特急「やくも」の概要

特急「やくも」は岡山から出雲市を結ぶ特急列車です。

陰陽連絡線としてほぼ唯一機能している伯備線をメインに走る列車です。

山陽新幹線が岡山まで開業した際に、岡山と山陰を最速で結ぶ特急列車として1972年に登場しました。

当初は気動車で運行されていましたが、伯備線電化に伴い現在は特急型電車で運行されています。

その際には振り子車両が導入されカーブの多い伯備線を高速で駆け抜けることが可能となりました。

2010年まで停車駅を絞った「スーパーやくも」が運行されていましたが、現在は「やくも」に統一されています。

また、2010年までエル特急に指定されていました。

「やくも」の由来は出雲にかかる枕詞である「八雲立つ」に因みます。

 

 

特急「やくも」の停車駅

※2024年3月現在

特急「やくも」は1日13往復運行されており、かなりの頻度で運行されています。

そのため、停車駅のパターンも非常に多くなっています。

特徴的なのは根雨と生山には交互に停車しています。

この他臨時列車として13,17,12,16,28号が運行されています。

かなり活発な運行がなされており、中国地方を代表する特急列車と言えるでしょう。

 

 

 

特急「やくも」の使用車両

特急「やくも」には381系が使用されています。

381系は国鉄が製造した日本初の振り子車両で、カーブ区間を高速で走行することが出来ます。先述した通り特急「やくも」の走行区間は殆どが山の中であるため、381系は「やくも」の高速運転に大きく貢献しています。

一部の列車にはパノラマグリーン車が連結されています。

「やくも」の381系は何回かリニューアルが行われており、特に2007年に行われた「ゆったりやくも」へのリニューアルには20億円もの費用が掛かっています。

現在「やくも」は国鉄型特急車両を使用した最後の定期運用列車となっています。

そのため、2022年からはリバイバルカラーを施した編成が登場しており、全国の鉄道マニアから注目を集めています。

2024年には新型車両273系が導入され、順次381系も置き換えらえる予定です。

▲「ゆったりやくも」カラーの381系。2010年以降の381系は全てこのカラーリングでした。

▲通称「緑やくも」。「スーパーやくも」から外れた編成に施されたカラーリングです。

「ゆったりやくも」化改造によって消滅しました。

▲ご存じ国鉄色。昔は日本どこでも見られましたが、現在はこの1編成のみです。

「JNR」のロゴも再現されています。

 

 

 

 

 

乗車レポート(2023/12/08)

この日は「やくも1号」に乗車し、岡山から出雲市まで乗り通しました。

たしかこの日は7両編成での運転で中間車の後ろに先頭車が連結された変な編成で運行されていました。

 

今回は3号車の普通指定席に座りました。

「ゆったりやくも」改造をされているため、国鉄型車両ながら座席の座り心地はけっこうよかったです。

手すりに格納された小さいテーブルがガタガタうるさかったのは少し気になりました。

 

・岡山~倉敷

岡山から倉敷は山陽本線を走ります。

当然ながらこの区間では最高速度の120km/hで走ります。

国鉄型車両ということでモーター音を期待しましたが、モーター車に乗車してもそこまでうるさくはありませんでした。

 

・倉敷~伯耆大山

倉敷からは「やくも」がメインで走行する伯備線を走ります。

伯備線は幹線に指定されていますが、山陽本線に比べればはるかにローカル線で、しばらくは高梁川に沿って進みます。

総社辺りまでは住宅地が続きますが、総社を過ぎると高梁川が作り出した渓谷沿いを走るようになり、一気に山岳路線の雰囲気が強くなります。

岡山から約30分強で主要駅の備中高梁駅に到着します。

駅周辺にはそれなりの街が広がっていますが、次の停車駅である新見まで再び山間部を突き進みます。

 

備中高梁から先は高梁川の蛇行が激しくなり、これまでずっと進行方向左手にあった川が右側に来るようになります。

蛇行する川を橋やトンネルでショートカットする様は高山本線を彷彿とさせます。

井倉駅周辺は「井倉峡」と呼ばれるカルスト台地を川が浸食した地形となっています。

周囲の山は断崖絶壁となっており、ダイナミックな光景を楽しむことが出来ます。

井倉峡を過ぎ周囲が開けると主要駅の新見に到着します。

▲窓が汚くて申し訳ないですが、井倉駅周辺の絶壁は見ものです。

 

新見から先も山越えは続き、岡山県内は西川、鳥取県に入ると日野川、石見川に沿って進みます。

特段景色の綺麗なところはありませんでしたが、沿線人口は非常に少ないと感じました。

「やくも」や貨物列車が走っていなければ、伯備線も芸備線などと同じような運命を辿ったかもしれません。

 

根雨駅を過ぎると進行方向右手に大山(伯耆富士)が見えるようになります。

しばらく進むとようやく山岳区間も終わり、周囲が開け大山もよく見えます。

大山が見えた時には車掌から観光案内がありました。

「やくも」も単線区間を110km/hほどの高スピードで走っており、なかなか爽快でした。

伯備線区間で一番面白い区間かもしれません。

 

・伯耆大山~出雲市

伯耆大山からは山陰本線を走ります。

山陰本線は伯耆大山から車両基地ががる西出雲まで電化されていますが、これはほぼ「やくも」のためです。

山陰本線の列車は全て気動車で運行されています。

山陰本線に転線して到着するのが山陰随一のターミナル駅である米子です。乗務員交代も行われました。

米子を過ぎるとすぐ島根県に入り、中海の近くを少しかすめて、県庁所在地の松江に到着します。

▲少しだけ見える中海。

松江を過ぎると宍道辺りまで巨大な宍道湖沿いを走ります。

所々内陸に入りトンネルをくぐるため、一畑電車のようにずっと宍道湖が見えるわけではありませんが、「やくも」に乗ったら是非とも見ておきたい絶景です。

▲雄大な宍道湖。

宍道湖を過ぎ岡山から約3時間強で終点の出雲市に到着します。

▲出雲市では先着のサンライズ出雲とゆったりやくも、緑やくもが並びました。

 

 

総評

乗車時間: ★★★★

スピード感:★★★★

景色:   ★★★

 

第一印象は思ったほど乗り心地は悪くありませんでした。

自然振り子車両なので、乗り物酔いの心配もしましたが、景色を見たり弁当を食べる分には全く気になりませんでした。

長時間スマホを見続けたり、パソコン作業をすれば酔うかもしれません。

スピードは振り子車両だけあり全体的に速かった気がします。

山間の区間ではそこまでスピードは出ていませんでしたが、平坦は場所では120km/h近い速度で走っていました。

景色は井倉峡や大山、宍道湖など見どころはありますが、全体的には平凡です。

特に伯備線沿線はずっと川沿いを走っているため少し飽きるかもしれません。

273系による新しい「やくも」にも期待です。

nosh(ナッシュ)