1年の目標を立てる。
前年に達成できなかったこと見直して改めて目標にしたり、内容を変えたりもする。
ここ数年まったく達成できずに持ち越してきている目標がある。
「地域ネコをなでる!」
このナデナデchallengeは、毎度めげずに行っているがまるで達成できない。ネコが撫でさせてくれない。ネコたちとの距離が縮まらない。どのネコでも良いわけじゃない。うちの周辺の地域ネコが良いのだ。ネコを撫でるチカラが身につかない。継続はチカラにならないのだろうか……!

ここで時を戻そう。
事件が起きたのは年末。玄関土間の掃除をしていると、玄関のすぐ外側から突如「ゴリゴリゴリ……」とも「ダダダダダ……」とも聞こえるような、耳慣れない大きな音がした。それは建物が何かの襲撃に合っているかのうような、やや危機感を感じるような嫌な音でもあった。
「なんだなんだ! こりゃてーへんだ!」と玄関戸を勢いよく開けると、音の原因が玄関の目の前のすぐそこにいて、その原因と目が合った。一匹のネコ……お互いに「はっ!」となった。私は「見つけてしまった!」の「はっ!」、ネコは「見つかってしまった!」の「はっ!」。2つの「はっ!」が瞬時に湧いて消えるのだが、その一瞬のうちにさまざまな情報が目から入ってきた。ネコは、後ろ足で2本立ちし、やや背を反りながら立っている。前足はネコのアタマよりさらに上、もっと上に伸ばしている。私はこれに似たシーンを見たことがある。東京オリンピックだ。ロッククライミングで選手がすごい勢いで壁をよじ登る時に、頭よりはるか上の石を掴みにいく時のあれだ。しかし、このネコのそれはなんだかとても気持ち良さそうだ。
玄関を開けてネコと目があった瞬間から時間の経過が超スローモーションに移り変わる。「はっ!」となり「おーまーえ~~そーこーで~~、なーにーを~~」……私の視線はネコの目から、ネコの前足に沿ってゆ~っくりと上のほうに移っていく。超スローモーションでゆっくりとだ。視線が辿り着いたその先で、私は世にも恐ろしい光景を目にする。ネコは前足の爪を立て……玄関の壁枠の木を、そう「ゴリゴリゴリ……」とも「ダダダダダ……」とも聞こえる音を立てて引っ掻いているじゃないか。引っ掻いているじゃないか! 「お、おまえ……そこで何やってるんだぁ!」最後の語尾「だぁ」で語気は上がらない。むしろ下がる。怒りならば語尾は上がるが、ここは絶望を感じて落ち込む時の下がる「だぁ」である。ネコは「やっべぇ、見つかった!」な感じで瞬時に駆けて逃げていった。

その事件現場がこちら

 


傷だらけ
初犯じゃないのか!? やはりガチ野良とは仲良くできないのか。悲しい気持ちになった。

時が進む。

1月2日早朝。箱根駅伝が始まる前にウォーキングにでかけた。
田畑が広がり、家屋が点在するような場所に来た。まっすぐに伸びる道を歩いていたら正面にこちらを向いているネコが見えた。まだかなり遠い。ネコは歩いている。私も歩いている。ネコは歩いて来ている。こっちに向かって来る。ちょっ、ちょっと待て! オマエはこっちに向かってくるのか!? ネコが来る? いやきっと突然直角に曲がるさ。今までもそうだったようにこれからも曲がるのに決まっている。ネコは曲がらずにこちらに歩みを進めてくる。私たちの距離がどんどん縮まる。ネコが、とうとう私の足元まできた。ネコはアタマを私の足に擦りつけようとしてくる。私は腰を落としてしゃがみ、そっとネコに手を伸ばす。背中をひと撫で、そしてふた撫で……なんてことだ。まだ青くなりたての空を仰いだ。私の2024年が終わった。


fin