アルコール(الكحول)の由来は、化粧品!? | 藤坂託実の語学散策 ~アラビア語とその他諸々~

藤坂託実の語学散策 ~アラビア語とその他諸々~

これまで趣味程度に10以上の外国語を学んできたわたくし藤坂託実が、語学に関することを多角的に自分勝手に、独り言として吐いていくブログです。

アラビア語に関する記事が、おそらく最も多くなるでしょう。なのでこのサブタイトルです。

(旧ブログからの転載。新記事投稿またはリニューアルの後消去します)


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W杯絶賛開催中!ということで、最近はもっぱらサッカーの記事ばかりなんですが、ここでちょっとブレイク!?
久しぶりに、ブログネタを使って語学の話を書いちゃいます。



いくつもの外国語を勉強した身としては、日常のありふれた言葉の中に外国語由来のものがあり、それを”外国語”目線から見つけたときというのが、ひとつの喜びでもありますね。

というわけで、私もあなたも大好きな(笑)「アルコール」という言葉の由来。




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物知りな方は、「アルコール」という言葉がアラビア語から来ているのを知っているでしょう。そこそこ有名な話です。

さらに物知りな方は、「アルコール」の「アル」が定冠詞、すなわち英語のtheにあたることもご存知でしょう。

当ブログのアラビア語記事でも散々ال(al:アル)、ال(al:アル)と書きまくっていますし、また他のアラビア語(由来)の言葉にも「アル」の付くものばかりですから。アルカリとか。
時事だとアルカイダ、アルジャジーラ、サッカーチームだとアルアハリ、アルナスル、アルイテハド、アルワスル・・・いろいろありますが、見事に定冠詞ال(al)のオンパレードですね。

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「アルコール」の「アル」まではわかった。それでは「コール」は何なのか?
・・・・・・これを答えられる方はなかなかいないでしょう。


※実際は語源が確定していないので、一説になりますが・・・。


この「コール」、元々はアラビア語の「كُحْلٌ」(kuHl:クフル)から来ています。
「كُحْلٌ」(kuHl:クフル)とは、アンチモン(アンチモニーとも言う)という化学物質
【周期表元素記号=Sb 原子番号=51 原子量=121.75±3】
のことで、古代エジプトよりまぶたや眉、まつ毛など、アイメイク全般に使われる黒い粉末だということです。

(白水社の『パスポート初級アラビア語辞典』には単にアイシャドーとだけ書かれてますが、いろいろ調べるとアイメイク全般に使われていたようです。)

(また、Bilingual VISUAL Dictionary arabic-englishには、現代アラビア語の「كُحْلٌ」(kuHl:クフル)を「アイライナー」としています。)



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これに定冠詞ال(al:アル)を付けた「اَلْكُحْلُ」(al-kuHl:アルクフル)という単語が、中世の時代にアラブ世界からヨーロッパに伝わり、意味がいろいろと変わっていって、今のアルコール(お酒類・燃料物質)の意味になったそうです。
そして、ヨーロッパで定着した(酒類・燃料としての)「alcohol」という単語がアラブ世界に逆輸入されて、現代のアラビア語では「اَلْكُحُولُ」(al-kuHūl:アルクフール)として広まっています。


ちなみに、化粧用粉末のアンチモンの「الكحل」(アルクフル)がヨーロッパでどのように今のお酒の意味に変わったか、というのも諸説あるそうです。どうやら、
【الكحل(アルクフル)】→『化粧用の黒い粉末』→『黒い粉末』→『粉末』→『お酒を蒸留した際に生じる粉末』→『酒の成分としてのアルコール(酒精)』という意味の変遷があったというのが標準的な説かと。



個人的には、【الكحل】→「女性の化粧品」→「男を惑わすもの」→「酔わせるもの」→「お酒!?」
・・・みたいな、ね?(笑)そんなロマンチックな連想ゲームから生まれていたら面白いネタだなと思ってたんですが。まさに酒場や夜の店で、男が女を口説くときに使いそうな(爆)


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いちおう、これは一説です。他にはクルアーン(コーラン)の一節に出てくる「al-ghawl」という語から来てるというのがWikipediaには載ってますが。

しかしながら、私のスペイン語の辞書には、「alcohol」が「الكحل」(al-kuHl:アルクフル)から来たことを示すように、次のように載っています。


alcohol:1.[飲]アルコール飲料、酒       2.アルコール、酒精       3.コール墨《アラブ婦人などがまぶたの縁を黒く染めるのに用いるアンチモンの粉》
(『プエルタ新スペイン語辞典』からの引用)



英語の辞書には(語源の記述はあっても)意味は無かったものの、スペイン語の「alcohol」には、どうやら今もまだ化粧品の意味合いがかすかに残っているようです。やはり長きにわたるイスラム支配の面影ということでしょうか。


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他にも、興味深い言葉の由来が分かったら、何か書いてみようかな・・・未定ですけど。