民法533条[双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。]

 

1 双務契約とは、契約の当事者双方が対価的意義を有する債務を負担する契約のことをいいます。当事者双方は、相手方が債務を負担するから自分も債務を負担するという相互依存の牽連性を有します。

 

 

2 同時履行の抗弁権とは、双務契約の当事者の一方は、相手方が債務の履行をするまでは、自己の債務の履行を拒むことが出来るという機能のことです。これは、公平の観念に基づくとされています。

 

 

3 同時履行の抗弁権が認められる場合

(1)債務の弁済と受取証書の交付義務

 (大判昭16・3・1民集20巻163頁)

 

(2)借地借家法上の建物買取請求権が行使された場合の土地明渡義務と代金支払義務

 (大判昭9・6・15民集13巻1000頁)

 

(3)未成年者の契約を取り消したことによる原状回復義務

 (最判昭28・6・16)

 

(4)契約の無効・取消により生じる両当事者の不当利得返還義務

 (最判昭47・9・7民集26巻7号1327頁)

 

 

4 同時履行の抗弁権が認められない場合

(1)債権証書の返還と弁済

 

(2)抵当権抹消登記手続と弁済

 (大判明36・3・18、最判昭41・9・16、最判昭57・1・19)

 

(3)借地借家法上の造作買取請求権が行使された場合の建物明渡請求権と代金支払義務

 (最判昭29・7・22民集8巻7号1425頁)