1 養子は離縁により縁組前の氏に復する。

(民法816条1項本文)

 これを復氏(ふくうじ)といいますが、離縁に伴って常に復氏の問題が生じるわけではありません。

 

 

2 離縁により復氏が生じるのは、以下のような場合です。

 

(1)単身の養子

 ①養子になり養親の氏を称していた場合、その後に婚姻や転縁組などがなくそのまま離縁したとき。

 

 ②養子になった者が養親の氏を称するようになった後、婚姻し養親の氏であるところの自己の氏をそのまま称していたところ、その後に離縁したとき。

(養子の配偶者も縁組前の氏を称することになります。)

 

(2)夫婦養子

 ①夫婦で養子になった場合に、夫婦養子がともに離縁した場合には、常に縁組前に称していた氏に復します。

 

 ②夫婦養子の一方のみが離縁した場合、離縁をした養子が婚姻の際に自己の氏を称して婚姻した者であるときは離縁によって復氏し、離縁をしない方の養子も離縁後の配偶者の氏を称します。

 

(3)縁組前の氏

 養子が復する[縁組前の氏]とは、当該縁組直前の養子の戸籍上の氏です。

 例えば、養子縁組より前に離婚しており離婚後も婚氏を続称していた場合は、縁組直前の氏とはその続称していた婚氏のことになります。

 

(4)復氏する場合、離縁届を提出すれば法律上当然に氏の変動が生じます。

 

 

3 離縁により復氏が生じないのは、以下のような場合です。

(1)縁組により養親の氏を称していない場合

 縁組をしても養子の氏の変動がなかった場合には、離縁によっても復氏することはありません。例えば、婚姻による氏を改めた者が婚姻の際に定めた氏を称すべき間に縁組をした場合には、縁組による養親の氏への変更はありません。

 

(2)縁組後に氏の変動があった場合

 縁組により養親の氏を称した場合でも、その後に婚姻や転縁組をして氏の変動が生じたときは復氏しません。

 

(3)夫婦共同縁組の離縁と復氏

 配偶者とともに養子縁組をした養親の一方のみと離縁したときは、養子は縁組前の氏に復しません。但し、異時縁組の場合を除きます。

 

(4)夫婦共同縁組をした場合の養親の死亡と復氏

 養親双方と離縁しない限り縁組前の氏には復しません。

 

(5)養子の死亡と復氏

 養親は養子が死亡した後も死亡した養子と離縁することが出来ますが、先に死亡した養子について復氏は生じません。

 

 

4 縁氏の続称の要件

(1)縁組の日から7年間が経過していること

 

(2)離縁により復氏していること

 

(3)離縁の日から3か月以内に届け出ること

 ※上記①②の要件を満たさない場合でも、家庭裁判所の許可により氏の変更が認められる場合もあります。

 (戸籍法107条1項)

 

 

5 養子の子の氏

 養子縁組後に出生した養子の子には、その子が養子と同席しているか否かにかかわらず復氏の効果は及びません。