真夏のトライアングル(49) | NaNa's secret world

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短編小説 真夏のトライアングル 

作:NaNa

 

 

★49

 その向こうに父がいるかのように、打ち捨てた携帯電話をにらみつけて立ち尽くしていると、外の通路から大きな声が聞こえた。

 

「優真、あたしもう耐えられない。ほかの女のところに行くなら刺す」

 

取り乱した叫び声だった。

 

 ドアを開けた瞬間、足元のコンクリートに赤いしぶきが模様を作った。血液が噴き出した元をたどって視線を投げると、優真が真っ赤に濡れた腕をつかんでうずくまっている。その向こうに女の子が立ちすくんでいる。

 

ミカだ。両手で口を覆って震えているが、手にはナイフを持っている。

 

「優真!」私はとっさに叫んだ。騒ぎを聞きつけた山田さんもドアを開いて顔を出した。

 

 

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