鳩メモ(アニメ映画『聲の形』) | キジバトのさえずり(鳩に執着する男の語り)

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■アニメ映画『聲の形』

・(学校からの帰り道)主人公の石田将也(いしだしょうや)が歩いているシーンで、キジバトの鳴き声が挿入される。

 

 

 

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・ヒロインの西宮硝子(にしみやしょうこ)がドバトにパンを与えているシーンがある。

↑この場面に出てくる鳩の作画が実に繊細である。
 実写と見間違うほどの描き込みがなされている。
 鳩の体色も、一辺倒な灰二引だけでなく、灰胡麻とおぼしき鳩をしっかり混ぜている(原作漫画にはない、京都アニメーションのアレンジ)
 芸が細かい!
 これは間違いなく、公園の鳩を実際に見にいっている。
 そうじゃないと、体色に違いがあることを、意外に見過ごして、全部、同じ色に塗ってしまう。
 また、アニメーションに関しても、1羽1羽が丁寧に動く。
 まるでジブリ映画のように、それぞれの個体がそれぞれの個性を見せてくれる。
 いわゆる、モブといわれるシーンは、結構な手間がかかるために、テレビシリーズなどでは手を抜いて描かれることが多い。
 超一流の京都アニメーションであっても、予算や制作時間の関係から、そうせざるを得ない。
 最近、京都アニメーションが制作したテレビアニメ『小林さんちのメイドラゴン』でも、作中に出てくる鳩は、そこそこの描き込みで手を打っていた。
 しかし、本作は、劇場アニメである。
 桁違いに、「鳩作画」のクオリティーが高い。
 気合が入っている。
 このシーンを担当したアニメーターは、さぞ骨を折ったことだろう。
「ご苦労さんであります!」
 と、言って、ビシッと敬礼したい(感謝)
 お見事な腕前でした!

 

 

 

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・川井みき(かわいみき)と佐原みよこ(さはらみよこ)に、植野直花(うえのなおか)が突っかかっていく。
 このシーンにおいて、木にとまっている1羽の鳩が出てくる。
 鳩が逆光を浴びて、黒くなっている。
 意味深長だ。

 

 

 

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・西宮結絃(にしみやゆづる)が見る悪夢の中に、頭から血を流して死んでいる、鳩の死骸が出てくる(原作漫画にも同様の場面があるが、鳩は頭から血を流して死んでいない。京都アニメーションのアレンジ)

↑鳩はよく、カラスや野良猫に襲われて食べられてしまうことが多い。
 俺は鳩好きなので、そうやって殺された鳩の死骸を見つけると、じっくり見るようにしている。
 もう何度となく、鳩の死骸を見ている。
 しかし、一度として、鳩が頭から血を流して死んでいる姿を見たことがない。
 だから、このシーンを見たときには、
「鳩の頭が血だまりの中にあるけど、こんなに血は出ないよな」
 と、疑問を覚えた。
 しかし、そこは、京都アニメーションのすることだ。
 分かってやっている、うそなのだろう。
 事実、このシーンでは、鳩が頭から血を流して死んでいる姿と、西宮硝子が飛び降り自殺をして、頭から血を流して死んでいる場面を重ねて表現している。
 つまり、鳩の死骸から西宮硝子の死をイメージするように、鑑賞者を誘導しているのだ。
 ――こう考えてほしい。

 西宮硝子が横たわっている姿に、真っ赤な血がなかったら、果たして、彼女は死んでいるのか、単に倒れているだけなのか、視聴者に伝わりにくくなる。
 そして、この場面を、鳩の死骸から想起させたいわけなのだから――当然、鳩の死骸にも血だまりが必要となる。
 この一連のシーンに、血は必須なのだ。
 こういう演出をしっかりすることが、監督や演出家の仕事なのだろう。