キハ85系
キハ85系は1988年にデビューした特急型気動車です。
本系列は非電化路線で運行されていた、特急ひだと特急南紀で使用されていたキハ80系を置き換えるために導入されました。
気動車とは思えない走行性能と、現代にも通ずる先鋭的なデザインで国鉄からのイメージ脱却に大きく貢献しました。
2023年に全車両が引退しました。
基本仕様
キハ85系の車体は側面がステンレス、前面の白い部分が鋼鉄となっています。ステンレスボディに白顔、JR東海のコーポレートカラーであるオレンジ帯を巻くというスタイルは、後に登場するJR東海車ほぼ全てに採用されており、JR東海車のデザインを確立した車両と言える。
前面デザインは非貫通扉車と貫通扉車が用意されています。非貫通扉車は流線型の車体が採用され運転台上部にはサンルーフも取り付けられています。
貫通扉車は気動車らしい無骨なデザインとなっています。列車名表示はアナログ式の幕が設置されトレインマークが表示されます。
▲キハ85系の非貫通先頭車。普遍的ながらも古臭さを感じさせない絶妙なデザインです。<久々野ー飛騨一ノ宮・2019-03-24>
▲貫通扉先頭車。気動車らしい武骨なデザインです。<飛騨国府ー飛騨古川・2018-05-26>
本系列の最大の特徴は搭載された内燃機関です。
キハ85系に搭載されたエンジンは米国カミンズ社製の超高性能エンジンです。
最高速度は120km/hをたたき出し、電化区間でも他の電車の邪魔にならないスピードで爆走できるようになりました。
加速性能も大きく向上し、特急ひだ、南紀の所要時間短縮に大きく貢献しました。
側面の幕は列車・行き先表示と座席表示を上下に配置している車両と、左右に表示している車両があります。
なお、初期車は単色LED式の表示器が採用されていました。
形式と番台区分は以下の通りに分かれます。
主な運用
・特急ひだ
▲先頭車と中間車を無造作に繋げた「変態編成」もキハ85系の魅力でした。<飛騨小坂ー渚・2019-03-24>
特急ひだは大阪・名古屋から高山・富山を結ぶ特急列車で1989年からキハ85系が投入されました。キハ85系の導
入と地上設備の改善により名古屋から高山の所要時間は30分近く短縮され、利用客も増えたことから「ワイド
ビュー効果」という言葉も生まれました。
最近は高速バスの発達もありやや押され気味ですが、現在も名古屋から高山間では約1時間おきに運行されており、需要の高さが伺えます。また、多客時には最大10両編成で運行されます。
名古屋から高山までは約2時間30分、名古屋から富山までは約4時間です。
2023年3月にHC85系に置き換えられ、運用から撤退しました。
・特急南紀
▲4時間飽きることのない多種多様な景色を大きな窓から眺められた。<名古屋・2023-06-19>
名古屋から紀伊勝浦を結ぶ特急列車です。
1992年に本系列が投入され、現在1日4往復運行されています。
海、山、渓谷、田園風景など様々な景色を一度に味わうことができ、JR東海では間違えなく最も車窓が楽しめる特急列車です。
全区間の所要時間は約4時間です。
2023年7月にHC85系に置き換えられ、運用から撤退しました。
車内の様子
普通車の様子。
眺望性を第一に考えた内装となっており、その最たるものが「ワイドビュー」の由来となった巨大な窓です。
また座席が通路に対して一段高く設置されているのも特徴的です。
普通車の座席のシートピッチは100cmとなっており、前任のキハ80系に比べ9cm拡大されています。
シートのモケットは3種類あり、ひだ用の奇数車両は赤色、偶数車両は青色、南紀用の車両はグレーとなっています。
また、後のJR東海特急車両では標準装備となるフットレストも装備されています。
▲ひだ用偶数車両の普通車シート。結構派手なモケットです。
グリーン車は半分グリーン室、半分普通車のキロハ84形と非貫通先頭車のキロ85形が存在します。
キロハ84形はシートピッチが116cmで2+2列の配列に対し、キロ85形はシートピッチが125cmでシート配列は1+2列、更に前面展望が可能とキロハ84形とキロ85形では同じグリーン車とは思えないほどの格差があります。
ちなみにキロ85形は元々特急南紀用の車両として投入されましたが、2000年から特急ひだで使用されていました。
▲キロ85形の様子。2+1列の豪華なグリーン車です。
▲キロ85形のシート。昔は音声放送のサービスがあったようですが、末期は埋められていました。
▲前面展望の様子。とても大きいガラス窓が設置されていました。
▲車端部、貫通扉上に設置されているLED案内器。
号車、座席種別、次の停車駅等を表示します。
真ん中の空間にはデジタル時計が設置されていました。
譲渡車両
JR東海からは引退したキハ85系ですが、2023年に先頭車4両が京都丹後鉄道に譲渡されました。
詳しい運用は未定ですが、2両は部品取り用車両として使用され、残り2両が運用に就くようです。
また、デザインはJR東海時代からほとんど変化しておらず、観光列車などには改造されていないようです。
京都丹後鉄道での形式はKTR8500形です。