特急「みどり」・「ハウステンボス」の概要
特急「みどり」は博多から佐世保を鹿児島本線、長崎本線、佐世保線を経由して結ぶ特急列車です。
1976年に長崎本線と佐世保線が電化開業した際に、急行列車の一部が特急に格上げされたのが特急「みどり」の始まりです。
特急「ハウステンボス」は博多からハウステンボスを鹿児島本線、長崎本線、佐世保線、大村線を経由して結ぶ特急列車です。
佐世保市の針尾島に開業したテーマパーク「ハウステンボス」へのアクセス特急として1992年に運行を開始しました。
途中の早岐までは特急「みどり」と併結運転が行われています。
特急「みどり」・「ハウステンボス」の停車駅
特急「みどり」・「ハウステンボス」の停車駅は概ね統一されており、二日市、吉野ヶ里公園以外の駅には全ての列車が停車します。
「みどり」は一日16往復運行されており、概ね1時間に1本間隔の運行が行われています。
一部の列車は武雄温泉で西九州新幹線「かもめ」との対面乗り換えが行われておりその場合は、「みどり(リレーかもめ)」と案内されます。
特急「ハウステンボス」は1日5往復運行されており、多客時には臨時便として2往復増発されます。
特急「みどり」・「ハウステンボス」の使用車両
特急「みどり」・には783系、885系が使用されています。
783系は1988年にデビューしたJR九州初の特急型車両で、現役で活躍するJR特急型車両では最も古い車両です。
本系列は国鉄から民営化される過渡期に設計されたため、従来の車両には無い意欲的な要素が取り入れられました。
「ハイパーサルーン」の愛称が付けらており、前面側面共に大きな窓が特徴です。
また、デッキが車両中央に設けられており、座席案内時には1号車A、1号車B・・・という風に案内されます。
特急「ハウステンボス」には783系が使用されています。
「ハウステンボス」用の783系は「みどり」用のものとは外装デザインが違い、現在の編成は2017年のハウステンボス開業25周年に合わせて改装されています。
オレンジを基調としており、デザインは水戸岡鋭治氏が担当しています。
乗車レポート(2025/06/10)
この日は佐世保から博多まで全区間乗車しました。利用したのは自由席です。
まず783系の大きな特徴としてデッキが車両の中央部にあるという点です。この時点で783系がかなり挑戦的な設計をしていたという点が伺えます。後に787系や883系などかなり斬新なデザインの車両を世に送り出すJR九州ですが、783系はその元祖と言えるでしょう。
普通座席。通路から一段高い所に座席が設置されており、窓も大きいことから眺望性にはかなり配慮しているようです。
「ハイパーサルーン」の愛称だけあります。
全体的には国鉄型車両の雰囲気が残っており、リクライニングシートも古いタイプです。
非貫通扉車の最前面からは前面展望が楽しめます。上り列車であれば早岐から前面展望を楽しめるうえ、自由席なのでぜひ狙いましょう。
・佐世保~武雄温泉
佐世保から江北までは佐世保線を走ります。
佐世保は長崎同様平地が少ないわりに人が沢山住んでいるため、山の斜面にもびっしりと民家が建ち並んでいる光景が見えます。
佐世保から早岐までの区間は乗車券だけで特急の自由席に乗れるという特例が設けられています。
これは佐世保から早岐を走る普通列車が非常に少ないためです。
早岐は大村線が分岐する交通の要衝ですが、佐世保線を乗り通す場合は当駅でスイッチバックを行う必要があります。
早岐以東の佐世保線と大村線はかつて博多と長崎を結ぶ主要ルートの一部だったため、大村線へ直接乗り入れられる構造になっています。
早岐で進行方向を変えて、列車は東に進みます。
早岐までは市街地、住宅地が続いていましたが、県境に近づくにつれ沿線の景色はのどかな雰囲気が漂っています。
県境を越えると有田に到着します。有田焼で有名な所で、列車内からも窯元を見ることができます。
有田を過ぎるとしばらく山の中を走ります。佐世保線は県内を代表する主要幹線ですが、武雄温泉までは全体的に線形が悪く、列車のスピードはローカル線並です。
山を下りて西九州新幹線の高架と並走すると、武雄温泉に到着します。
・武雄温泉~江北
今回乗車した「みどり48号」は武雄温泉で西九州新幹線「かもめ」との対面乗り換えが行われます。そのためこの列車は「みどり(リレーかもめ)48号」と案内されます。新幹線「かもめ」に接続するから「リレーかもめ」という意味だと思いますが、結構ややこしいです。
ここまでローカル線特急みたいな走り方をしていた「みどり」ですが、武雄温泉から先は線路がガチガチに補強されており、「みどり」は猛スピードで走るようになります。
元々佐世保線は博多から長崎を結ぶメインルートの一部として開業しました。
当初は江北~早岐~大村~諫早のルートで博多と長崎は結ばれていました。
その後、長崎本線の江北から諫早の有明海沿いの区間が開業すると、博多から長崎のルートは長崎本線に移りました。
そのため佐世保線は博多と佐世保を結ぶ路線として活躍するようになりました。
2022年には西九州新幹線が武雄温泉から長崎の間で開業しました。
これにより博多から長崎のメインルートは西九州新幹線に移ったわけですが、武雄温泉までの暫定開業という状態です。
そのため、博多から武雄温泉までは引き続き特急列車の運行が続けられており、特急と新幹線を乗り継ぐ形で博多と長崎は結ばれています。
これにより佐世保線は一部区間ではありますが、博多と長崎を結ぶメインルートとして返り咲きました。
上記の理由から江北から武雄温泉の区間は最高速度の引き上げや、一部区間の複線化が行われました。
武雄温泉を出て隣の高橋までは単線ですが、高橋から大町にかけては複線化されています。
この辺りになると特急「みどり」は120km/h~130km/hのフルスピードで駆け抜けます。
長崎本線の線路が合流すると、江北に到着します。
かつては肥前山口という駅名で、鉄道マニアの間では何かと有名な駅です。
駅構内は非常に広く、九州を代表する交通の要衝であることがうかがえます。
・江北~博多
江北からは長崎本線を走ります。
ここからは広大な佐賀平野を走るため、非常に直線的な線路が敷かれています。
そのため、「みどり」は最高速度130km/hで佐賀平野を爆走します。
沿線には田園が広がっており、佐賀平野の広大さがよくわかります。
唐津線が分岐する久保田を通過すると、嘉瀬川を渡ります。
この辺りが有名なバルーンさがの会場です。
田園地帯が途切れると鍋島を通過します。
鍋島は九州最西端の貨物駅で、ここから西へ貨物列車が乗り入れることはありません。
ビルやマンションが多数見えてくると、佐賀県の県庁所在地である佐賀に到着します。
佐賀は博多まで特急で40分かつ、特急料金もそこまで高くないため、大量のお客さんが乗り込み自由席はあっという間に全席埋まりました。
博多から佐賀は距離が近く、新幹線が開業したところで大した時短効果が無いため、佐賀県が西九州新幹線の開業を拒む理由の一つとなっています。
佐賀から先も猛スピードで列車は佐賀平野を突き進みます。
神崎を過ぎると進行方向の左側に吉野ケ里遺跡が見えます。あまりにも列車が速いので見えるのはほんの僅かです。
新幹線の高架が見えると九州新幹線の乗換駅である新鳥栖に到着します。
そこからほどなくして鹿児島本線と合流し、鳥栖に到着します。
鳥栖からは鹿児島本線を走ることになりますが、先ほどまでに比べるとスピードは控えめです。
これといって景色を紹介することが無いので詳細は割愛しますが、佐世保を出発して2時間ほどで博多に到着します。
総評
車窓: ★★
スピード感:★★★
お勧め度: ★★★
車窓は全体的に単調でした。海が見える区間は無いので、これといって景色がいいと呼べる区間はありません。
スピードについては武雄温泉から博多まではかなりのスピードを出しますが、他の区間はそこまで速くはありません。
ただJR最古の特急型車両である783系はかなり貴重なので、引退する前に乗っておいた方が良いでしょう。


























