『家の名義変更をお願いします。』

 

こういうご依頼のほとんどは、自宅の土地建物の相続による所有権移転登記です。

 

 このときもそうでした。

土地は良いとして、建物の謄本を見ると[大蔵省]となっています。

 

 ご依頼人に伺うも『そうなんですか?家のことは母が全てやっていたもので、すっかり母の名義になっているものと思ってました。確か、ずっと昔に国から買ったとか言っていたように思います。』とのこと。

 

 それからアレコレ調べて証拠集め。

図書館に行って昔の住宅地図を調べたり、近隣住民からの聞き取りとか…。

アルバムから当時の写真を探してもらったり。

固定資産税のことも調べましたが、これは当然のように徴収されていました。

 

 当初、協力的だった財務局さんですが、調べてくださった結果、売買の記録が見当たらず、それからは打って変わって事務的な対応に終始…。お立場上、やむを得ず。

 

 結局は[所有権移転登記手続請求訴訟]をすることになりました。

主位的請求として[昭和28年月日不詳売買]予備的請求として[昭和29年1月1日時効取得]とし、国を被告として訴えました。

 

 この場合の訴状は、被告は国、代表者法務大臣○○となります。

法務大臣は本名と違って通称を使っていました。迷いながらも訴状には通称で記載しましたが、国からの答弁書は本名、判決書は通称でした。ややこしかったです…。

 

 答弁書は[不知][争う][認めない]の羅列。

当日は法務局訟務部から4人も出廷されて、かなり緊張しました。

 

 結果は、主張が認められて主位的請求の通りの判決をもらって、亡母の名前にして相続登記もすることが出来ました。

 

 どのような経緯で登記をせずに長年にわたって過ごしてきたのか不明ですが、無事に終えることが出来て何よりでした。