グルタミン酸は、食品の「うま味成分」として知られていますが、脳での働きも重要です。
グルタミン酸が自閉症と関係する、らしい、という研究仮説があります。
グルタミン、というアミノ酸もありますが、グルタミン酸とは別のものです。
まずは「うま味」について書きます。
【1】グルタミン酸とは: 舌が感じる「うま味」について
このような図(↓)を、どこかでご覧になられていたでしょうか。
「舌の、ある場所でだけ、特定の味を感じる」という、舌地図(味覚地図)です。
(注. 「うま味」は、英語でも「UMAMI」ですが、上の図には書かれていません。
「舌地図」は1901年の研究に基づいていて、「うま味」が発見された1908年よりも前だからかなと思います。)
たしかに、
甘い味は、まず、舌の先でたしかめますね。
苦い味(毒)は、飲み込む直前に、舌の奥で感じて吐き出せる、というのが、
理にかなっているかもしれません。
ですが、このような舌地図(味覚地図)は
「科学的でない」という理由で、その後否定されています。
このような地図にするほど、舌の部位は、はっきり分かれていない、ということ、なんですね。
5つの基本味は(あま味、塩味、酸味、苦味、そして、うま味、も)、舌のどの場所でも、感じることができます。
でも、
やっぱり、特定の味を、とくに感じやすい舌の部位がある、気がしませんか?
たとえば、
苦み(Bitter)は、舌の奥の方(舌根部)で感じやすい、ような気がします。
話を広げますが、
私は、「気がする」という感覚を、大切にしたい(大切にしてほしい)と思っています。
研究は「気がする」から、はじまるからです。
「舌のどの部分でも、どの基本味でも感知できるが、部位によって、特定の味の感度がちがう」が、
本当の正解です。
たとえば、「苦み」は、
苦み受容体(T2R、またはTas2R)が、舌根部などに、比較的多いため、
やっぱり、舌の奥で「感じやすい」ことが分かってきています。 *4
ですから、
舌地図(味覚地図)自体が「完全に間違い(all wrong)」ということでもないんです。
「うま味」についても、
舌のどの部分でも、感じることができますが、
グルタミン酸の受容体(mGluR4、mGluR1)が、舌根部などに比較的多いことが分かっています。 *5
グルタミン酸の「うま味」も、舌の奥で「感じやすい」と考えられます。
もしかしたら、人は、コーヒーやビールを飲みこむ直前に、
舌の奥で、苦みも、うま味も、最終的に判別しているのかもしれませんね。
参考
自閉症者は、非自閉症者とくらべて、舌に違いがあるのか、味覚受容体レベルで違うのか、
調べてみたのですが、基礎的な研究成果はまだ、あまり、ないようです。
自閉症のマウスモデル(Engrailed 2ノックアウトマウス)では、苦み受容体遺伝子(T2R140)の舌での発現が多い、という報告がありました。*6
【2】グルタミン酸:自閉症と関係するか
グルタミン酸が自閉症と関係する、らしい、という研究仮説があります。 *7 *8
じつは、1990年代から、自閉症者の血中グルタミン酸濃度を測定する研究が、いくつか発表されてきました。
論文によって結果はまちまちで、「高い」という報告も、「高くはない」という報告もありました。 *9
複数の(信頼できる)研究論文の結果をまとめた「メタ分析」では、下図のように、
「高い」という結果でした(フォレストブロット、ですね) *10
(*10 より引用 藤中が加筆しています。)
このなかでは、上から4番目、D'Eufemia先生の1995年の論文が一番古いです。
この論文では、自閉症者と非自閉症者で、血中グルタミン酸濃度は、違わないようです
(0の青い縦線を、左右にまたいでいます)。
ほかの論文は、自閉症者のほうが高い(上図の、0の青い縦線よりも右側)、と言っているものが多いです。
全体をまとめると(上の図の、0~2の間にある♦です)、
「自閉症者の方が非自閉症者よりも、血中グルタミン酸濃度が高い」という結論になります。
上の図にも含まれている、新村先生の論文(Shimmura, 2011)を見てみます。 *11
左側「Glutamate」が「グルタミン酸」、右側「Glutamine」がグルタミン、で、べつのアミノ酸です。
グルタミン酸は、自閉症者で2名、飛びぬけて高い人がいますね。
この2名を除いた平均でも、自閉症者の方が、非自閉症者よりも高いです。
ちなみに、対象者の年齢は、8歳から17歳です。
上の図をみてください、濃度「30」くらいで区切ったとすると、
それ以上の人は自閉症、である可能性が、高いように見えます
が、それ以下であっても、自閉症ではない、とは、言えないことになります。
(20以下なら、自閉症でない、可能性が高くなるようにもみえます)
私がこの結果を見て、すぐ思うことは、
1)採血で、自閉症の診断ができる可能性があるのか。
2)自閉症者の血液中で、グルタミン酸が高い理由はなぜなのか。
● グルタミン酸を多く含む食品として、昆布、みそ・チーズなどの発酵食品が、すぐ出てきます、
偏食で昆布ばかり食べていれば、血中のグルタミン酸は上がるかもしれませんが、
自閉症の方でその可能性はほぼないと思うなあ。
そうすると、もしかしたら、グルタミン酸の体内での利用(消費)が、少ないということかもしれない、か。
3)血液のグルタミン酸濃度が高い/低いは、脳でのグルタミン酸の働きと関係するのか。
3)からいきます。
長くなったので、次回【後編】とします。
*1.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2665927122000314#bbib65
*2.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/43/4/43_221/_pdf
*3.
*4.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2721271/
*5.
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/14250/dent_454.pdf
*6.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0149763425000314#bib38
*7.
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2012/123081/201224045A/201224045A0020.pdf
*8.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11203689/
*9.
*10.
*11.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3187770/
できるだけこのブログで、公開の場で、私とお話ししましょう。


