特急「ふじかわ」の概要
特急「ふじかわ」は静岡から甲府を結ぶ特急列車です。
それまで運行されていた急行「富士川」の車両置き換えと特急格上げのため、1995年から運行を開始しました。
大部分がローカル線である身延線を走っているため、日本でも有数の鈍足特急と言われていますが、それなりに需要がありローカル特急ながら1日7往復運行されています。
名前の由来は沿線を流れる富士川から来ています。
特急「ふじかわ」の停車駅
特急「ふじかわ」の停車駅は全列車統一されています。
ローカル特急らしく停車駅は多めに設定されており、無人駅にも停車します。
これは本数の少ない普通列車を補完し、短距離需要も拾うためです。
身延線内の自由席特急料金は30kmまで330円、50kmまでは660円と割安な料金が設定されています。
特急「ふじかわ」の使用車両
特急「ふじかわ」では373系が使用されています。
373系は「ふじかわ」でデビューした車両のためか、「ふじかわ」だけ2種類の幕が用意されています。
もう1種類の幕はめったに表示されることはありません。
3両編成で運行されており、1号車とセミコンパートメント席は指定席、2、3号車は自由席となっています。
乗車レポート(2023/11/24)
この日は「ふじかわ2号」に甲府から静岡まで乗車しました。
・甲府~鰍沢口
甲府を出た列車は善光寺の手前あたりまで中央本線と並走します。
しばらくは甲府市の郊外を走りますが、常永を過ぎたあたりから周囲には田畑が目立つようになり、天気が良ければ八ヶ岳や富士山などを見ることができます。
東花輪をすぎてしばらく進むと笛吹川を渡ります。
この笛吹川橋梁は身延線で最も長い橋梁です。この橋を渡り大きくカーブすると甲府盆地の際を南下していきます。
▲笛吹川を渡る様子。天気が良ければ南アルプスを見ることができます。
・鰍沢口~身延
鰍沢口は甲府盆地の最南端に位置する駅で、ここから先は一気に山の中を突き進むことになります。
鰍沢口を過ぎると新川に沿って谷の中を走ります。
割石峠をトンネルでくぐり、少し開けた所に出ると甲斐岩間に到着します。
甲斐岩間を過ぎると再びトンネルで山を越え身延町に入ります。
波高島からは富士川の近くを走るようになり主要駅の身延に到着します。
この区間は山の中を走っている割にはそれなりの速度を出して走ります。
身延線は元々富士身延鉄道という私鉄が建設した路線ですが、身延まで開業させた時点で会社の経営状態は火の車でした。
そのため、身延から甲府までは国有化される前提で建設されたため、割といい線形で線路が敷設されたようです。
・身延~富士宮
身延から先は富士川と崖に挟まれた狭い土地に無理やり線路を敷いたため、かなり線形が悪くなっています。
並走している高速道路は長いトンネルで山をぶち抜いている一方、身延線はお金のない地方私鉄によって敷設されたため、なるべく自然に逆らわないように線路が敷かれています。一方、富士川の眺めはなかなかいいです。
身延を過ぎてしばらく富士川沿いに進むと内船に到着します。
特急停車駅だけありさすがに駅周辺にはそれなりの街が形成されています。
内船から次の停車駅である富士宮までは30分くらいかかり、特急「ふじかわ」で最も停車駅間の距離が離れています。
身延線は富士川を越えることはなく蛇行を繰り返しながら南下していきます。
県境を越え、しばらく走ると芝川に差し掛かります。
芝川周辺には街が形成されており急行時代は停車していましたが、特急は全列車が通過します。
沼久保を過ぎて少し進むと列車はオメガカーブを描いて山を下りますが、その際富士山とその裾野に広がる富士宮の市街地を見ることができます。
目の前の木や民家に邪魔されてあまり長い時間見れないのは残念ですが、身延線屈指の絶景ポイントです。
個人的には富士宮から見る富士山が一番きれいだと思っています。
富士宮からは富士山の前に山が無いため、裾野まで全部見ることができます。
富士山の雄大さを最も感じられると思います。
一旦進行方向の右側に見える富士山ですが、しばらく進むと身延線が180度カーブするため、富士山は左側に見えます。
しばらくすると富士宮に停車します。
・富士宮~静岡
富士宮から身延線は複線となり、「ふじかわ」の速度も再び上昇します。
身延線の終点である富士ではスイッチバックをするため、数分間停車します。
身延線は昔創価学会の信者を乗せた団体列車が大量に乗り入れていたため、東京方面へ直通する場合は、進行方向を変更する必要がないように線路の付け替えが行われました。
そのため、静岡方面へ直通する「ふじかわ」はスイッチバックを余儀なくされています。
「ふじかわ」からは天下の東海道本線を走るため、最高速度は110km/hに引き上げられます。
そのため、身延線では聞けなかったモータ音を唸らせて373系は東海道本線内を爆走します。
富士からしばらく進むと名前の由来になっている富士川を渡ります。
▲「ふじかわ」で富士川を渡る。
由比あたりからは海の際を走るようになります。
現在は海岸沿いに国道1号線バイパスと東名高速道路が通っているため、海はあまり見えませんが線路の脇には防波堤と思われる遺構が残っています。
昔は線路の際まで海岸線だったと思われます。
由比から興津の間は薩埵峠を越える区間となります。
峠越えと言っても東海道本線は海岸線に敷かれた線路で峠を迂回しているため、あまり峠越えという雰囲気はありませんが、江戸時代は崖沿いの道なき道を命がけで越えていたようです。
この辺りでバイパスや高速道路の間から一瞬だけ海を見ることができます。
これだけ日本の大動脈といえる超重要幹線道路と鉄道路線が一か所に集中しているのはここと大山崎くらいではないでしょうか。
▲バイパスや高速道路が建設される前は東海道本線屈指の絶景区間だったそう。
薩埵峠を越えると興津、清水の市街地に入ります。
そのまま周辺は民家等が絶えることなく建ち並び、終点静岡に到着します。
総評
乗車時間: ★★★
スピード感:★★★
車窓: ★★★
可もなく不可もなくといった感じです。
鈍足特急と言われている通りあまり速くはありませんが、スピードを出せる区間では結構スピードを出していました。
景色は物凄くいいわけではありませんが、少し海が見えたり富士山や八ヶ岳南アルプスを見ることができるのはいいポイントだと思います。
本数も多く、利用客もそれなりに乗っているため、廃止直前のローカル特急のような雰囲気は感じられませんでした。