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ご訪問ありがとうございます花

 

今日は最近読んだきもの本の話題です。

 

 

 

 

『幸田家のきもの』(講談社)

 

著者の青木奈緒さんは幸田文さんのお孫さんです。

 

更に言いますと、祖母が幸田文さん、お母様は随筆家の青木玉さん、曽祖父は幸田露伴という文筆一家。

 

この本は、母、娘、孫の三代のきものにまつわる思い出が記されています。

 

まえがきにあるのは、残っている唯一の三人一緒の写真。

 

孫をみつめる優しいおばあちゃんの顔をした幸田文さんにはっとさせられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が面白いと思ったのは、紅白色違いの梅の小紋の話です。

 

幸田文さんが奈緒さんのために買い置いてくれたきものに、色違いの梅の小紋がありました。

 

一反は赤地に白で細かい梅がびっしり。

 

もうひとつはその逆で、白地に芯がぽつっと黄色い紅梅が全体を埋め尽くしているもの。

 

この二反をまだ小さかった奈緒さんの両肩にかけ、次のようなことを教えます。

 

 

 

梅は着用期間が長く12月から着られ重宝である。

 

年末年始のにぎやかな場所へは定番の赤でかわいらしく。

 

立春を過ぎて空が明るくなり、あたたかな日和には白ですっきりと。

 

3月に入ったら桜がおまちかね。庭に梅が残っていても、もう着るんじゃないよ。

 

 

 

いやはや、ためになりますね笑

 

こんな風にきっぱりと教えてもらえると、きもの好きとしてはすごく助かるニコニコ 

 

 

 

 

 

時が流れ、18歳くらいになった奈緒さんは、まず赤地の方に先に袖を通します。

 

お正月に初めて、その後2,3度着用。

 

しかしきものも帯も日本に置いたまま、娘盛りをドイツで過ごすことになります。

 

12年という長い年月を経て帰国し、ふたたび梅の小紋と向き合うことになります。

 

30代後半になっていたので、白地の紅梅は何の心配もなく着られたけれど、問題は赤の方でした。

 

憂いのない輝くばかりの赤に気圧されてしまうのです。

 

お母様の玉さんはこう励まします。

 

まだ大丈夫、着ちゃいなさい。いいだけ着て、思いを残さないようにすることが肝心だからね。

赤って色はね、自分で着られないと思ったときに色に負けるんだよ。自分で駄目だと思ったら、そこが境目。

 

元気を出して赤を着た奈緒さんでしたが、その数年後、赤を着ようと思って白に逃げ、次のシーズンに肩に羽織ったら、もういけない、と思うのです。

 

ですが、惜しいという気持ちもありました。まだ赤い梅とのつきあいが終わっていない、祖母に思いをかけてもらったのにという気持ちもある。

 

そこで、お母様とお付き合いのある悉皆屋さんに相談したところ、色をかけてきものに歳をとらせるか、色をかけずにそのまま長襦袢にするか、二つの方法を提案されます。

 

悉皆屋さんのご主人は、長襦袢にすることを勧めます。ぽってりとした縮緬の長襦袢はあたたかく、振りからのぞく赤はおしゃれだと。

 

迷った末に、まだきもので着たい、と答える奈緒さん。

 

悉皆屋さんのご主人は念をおすように言います。

 

よろしおす。この赤を殺すんですな。色の濃さを見極めて、ひと思いに殺してやらんといけませんのや。まかせて頂けますな。

 

できあがってきたきものを眺めた奈緒さん、数秒ぽかんとしてしまいます。

 

赤を殺すとまで言われながら、頭の中ではきれいな色を追いかけていた自分に気づくのでした。

 

ですが悉皆屋さんは、ちゃんと工夫をしてくれていました。

 

やわらかい若草色の八掛をつけることで、表の赤がきれいにみえるようにしてくれたのです。

 

お礼の電話を入れる奈緒さん。

 

悉皆屋さんは肩の荷をおろしたような声で答えました。

 

「ああ、よかった。ほんまよかった。安心しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際、色かけって難しいみたいですよね。

 

なかなか思ったようにはいきません。

 

私もオレンジの道行コートを丸染めに出して、仕立て上がりを見て戸惑ったことがあります。

 

年齢にあった色にしてという注文だったのですが、私が想像しているより鮮やかな赤で、正直参りました。

 

それから、黒っぽいオレンジだった輪奈コートも、これまた真っ赤になってあがってきたこともありました(笑)

 

色掛けって一発勝負で、どんな色になるかは染めて見ないとわからないと、注文段階で言われるのですが、それでも自分の思い描いた通りの色を夢見ちゃうんですよね。

 

若くなったピンクの茶屋辻模様の小紋を色掛けしたくて呉服屋さんに相談したこともありますが、これは断られました。

 

胡粉を使っているのでうまく染め替えできない、無理にやってもおかしな感じになりますよと言われて。

 

奈緒さんはハッキリとは書いていませんが、おそらく自分の思ったような色ではなかったのでしょう。

 

それでも、悉皆屋さんが心のこもった仕事をしてくれたこと、できる限りの工夫をこらしてくれたことにすぐに気づく。

 

その聡明さが心地よい、赤い梅の小紋のエピソードでした。

 

 

 

 

 

 

 

そのほか、髪結いさんの話や、フランスで大好評だった濡れ描きの花の小紋、幸田文さんのきものを仕立てていた方の話が興味深かったです。

 

なんでも、幸田文さんは、仕立てあがったきものが着にくいという理由で、仕立て直しを依頼したことがあったそう。

 

仕立てた方によると、それはどうにも忙しいときに、片袖だけ違う人に助けて縫ってもらったものだった。

 

和裁の厳しい先生がきちんとチェックし、呉服屋さんも目を通して、どこにも不具合がなく、寸法も指示どおりで、唯一思い当たることは片袖だけ違う人が縫ったということだけだったので、今度は一人で縫って収めたところ、納得して身に着けたそうです。

 

感覚の鋭敏な方だったのですね。

 

私はこのきもの着易いとか、着づらいとか全然わかりません。

 

というか、上手く着られないときには、自分の着付けが下手だからだとしか思えません(笑)

 

一生をきもので過ごした人の感性、すごいな。

 

じっさい着付けって、五感をフルに働かせないとできないところがありますよね。

 

いや、味覚は関係ないか。嗅覚は…

 

必要な時もあるし、刺激される時もある、かな。

 

リサイクルきものを買う時とか、着る時とか、虫干しする時とか? ?

笑

 

 

 

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