短編小説 真夏のトライアングル
作:NaNa
★18
それからは、優真に会ってしまわないように細心の注意を払って行動することにした。
ベランダに出るのをやめた。隣の部屋のドアが開く音が聞こえたら、その気配がアパートから出ていくのを、息を殺して待ったあとで外出した。帰宅時も、隣の様子を気にしながら急ぎ足で玄関に飛び込んだ。
優真の部屋からは、落ち着きのある、優しく響く誰かの話し声がよく聞こえた。そのほかにも何人もの女の子が出入りしている様子だった。
薄い壁の向こうに大好きな人の気配を感じながら過ごす日々なのに、少しも幸せではなく、むしろ苦痛でしかなかった。