・ホームズのゲームを作っていて、ふと、思ったのだが、確たる証拠は存在しないのに、間違いなく、その状況証拠によって、
「そうに違いねえ!」
と、断言できてしまうことがある。
世界で一番有名な猟奇事件――切り裂きジャック事件に、シャーロック・ホームズが関わっていないわけがない、という見方が、その一例であろう。そして、ホームズが関わっている、この事件の全貌が、いまだに明らかにされていないのは――やはり、王室関係者の関与が疑われる醜聞だったから、という点も加えてよい。
この世の中には、
「そうとしか思えない」
ということがある。そして、そうであるが故に、ときにそれが間違っていることがあって、やるせない免罪事件を生み出す……。
コナン・ドイルがこしらえた創作と、実在の事件を混同するのもどうかと思うが、俺としては、どうしても、ホームズは実在していてほしいし、もちろん、切り裂きジャック事件を、彼は見事に解決してもいる。
……劇の最後、ホームズがいつものように、含蓄のあるセリフをワトスンにつぶやいて物語の幕が下りる、という展開が、俺には本当のことに思える。
多分、スイス銀行の貸金庫の中に、ワトスンの手記が残されている。それが、いつの日か、公開されて、切り裂きジャック事件の全容が明かされるのだ……。