魂のお告げ。
魂のお告げは、富士川碧砂がチャネリングしておろした言葉です。
★★★★★★★★
仕事の帰り道。
優雅な姿を見せるそのホテルを目にするたびに、
私は会ったこともない、
その女性を想う。
その女性は、
そのホテルを設計・建築した。
大変な苦労をして、夢だった建築士となり、誰もが知る建築物をいくつも手がけ、
そのホテルの仕事が決まった時に、ガンを宣告されたという。
10回に及ぶ手術を繰り返し、抗ガン剤治療を受け、病との壮絶な戦いのなか、ホテルを完成させた。
オープ二ングセレモニーには、車椅子から立ち上がり挨拶をしたと、何かの記事に書いてあった。
そして、その直後、52歳の若さで、この世を旅立ったのだ。
病と向き合うものにとって、その戦い方の選択は、自分と家族に委ねられる。
どこで、どんな治療をするのか、
戦うのか、受け入れるのか…。
それが正しいのか、正しくないのか。
答えがわからないギャンブルを、
まさに命をかけて行うのだ。
その答えが出たときに、
彼女の心にどんな感情があったか、私には知ることは出来ない。
もっと早く見つけていれば、
もっと違う治療を選んでいれば、
と後悔したかもしれない。
思い残すことはないと、
思ったかもしれない。
その答えはどうであれ、
そのホテルの佇まいは、
壮絶な病との戦いとは別の想いを、
私に伝えてくれる。
私は彼女の手がけた作品が、
どれも大好きだ。
若者の街・原宿に、
今なお軽快なリズムを感じさせる、
ラフォーレ原宿。
お洒落な街・六本木で、
都会で働く人たちのシャープな動きを感じさせるアークヒルズ。
そして、今は、名前が変わったけれど、お台場の海に向かい、
帆船が帆を広げたように美しい姿を見せるそのホテル。
これが彼女の最後の作品だ。
それらすべてに溢れているのは、
喜び。
男性社会だった建築の世界で、
ありとあらゆる手を尽くして、
日本で初めての女性建築士になった彼女。
表現できることへの、
好きなことをできることへの、
圧倒的な幸福感。
苦労を微塵も感じさせない明るさ。
弾むような生命の調べ。
そこにいる人たちのこころに合わせるようなリズム。
そこにはいない彼女の声が聞こえるようで、思わず耳を澄ます。
その声は私にこんな風に語りかける。
苦労や、大変さや、後悔や、怒り…人生にそれがない人はいないけれど、
でも、生きていることの喜びに目を向けること。
生きていることは、あまりにも素晴らしいことだと気づくこと。
彼女の名には、海という字が入っていると聞いた。
風を帆いっぱいに受けて、
海の向こうに旅立った彼女。
その姿そのままのような
そのホテルは、
私に、
生きることの喜びを、
思い起こさせてくれるのだ。
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