発達障害、という言葉をご存じと思います。
自閉スペクトラム症(ASD)は、発達障害に含まれます。
● 知的障害は、発達障害に含まれるのでしょうか。
● 神経発達症、という言葉は、発達障害と同じ意味でしょうか。
発達障害、とは、なんでしょうか。
日本では、発達障害者支援法(最終改正2016年)という法律で定義されています。
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。 *1
厚生労働省のページには、以下の図があります。 *2
● 知的障害は、発達障害に含まれるのでしょうか。
上の図を見れば、
自閉症であれば、知的障害を伴った場合でも、発達障害に含まれる、と解釈できます。
知的障害を伴っていても、自閉症の特性があれば、それを理解して支援する必要があります。 *3
自閉症のない知的障害の場合は、知的障害者福祉法、という別の法律の対象になります。
この法律を踏まえ、福祉や教育では、自閉症のない知的障害の場合、発達障害とは別にする立場になります。 *4 *5
これに対し、医療では、知的障害も発達障害に含める立場になります。
これは、例えば、日本小児神経学会の以下の図を見ていただくと分かります。 *6
福祉や教育の方と、医療の方と、これでは話が嚙み合わないよな?と、お感じになるかもしれません。
大丈夫です、
こういう違いがあることを、お互いに知っていればよいのです。
私の過去記事(38)も、ご覧ください。
● 神経発達症、という言葉は、発達障害と同じ意味でしょうか。
発達障害は、日本では、行政、福祉や教育の分野での言葉です。
医学でも、診療の場で、普通に「発達障害」の言葉を使います。
だいたい同じ意味ですが、医学における「発達障害」は、知的障害も含めて考えることが多く、
最近では、医学では、発達障害を、神経発達症、と呼ぶことが提唱されています。
おそらくですが、神経発達症という言葉は、原因として、遺伝的な要因が大きいと考えて、使用されています。
DSM-5というのは、2013年の、アメリカ精神医学会の改訂診断基準です。
ここで「Neurodevelopmental Disorders」という呼称が提案されています。
「Disorders」ですから、障害、と訳しても良いわけです。
この言葉を、神経発達障害、と訳すより、神経発達症、と訳しましょうということは、
日本精神神経学会で議論されたことで、これは日本のルールです。 *7 *8
自閉症スペクトラム障害と呼ぶか、自閉スペクトラム症と呼ぶか、というのと、同様の議論です。
「障害」という言葉を使わない方が、やさしい感じがしますね。
ただ、それだと、過剰診断に繋がらないか、などの議論もあったようです。
また、DSM-5では、
「今まで発達障害と呼ばれていたものを、神経発達症と呼び変えましょう」と提案しているわけではありません。
神経発達症は、それまでDSM-IVでは、「通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害」と呼ばれていたものでした。
(下図、*4表1 を、一部改変しています)
なお、神経発達症については、
2019年に改訂・承認されたICD-11診断基準(WHO)でも、DSM-5と同様で、 *9
どちらにしても、知的発達症、自閉スペクトラム症、ADHDを含んでいます。
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私は新年早々に、コロナウイルスに感染し、
とくに重症化もしないで、既に通常の生活に戻っておりますが、
意欲気力の減退があり、どうしても必要なこと以外は、できずに過ごしておりました。
やっと昨日くらいから、こうして記事の更新などができるくらいになっております。
たまっていた仕事もたくさんありますので、また頑張っていきます。
こういう時に思い浮かべる「いちばん良い言葉」は、スモールステップ、です。
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*1.
*3.
*4.
*5.
*6.
*7.
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/dsm-5_guideline.pdf
*8.
*9.
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1230040214.pdf