特急「かいじ」の概要
特急「かいじ」は東京・新宿から甲府・竜王を結ぶ特急列車です。
「かいじ」は新宿から甲府を結ぶ準急の名前に採用されました。
その後、新宿から松本を結ぶ急行列車として「かいじ」の名前が使われましたが、1986年に廃止されました。
その2年後に甲府発着の特急「あずさ」を分離させるため特急「かいじ」が登場し現在に至ります。
列車名は東京と山梨を結ぶ道である「甲斐路」に由来します。
特急「かいじ」の使用車両
特急「かいじ」にはE353系が使用されています。
2019年に中央本線の特急は全てE353系に統一され、着席サービスもこの時に開始しました。
「かいじ」では基本的に9両編成で運行されていますが、2往復は付属編成を連結した12両編成で運行されています。
この付属編成は大月で連結・解結され富士急行に乗り入れる「富士回遊」として運行されています。
2019年以前はE257系が使用されており、9両編成もしくは、11両編成で運行されていました。
特急「かいじ」の停車駅
やたら停車パターンの多い「あずさ」に比べ、「かいじ」の停車駅は概ね統一されています。
山梨県民向けの特急列車という側面が強いため、山梨県内の甲府以東の市の代表駅クラスの駅には上野原を除き全列車停車します。
また、1日2往復のみ甲府の隣駅である竜王から発着する車両もあり、列車側面の行き先案内には「甲府・竜王」と表示されます。竜王は甲斐市の代表駅ですが、「あずさ」は1本も停車しないため、竜王に停車する特急列車はこの2往復の「かいじ」のみです。
朝の上り列車、夜の下り列車は東京発着の列車が設定されています。2023年のダイヤ改正で東京発着の列車が増えました。
昔は四ツ谷、三鷹、上野原に一部の列車が停車していましたが、全て廃止されています。
乗車レポート(2024/04/06)
この日は竜王から東京まで「かいじ6号」を利用しました。
座席は普通車です。
E353系の普通車は快適な部類に入ると思います。E259系やE657系など2010年代以降に製造された特急車両の普通座席はどれもレベルが高いと思います。
その反面グリーン車との差別化があまり図れていないような気もします。
・竜王~塩山
竜王を出た列車はしばらく甲府盆地の中を突き進んでいきます。そのためほぼ最高速度である120km/hから130km/h近い速度で走ります。
石和温泉まで沿線は住宅が目立ちますが、石和温泉を過ぎると沿線にはブドウ畑と桃畑が見えてきます。
沿線に見える畑はほぼブドウ畑と桃畑と言っていいでしょう。この光景を見ると山梨県が桃とブドウの生産数が全国一位であることは伊達じゃないと感じます。
・塩山~八王子
塩山を過ぎると甲府盆地の区間は終わり、中央本線は一気に山岳路線となります。
中央本線は大きなカーブを描きながら急こう配を登っていきますが、この時進行方向の右側には中央本線屈指の絶景が広がります。
このように眼下には甲府盆地が広がっており、天気が良ければ甲府盆地を形成する山の向こうに南アルプスを眺めることができます。
また、沿線には一面のブドウ畑が広がっています。甲州市勝沼地区は県内屈指のブドウの生産地して知られており、「ブドウの丘」とも呼ばれています。
勝沼ぶどう郷を通過する際には沿線の桜を眺めることができ、これもかなり綺麗でした。
勝沼ぶどう郷を過ぎると長いトンネルを越え郡内地方と呼ばれるエリアに入ります。
特に笹子トンネルは開通当時日本一長い鉄道トンネルだっただけあり、かなり長いです。
「かいじ」はこのトンネルを130km/hで走り抜けていきました。
笹子トンネルを抜けると中央本線は笹子川に沿って走るようになります。
これまでに比べカーブが多くなり、最高速度も100km/h程度に落ちます。
E353系は空気ばねによる車体傾斜機構が搭載されているため、カーブも高速で曲がることができます。
スピードを優先したE351系と乗り心地を優先したE257系のいいとこどりといった車両です。
列車は竜王から約40分ほどで主要駅の大月に到着します。
大月は富士山の麓へ向かう富士急行線の分岐駅で、近年は多くの外国人観光客が利用しています。
この日も外国人観光客が大量に乗り込んできました。
大月を過ぎると再び山間を走り続けます。
一番の見どころは猿橋から鳥沢の間にある鳥沢橋梁ではないでしょうか。
この区間は昭和の時代に付け替えが行われた区間で、昔は国道20号に沿うように遠回りをして桂川を越えていました。
現在は長大なトンネルと巨大な橋梁で川と集落ごと越えています。
上野原を過ぎると中央本線は神奈川県相模原市に入ります。
藤野と相模湖の2つの駅がありますが、特急はどちらも通過します。
中央本線が神奈川県を通っていると知っている人は少ないのではないでしょうか。
塩山からずっと山の中を走り続けた「かいじ」ですが、東京都に入り高尾近辺になるとようやく平地にたどり着きます。
高尾は中央線快速の終点となる主要駅ですが、特急列車は全列車通過します。
東京都に入って最初の停車駅は八王子となります。
・八王子~東京
八王子は多摩地方の中心駅であり、昔から全ての列車が停車する中央本線屈指の主要駅です。
八王子からはもう山とは無縁の関東平野を走るため、特急も最高速度で走り続けるのかと思いきや、「あずさ」と「かいじ」は東京都内で最高速度を出すことはなく、むしろ一番スピードが遅い区間となります。
中央本線の高尾から東京は物凄い数の快速列車が走っており、特急は快速列車の邪魔をしないよう間を縫うように走ります。
そのため、常磐線特急のように都会の中を猛スピードでぶっ飛ばすということはできません。
竜王から約1時間20分ほどで立川に到着します。
かつてほとんど特急が停まらなかった立川ですが、つい最近全列車停車駅に昇格しました。
今や東京都区外の都内の駅で最多の利用客数を誇り、多くの通勤需要がある立川が全列車停車駅に昇格するのは当然と言えます。
立川を過ぎると「かいじ」は更に遅くなり、特急という感じはしません。
立川から三鷹までは高架化されており、さらに東中野まではずっと直線区間となります。
この直線区間は日本で2番目に長いそうです。
スピードを出すにはもってこいの区間ですが、残念ながら特急列車は上記の理由で思うようにスピードを出すことができません。
沿線には住宅やマンションがびっしりと建ち並んでおり、片田舎から日本屈指のベッドタウンに成長した多摩地方の底力を感じることができました。
中野あたりを過ぎると新宿の高層ビル群を遠くに眺めることができます。
これを見ると東京の中心に来たなと実感します。
この高層ビルが見えてしばらくすると新宿に到着します。
新宿は言わずと知れた世界一の利用客数を誇る超巨大ターミナル駅です。
中央本線の大概の特急列車は新宿を発着駅としていますが、一部の列車は東京まで乗り入れます。
中央本線は山手線の内側の地上を走る唯一の鉄道路線です。
これは江戸城の外堀を埋めて、敷地を用意できたために線路を敷くことができたと言われています。
この日はちょうど桜が咲いていた時期のため、外堀沿いの桜を見ることができました。
御茶ノ水で総武線と別れ、神田から東北本線に合流すると東京に到着します。
竜王から東京までの所要時間はちょうど2時間です。
総評
乗車時間: ★★★
スピード感:★★★★
車窓: ★★★
塩山から勝沼ぶどう郷の甲府盆地を一望できる区間以外の景色は割と平凡という印象でした。
ただ、山の中を走ったり、川沿いを走ったり、街中を走ったりと景色の移り変わりを楽しむことができ、そこは車窓を見ていて楽しめると思いました。
スピードは東京都内を除けば全体的に速かったです。
空気ばね車体傾斜装置が付いているため、E257系時代に比べれば多少所要時間は短縮されたと思います。