371系

371系は1991年にデビューした特急型電車です。

本系列は新宿から小田急電鉄と御殿場線を経由して沼津を結ぶ特急あさぎり用の車両として導入されました。

1950年代から小田急電鉄と御殿場線の直通運転は行われており、それまでは小田急が車両を用意していました。

1980年代後半にJR東海と小田急との相互直通運転計画が進み、その結果登場したのが371系でした。

小田急側は20000形RSEを用意し、この形態で2012年まで特急あさぎりの運用は行われました。

 

基本仕様

JR東海車両と言えば白顔、ステンレス車体、オレンジラインの三原則がありますが、371系は一つも当てはまらない特殊な車両となっています。

371系にはオレンジラインの代わりに新幹線車両のような白と青の塗装となっています。

車体も基本的には普通鋼でできています。

前面デザインも流線形かつ巨大な一枚ガラスを設置しており、保守的なJR東海らしからぬ思い切ったデザインとなっています。

▲371系の外観はJR東海車とは思えないデザインとなっています。<下曽我・2014-11-29>

 

JR東海は他の編成と併結して編成数を長くするため、基本編成は短めに設定されていますが、1編成しか作られなかった371系は併結相手もいないため、当時のJR東海在来線車両としては最長の基本7両編成でした。

さらに3,4号車はダブルデッカー構造のグリーン車となっています。

観光客の利用が主なためかなり豪華な造りとなっています。

▲2階建てのサロハ371-101とサロハ371-1。1階と2階に跨る巨大な窓ガラスが特徴的です。

 

主な運用

・特急あさぎり

▲2012年まで371系とRSEが使用されていた特急あさぎり<大垣ー垂井・2009-09-20>

特急しなのは新宿から沼津を結んでいた特急列車です。

新宿から新松田の手前までは小田急線を走り、新松田の手前から渡り線で御殿場線に入線し沼津まで運行されていました。

全席指定席でしたが、御殿場から沼津までの利用に限り自由席特急券で空いている席を利用することが出来ました。

2012年にRSEと共に定期運用から離脱しました。

 

ホームライナー浜松・静岡・沼津

371系はあさぎりのほかにホームライナーとしても使用されていました。

乗車券と着席整理券を払えば利用できましたが、グリーン車は封鎖されていました。

なお、371系はホームライナーで静岡から沼津に向かい、沼津から新宿を「あさぎり」で2往復した後、いったん三島に回送されてからホームライナーで浜松に向かい、そこから静岡に向かって1日を終えるという運用を1編成で行っていました。

朝から晩まで750kmを行ったり来たりする超過酷な運用を強いられており、これが371系の寿命を縮めた要因かもしれません。

 

・臨時運用

2012年に定期運用から離脱した371系はしばらく波動運用車両として活躍しました。

主に御殿場線内を走る臨時列車や、中央西線を走る中山道トレインなどに使用されました。

しかし、1編成しかない特殊な車両であることや、用途が限られること、入線できる線区に限りがあることから2年後の2014年に引退しました。

最後の運用は御殿場線開業80周年キャンペーンの一環として運行された「急行御殿場線80周年371」でした。

▲最後は御殿場線で有終の美を飾った371系。<上大井ー相模金子・2014-11-29>

 

車内の様子

グリーン車、普通車関わらず全車両に間接照明が設置され、床はカーペット敷きとなっています。

JR東海の特急車両でも屈指の豪華な内装となっています。

また、折り返し駅での座席転換時間を省略するため、電動の座席回転機構が設けられていました。

 

譲渡車両

JR東海から引退した後、富士山の反対側で走っている富士急行に3両が譲渡されました。

富士急行では8500系に改番され、水戸岡鋭治氏により「富士山ビュートレイン」として徹底的に改造されました。

内装、外装ともに371系の原型はほとんど留めていません。

なお、富士急行は小田急の元RSE20000形も買い取っており「フジサン特急」として使用されています。

富士山の麓で顔を合わせていた2両が奇しくも再び富士山の麓で活躍しています。

▲富士急行に譲渡された371系は8500系として活躍中。<三つ峠ー寿・2017-07-22>

▲富士急に譲渡されたRSEは8000系として活躍中。第2の人生も371系と共に富士山の麓で過ごしています。<十日市場ー東桂・2016-11-26>