令和2年4月1日から施行されている改正民事執行法の主なポイントをご紹介します。

1 債務者財産の開示制度の実効性の向上
(1)今までは、裁判で権利が確定しても債務者が任意に支払わない場合は債権者が財産を調べてくる必要があり、それが出来ない場合の権利は[絵に描いた餅]になってしまうということが多くあり、民事執行法に対する批判が多いところでした。
(2)財産開示制度が拡充されました。
 ①仮執行宣言付判決を得た者や公正証書に基づく債権者も申立権者としました。
 ②債務者の罰則を[30万円以下の過料]から[6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金]と刑事罰を科すことになり、制裁を強化しました。
(3)債務者以外の第三者からの情報取得手続を新設しました。
 ①金融機関から預貯金債権や上場株式・国債等に関する情報を取得
 ②登記所から土地・建物に関する情報を取得

(※この規定は、まだ運用されていません。)
 ③市町村・日本年金機構等から給与債権に関する情報を取得
(※養育費等の債権と生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみ)

2 不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策
 裁判所が、最高価買受申出人について暴力団員等に該当するか否かを警察へ照会するという制度を創設しました。

3 国内の子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化
(1)今までは、子の引渡しに関する強制執行についての規定がなく、動産に関する規定に沿って運用されていました。また、引渡しの際は[債務者の立会が必要]とされていたため、相手方本人がその場にいないときは執行が不可能になっていました。
(2)改正法では、引渡しの際の[債務者の立会は不要]となりましたので、債権者である親権者さえいれば、塾やスポーツクラブ、学校等に出向いて子どもを連れてくることが可能になりました。

4 国際的な子の返還の強制執行に関する規律の見直し(ハーグ条約実施法の改正)
(1)今までは、常に間接強制手続によるとされていました。間接強制とは、例えば『引渡しに協力しない場合は1日3万円の支払を命じる』として義務の履行を促す方法です。
(2)改正法では、間接強制では返還の見込みがあるとは認められないときや、子の急迫の危険を防止するために必要があるなどの要件を満たせば、必ずしも間接強制手続を行うことが必要ではなくなりました。