも、まだ終わってませんよ(笑)

今度は、所有者を修飾する場合です。

كِتَابُ الطَّالِبَةِ الْجَمِيلَةِ

(読み)キターブッターリバティルジャミーラティ
(ラテン字表記)kitâbu-TTâlibati-ljamîlati
(意味)その美しい女子学生の本

この場合、先ほどの4点セットを考えると「その女子学生」が【限定、女性名詞、所有格、単数】です。
なので、それを修飾する形容詞「jamîlun(美しい)」も
同じように【限定、女性形、所有格、単数形】になるよう、
aljamîlatiと変化させて後ろに置きます。


ただ、今までは「女子学生」「本(男性名詞)」のように性が違い、形容詞もどちらを修飾するか分かりやすいケースでした。
では、こんな場合は……?



كِتَابُ الطَّالِبِ الْجَدِيد

(読み)キターブッターリビルジャディー(ディ/ドゥ)
(ラテン字表記)kitâbu-TTâlibi-ljadîd(i/u)
(意味)「その男子学生の本」+「新しい」

今度は「学生」も「本」も同じ男性名詞で、形容詞がどちらにもかかりそうな場合です。
ここでは「jadîdun(新しい)」を例にあげます。
(新しい学生とは、新入生という事です。)

4点セットで考えると「学生」も「本」も
【限定、男性名詞、(所有格/主格)、単数】と、格以外で一致してます。
なので、「新しい」が「学生(所有格)/本(主格)」のどちらを修飾するかで、「新しい」の格が変わります。
aljadîdiだと「新しい学生(新入生)」、aljadîduだと「新しい本」となるわけです。
(写真とアラビア文字では「新しい」の語尾の母音記号を表示していません)


ただし、話す時は語尾の母音(とタンウィーン)を言わない事が多いし、文字でも発音記号がなければ判別できません。しかも、所有される方(ここでは「本」)が所有格になると、上の語句だけでは完全に判別不可能です。

そういう時は『文脈判断』です。それしかありません。



今回の内容は、たぶん一読しただけではよく分からないと思います。(出来る限り分かりやすく説明したつもりですが。)前回の所有格の基本と、形容詞の項目をちゃんと理解していないとこんがらがると思うので、以前の記事も良ければ振り返って見てください。
次回は…。まだまだ所有格ですよ~(笑)