特急「南紀」の概要

特急「南紀」は紀伊勝浦から名古屋を結ぶ特急列車です。

昔は天王寺から名古屋を結ぶ特急列車が「くろしお」として運行されていましたが、紀勢本線の和歌山から新宮が電化されたため、新宮を境に運行系統が分離されました。

その内新宮以東の非電化区間を走る特急列車として「南紀」の運行が開始されました。

民営化後はJR西日本が「くろしお」、JR東海が「南紀」の運用を担当しています。

 

 

 

特急「南紀」の停車駅

特急「南紀」の停車駅は全列車統一されています。

1往復は新宮発着ですが、他の列車は全て紀伊勝浦まで乗り入れます。

民営化後も1区間だけJR西日本の区間に乗り入れていますが、これは紀伊勝浦が南紀観光の拠点となる駅のためと思われます。

津から四日市までは第三セクターの伊勢鉄道を経由するため、「南紀」は3つの鉄道会社に跨って運行されています。

 

 

特急「南紀」の使用車両

現在はHC85系が使用されていますが、2023年6月まではキハ85系が使用されていました。

キハ85系は1992年に投入され、当初は基本4両編成、多客時には最大6両編成で運行されていました。

またパノラマグリーン車のキロ85形は元々「南紀」に連結されていましたが、2001年に「ひだ」に転用されました。

2020年には利用客の減少を受けて最短2両編成で運行されるようになり、グリーン車の連結も無くなりました。

 

 

 

乗車レポート(2023/06/19)

この日は紀伊勝浦から名古屋まで「南紀6号」に乗車しました。

この日は3両編成での運転で、指定席の3号車に乗りました。

 

普通座席のモケットはだいぶカラフルですが、これは元々「ひだ」用に導入された車両です。

キハ85形は元々「ワイドビュー」を名乗っていただけあり、窓は非常に大きくシートも一段高い所に設置されているため、車窓を最大限楽しむことが出来ます。

 

・紀伊勝浦~新宮

列車はワイドビューチャイムを鳴らして、紀伊勝浦を出発します。

紀伊勝浦の2つ隣にある那智駅を過ぎるといきなり絶景が現れます。

列車は那智湾に沿って走りますが、狗子の浦と呼ばれる美しい海岸を見ることが出来ます。

最近海岸の清掃や雑草の伐採が行われたようで、列車から綺麗に見えるよう整備されています。

▲綺麗に整備され見やすくなった狗子の浦。

 

・新宮~紀伊長島

新宮から先はJR東海の管轄となり、非電化区間となります。

列車は熊野川の河口付近を渡り三重県に入ります。

鵜殿から熊野市までは真っすぐな海岸線が続いており、紀勢本線も真っすぐな線路が敷かれています。

この辺の最高速度は85km/hですが、体感速度はもっと出しているように感じました。

 

平坦な道のりも熊野市までで、ここから先は一気に険しい地形となります。

紀伊半島はここから入り江が複雑に入り組んだリアス式海岸となっており、海岸線すれすれまで山が迫っています。

紀勢本線はそういった山を全てトンネルで貫いています。

この辺りは一つの入り江に港町があり、そこに駅が設置されているため、駅を通過してはトンネルに入りを繰り返します。

紀勢本線の全線開通は1959年とかなり遅いですが、その理由もこの地形に険しさを知れば納得です。

新鹿を通過する際には綺麗な砂浜を眺めることができ、車掌からの案内もありました。

▲新鹿の美しい砂浜。

 

九鬼から大曽根浦の間には9個ものトンネルが連なっており、トンネルの合間から一瞬だけ海を眺めることができます。

▲トンネルの合間から一瞬だけ見える海。

 

大曽根浦を過ぎると開けた土地に出て、尾鷲の市街地に向かいます。

尾鷲湾を眺めることができますが、リアス式海岸のため海の三方を半島に取り囲まれています。

これぞ紀伊半島と言える光景です。

▲尾鷲湾の様子。海ながら四方八方を山に囲まれているように見える。

 

尾鷲はさすがに大きな街で、多くの建物が建ち並んでいます。

日本一雨が降ると言われている尾鷲ですが、珍しくこの日は天気が良かったです。

尾鷲を過ぎると海岸ぎりぎりを走るということはなく、少し開けた内陸部を走ります。

さっきまでは見られなかった田んぼなども見れるようになります。

 

・紀伊長島~多気

紀伊長島は紀勢本線を上ると最後の港町となります。

海が見れるのもここまで、ここからは険しい峠越えの区間となります。

▲紀伊長島の街並み。

 

紀伊長島を出ると荷坂峠と呼ばれる峠を大きなオメガカーブを描いて上ります。

この峠が紀伊国と伊勢国の境界だったようです。

撮り損ねましたが進行方向右手を向くと眼下に美しい紀伊長島の街並みを見ることができます。

▲荷坂峠を越える手前の様子。

 

峠を越えると大内山川が作り出したであろう谷に沿って列車は進みます。

阿曽から滝原の間では大滝峡と呼ばれる渓谷沿いを走るため、この辺もなかなか景色がいいです。

三瀬谷を過ぎると宮川に沿って走り、辺りが開けると多気に到着します。

 

・多気~津

紀勢本線は大きなカーブを描いて多気駅に入線します。

これは亀山~多気~伊勢市は参宮線として先に開業しており、紀勢本線が全線開通した際に亀山から多気が紀勢本線に編入されたという経緯があります。

多気からは線形が真っすぐになり、最高速度も100km/hに引き上げられます。

松阪付近で近鉄と並走し、県庁所在地の津に到着します。

 

・津~名古屋

津からは紀勢本線を離れ、伊勢鉄道に乗り入れます。

伊勢鉄道伊勢線は智頭急行線や北越急行ほくほく線のような高規格な短絡線で、津から四日市まで亀山を経由することなく結んでいます。

元々国鉄伊勢線として開業しましたが、路線単体では採算が取れないという理由で3セク化されました。

伊勢線の最高速度は110km/hとなっており、高規格な線路を「南紀」は猛スピードで爆走します。

伊勢平野のど真ん中を走り抜けるため、車窓には一面の田園が広がっています。

▲伊勢鉄道から見る伊勢平野。

 

河原田からはJR東海の関西本線に入線します。

関西本線はローカル輸送が主体の路線となってしまいましたが、腐っても名阪を結ぶ主要幹線で最高速度は120km/hに設定されています。

「南紀」も複線区間では120km/h近いスピードを出して関西本線内を走ります。

桑名を過ぎると木曽三川を長大な橋梁で越え、近鉄と並走しながら名古屋に到着します。

▲隣り合う揖斐川と長良川を渡る様子。奥に見える鉄橋は近鉄名古屋線。

 

 

総評

乗車時間: ★★★★★

スピード感:★★★★

車窓:   ★★★★★

乗ってたのしい列車認定です。

とにかく景色が素晴らしいです。「南紀」の魅力は車窓のバリエーションの豊富さにあると思います。

海、山、渓谷、田園など列車に乗るだけで様々な車窓を楽しむことができます。

少なくともJR東海の特急列車では景色の見どころが最も多い列車でしょう。

全区間乗り通すとおよそ4時間かかりますが、最初から最後まで楽しむことができました。

近年紀勢本線に並走するように高速道路が整備されており、その先行きが心配されている「南紀」ですが、新型車両も投入されたので末永く活躍してほしいものです。

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