爽やかなすれちがい | しょうかんのうだうだ

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仏絵師藤野正観(66)の備忘録・・・っといっても、ほとんどどこにも出かけないので、ふだん、ぐだぐだ思ったり考えていることを書き連ねることになるのは必至。

最近、気候も良いので7Km離れている自宅から工房まで自転車で通うことが多くなった。
自転車を工房に置いてあるので、帰宅に自転車を利用すると、次の日の朝には自転車で出勤ということになる。

そんな朝、国道9号線(五条通り)の芋峠付近にさしかかると、市内方面から急な坂を自転車で元気良く登って来る女子高生とすれちがうことがある。
制服から近くのR高校の生徒だ。

この女子高生、どこかで会ったことがあるのだが、何時何処で会ったのか思い出せずにいた。

昨日のすれちがいで、やっと思い出した。

3年ほど前だっただろうか、彼女が工房近くの中学生だった頃、大きなラッパ(ホルン?)を抱えたお仲間二人と、近くの公園や桂川の堤下などで、よく練習をしていた、未熟ながら結構良い音が出ていた。彼女たちは、M中学校に上がりたての吹奏楽部の新入生だった。

まだ一年生の彼女たちには、まだまだ幼さが残り、工房から見える公園で、熱心に練習するその様子は可愛かった。
2年生になっても、コンクールが迫っているのだろうか、部活が終わった後も、同じ場所では近隣に迷惑がかかると考えてか、毎度場所を変えて一生懸命に練習する姿には好感がもてた。

自転車の彼女は、そのうちの一人だった。

その中学生の少女は髪の毛がカールしていて、細めのすらっとしたキャシャな姿だったが、その体で大きな楽器を運ぶ姿を思い出す。
くっきりした二重の目と引き締まった口元は、幼いながらも理知的で直向でまじめな印象を感じさせた。

一年生から三年生まで、コンクールの時期が来ると必ず部活以外の時間帯、夜もうす暗くなるまで、その練習する音が聞こえていた。
時々その大きな楽器を抱えて暗くなった道を帰る彼女にも遭遇したことがあった。
彼女の通っていた中学の近くに住む人たちは、私だけでななく、彼女の活き活きした顔を覚えていると思う。

その少女が中学を卒業し、早2年、当然ながら工房近くから姿が見えなくなった。

彼女たちの後輩部員たちの練習する音も今は聞こえない。練習に熱心な彼女のことも記憶から薄れていた。

昨日会ったあの少女は、もう女子高生だった。何度かすれ違っていたが、あの時の少女とは気付かず、何度かすれちがっていた。
私にとっては、通学時間帯にはよく見かけるR高校の生徒さんの中の一人に過ぎなった。

自転車の彼女は、もう高校二年生ぐらいなのだろうか、美しく聡明そうな女子高生に成長していた。
相変わらず柔らかくカールした髪の毛は、肩まで伸び、きれいにブラッシングされていて風になびいていた。

吹奏楽で全国大会にも出場したことのあるR高校を選んだのであろう。
いくつかの丘を登り降りしないと辿り着けない彼女の通う高校は7Km以上西にある。彼女はそのR高校に自転車で通っている。

13歳から、吹奏楽に興味を持ち、今もなお楽しみながら一生懸命練習しているのであろう。
『好きこそものの上手なれ』彼女の実力は、想像がつく。

将来、何になりたいのか知る術は無いが、彼女なら何でも必ずやり遂げるはずである。

17歳の、ある女子高生の光り輝く未来を感じさせてくれた、私にとっては「爽やかなすれちがい」の一瞬だった。