真夏のトライアングル(30) | NaNa's secret world

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短編小説 真夏のトライアングル 

作:NaNa

 

 

★30

 歩道に出ると、リツがいた。彼はあたりを見回し、店のわきの、ちょうど私が自転車をこっそり隠した建物どうしの隙間に飛び込んでしまった。ステージで光を放っている彼と、同じ人物とは思えないくらいにおどおどしていたので、なんだか可哀そうに思えた。これまでの高揚感が、無神経に追い回すファンに対する反感に姿を変えた。

 

 女の子が数人階段を駆け上がってきて、

 

「いつもすぐいなくなっちゃうんだから。全然話もできない」

 

「優真のアツいファンサービスが羨ましい。見返りないし、あたしも優真に乗り換えようかな」と、口々に言った。

 

「あなたたち」

 

思いのほか自分の声が大きくて驚いた。女の子たちが一斉に振り返り、怪訝そうに私を見ている。少し冷静さを取り戻し、私はつづけた。

 

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