支払督促とは『申立人(債権者)の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に金銭の支払いを命じる制度』のことです。制度の概略を見てみたいと思います。
 

 

1 支払督促とは
(1)支払督促とは、金銭等の請求について債権者側だけの言い分に基づいて簡易裁判所が支払いを命ずる処分で、債務者から異議が出なければ強制執行まで行えます。


(2)訴訟の簡略な代用手続で、非常に迅速ですが、途中で債務者から異議が出ると、通常訴訟に移行してしまいます。


2 支払督促の特色~最大の特徴は簡易迅速で安い~
(1)利用できる債権は、金銭その他の代替物・有価証券の給付を請求するものに限られます。実際は、ほとんどが金銭債権です。
 

(2)公示送達が使えませんので、債務者が所在不明の場合は利用できません。また、外国への送達も認められません。
 

(3)請求金額に関係なく、全て簡易裁判所の管轄になります。
 

(4)申立手数料は、訴訟の場合の半額になります。
 

(5)裁判所は申立人の言い分を書類審査するのみで、債務者の言い分は聞きません。また出頭義務もなく、証拠を提出する必要もありませんし、郵送でも申立て出来ます。


(6)送達後2週間以内に債務者から異議が出ない限り、仮執行宣言が付されて強制執行が出来ますが、異議が出ると訴訟手続に移行します。


3 制度選択のポイント
(1)債権の存在・不存在や、契約内容に争いがある等、債務者から異議が予想される場合には最初から訴訟を提起した方が時間の節約になり、良いと思われます。
 

(2)原則として債務者の住所地が管轄裁判所のため、債務者が遠隔地で異議が予想される場合も通常訴訟の方が裁判所(管轄)を選ぶ余地も広がるというメリットがあります。



4 手続のポイント
(1)支払督促申立から2週間以内に債務者から異議がなければ30日以内に仮執行宣言の申立をすることが出来ます。
 

(2)仮執行宣言申立に対しても2週間以内に異議がなければ、仮執行宣言が付されて裁判の判決と同様の効力を持ち、申立人は強制執行をすることが可能になります。


(3)債務者が強制執行を止めるためには、裁判所に執行停止の申立をして、執行停止の決定を得る必要があります。