今日のふじこ

酒屋さんにお嫁に行くと決まってから

ふじこは 会社の助成制度を上手く使わせて頂き

ペン字検定を習得した

子供の頃から 毛筆は習っていたのだが

硬筆を きちんとやってみたかった


働きながらのお勉強は 難しいかと思いきや

これがなかなか楽しくて 毎日 飲み会の誘いも断って家に帰り

部屋にこもって こつこつ練習した

やり終えたテキストを郵送すると 先生が添削してくれ

それを見ながらもう一度書き直し 練習する


「あー もっと前から真面目に勉強すれば良かった」

こんなに楽しく集中してやれる子やったのに

他の教科も 同じようにやっていれば

もう少し偏差値の高い大学に入れたかもしれないのに


検定を申し込んだ際 送られてきた総合テキストは

それから15年 ずっと 私の席のすぐ側にある

「パソコンでなく 手書きで」 というお客様は多い

「こんなとき 熨斗にはどう書くの?」 なんて質問とか


幼稚園の年長さんの頃

家のすぐ裏にある お習字教室に通っていた

先生の家の庭に 大きなぐみの実がなっていて 

怖くて登れない ともちゃんと よしくんの代わりに大木を登り

ぐみの実を採ってあげていた

おてんばな私を おばあちゃん先生は叱ることもなく

「優しいんやね」 と笑って言った

お稽古が終わってみんなが帰っても

私はいつも最後まで 墨をすっては 練習し

「もう その辺にしとこか カルピス入れたげよ」

と 先生に言われて 二人でお茶をし お稽古を終えた

カルピスの御礼は 先生の肩叩きだった

幼稚園児の小さな手でも 先生はいつも

「あー気持ちいい ありがとうねえ」

と 喜んでくれた


私は先生が大好きだった

だから お習字も大好きだったんだと思う


藤井酒販で熨斗を書くとき

ふと 思い出すことがある

先生と二人でいた 畳の教室 細長い机 紺色の座布団

甘くて優しいカルピスの味 おばあちゃん先生とのあったかい記憶

本当は

それが 私にとっての一番の 「虎の巻」 なのかもしれない