短編小説 真夏のトライアングル
作:NaNa
★40
フライパンからバターの香りが部屋いっぱいに広がったところで、パンを裏返した。柔らかい黄色の上に茶色い焦げ目がわずかにできて、ちょうどいい焼き加減だ。
「二人で一体どこで何してたの」
優真が訊いても律は答えず、レコード盤に針を置き、流れ始めた曲に合わせて指先で膝を叩く。
優真は会話の主導権を握るのが上手なはずなのに、無口な律に翻弄されていた。まともに相手にされず、やり場のない嫉妬心を収めることができずに半ば苛立って見える。
そしてその嫉妬心は私にではなく、律に向かっていた。